「じゆうちょう」が好きだ。
真っ白い、
どこまでも自由な線を描ける、
それでいてどこか知らないところに
来てしまったような心細い気持ちになる、
「じゆうちょう」が好きだ。
でも、7mmとか、8mm感覚で
ぼやけたインクをひっぱってあるキャンパスノートじゃないと
世の中は生きにくいんだ。
最近あたしはむさぼるように小説を読む。
そのせいか、もともと1,0あった左目も、
0,2の右目とおんなじくらいの視力になってきたようだ。
世界がかすむ。
本屋の店頭に平積みしてある文庫本を
適当に何冊か買う。
よく見えないから、よく考えないで、指が触れるままに。
今、読んでるのは『黄色い目の魚』。
主人公は画を見るのが好きな少女と
画を描くのが好きな少年。
きっと著者の佐藤さんも絵が好きなんだろうなと思う。
だって、絵が好きな人の心が痛いほど分かるもの。
あたしは久々に思い出した。
『じゆうちょう』が好きだってこと。