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東野圭吾『容疑者Xの献身』が中国で映画化--『嫌疑人X的献身』を観てきました

2017年04月13日 | エンタメの日記
東野圭吾の小説『容疑者Xの献身』が中国で映画化されました。
2017年3月31日より中国全土で公開され、公開から10日間で興行収入3.6億人民元(日本円で約58億円)を突破したと報道されています。
これは中国映画としては上々の成績です。

中国映画版『容疑者Xの献身』--中国語タイトル『嫌疑人X的献身』

  

『容疑者Xの献身』は、2008年に日本で映画化、2012年に韓国で映画化されています。

中国映画版で主人公の物理学者・湯川(中国版では唐川)を演じたのは、王凱(ワンカイ)という俳優です。

王凱(ワンカイ)1982年生まれ、身長182cm、北京出身。
王凱はいま中国でものすごく売れてる俳優です。2015年の大ヒット中国ドラマ『琅琊榜』(ろうやほう)の靖王役で知名度が一気にアップし、スター俳優に。


数学の天才・石神役(中国版では石泓)を演じたのは張魯一。
1980年生まれ、北京戯劇学院出身、身長182cm。俳優としてのキャリアは10年以上ですが、ここ2~3年の間に『麻雀』などヒット作品に恵まれ、第一線で活躍しています。



花岡靖子役(中国版では陳婧)は林心如(ルビー・リン)が演じました。林心如は20年以上第一線で活躍する、中華圏では誰もが知っている有名な台湾出身の女優です。



監督:アレックス・スー
アレックス・スー(蘇有朋)は台湾出身で元々俳優です。多くのドラマ、映画に出ています。3人組アイドルグループ「小虎隊」のメンバーとしてデビュー。最近は映画監督としても活躍。
写真左がアレックス・スー。本人は出演していません。中央が王凱、右が張魯一。



音楽:大島ミチル。作中では吹奏楽が重要な要素として出てきます。人物、特に石神の心情を表す上でも音楽の果たす役割は大きいです。

東野圭吾の小説は中国でものすごく人気があります。
大手書店の売上ランキングでは、常に東野圭吾の作品がランクインしています。
『容疑者Xの献身』を映画化する以上、話の面白さは保証されているのだから、出来が悪かったら完全に制作スタッフのせい。と思われており、制作側は大変なプレッシャーだったのではと思います。

また、主人公の物理学者・湯川は、日本版では福山雅治が演じて当たり役となっています。
福山雅治はアジア圏のファンの間では「理想の男性」の具現者として崇拝されており、このこともプレッシャーの一つになったのでは。

東野圭吾ファン、福山ファン、既存の日本・韓国の映画を観た人々からの期待と厳しい目に晒されながらの映画化となりましたが、中国版はとても丁寧に作られた良い映画でした

今回の中国での映画化にあたり、東野圭吾先生からは次のようなメッセージが寄せられています。



メッセージの中でも「映画大国」と言われているとおり、2013年前後から中国の映画制作力は飛躍的に向上しました。

特に映像技術は、最新・最高級の設備と技法を取り入れ、本当に立派な映画を作れるようになっています。
俳優、女優の層も厚くなりました。

王凱(ワンカイ)をキャスティングしたのは、王凱本人が人気と実力を備え、お客さんを呼べるスター俳優だということもありますが、
福山の影響が大きかったのではと思います。「福山が演じた役」のイメージを傷つけない中国俳優・・・というと人選が限られます。
王凱の持つ、ストイック、知的、清潔感といった持ち味がこの役にも大いに生かされています。

■中国版のアレンジと解釈

基本的には原作に忠実に作られていますが、中国社会の現状に合わせるため、細かい設定がローカライズされています。

人物設定でも若干の変更があり、中国版では、湯川は警察大学の物理学の教授という設定になっています。
そのため、犯罪の謎を解くことに対する使命感がより強まっています。

そして、ラストに挿入されるシーンは中国版独自の解釈だと思います。
最後に湯川と石神の二人のシーンが挿入されたことによって、石神の性格の印象がだいぶ変わってきます。

中国版『容疑者Xの献身』は湯川と石神がダブル主人公のような形で描かれています。
友人であり、ライバルであり、理解者であり、追い追われる立場となる二人の男が命をかけた頭脳戦を展開する・・・という側面が鮮明になっており、「デスノート」みたいな雰囲気があります。
この2人で「デスノート」を始めても全然違和感がありません。

ちなみに、湯川の周辺には女性がまったく登場しません。

湯川と石神が二人で山登りに行くシーンがあります。これは日本映画版の雪山に登るシーンを踏襲したものと思われますが、中国版では登山日和のピクニックになっています。
男二人が山でピクニックするシーンを観ることになり、「何のためのシーンだったんだろう??」と後になって疑問が沸いてきます。



あと、ラスト近くで王凱(湯川)が河辺をランニングするシーンは、あれは王凱ファンのためのサービスシーンなのでしょうか・・・?

中国では多くの新作映画が作られているのに、日本ではほとんど公開されません。
一般公開が難しいとしても、映画祭、若しくはチャンネル銀河などで、この映画が上映・放送されることを願っています。
日本の観客、東野圭吾の読者が観たら、いまの中国映画に対して新たな認識が生まれるのではと思います。

【おまけ】王凱(ワンカイ)の出演作品。 イケメン役しか見たことありません。
中国の俳優は比較的年齢が上がってからブレークするケースが珍しくありませんが、王凱もそれに該当するといえます。
全国的に知名度を得るきっかけとなった2015年の大ヒットドラマ『琅琊榜』(ろうやほう)靖王役。



汪兆銘政権時代を舞台とする戦時スパイもの『偽装者』(2015年)。
胡歌 靳東、王凱など『琅琊榜』(ろうやほう)のメインキャストが出演。『琅琊榜』の爆発的人気により『偽装者』も注目を集めました。



難解な事件にあたる警察官の心理ドラマ『如果蝸牛有愛情』(蝸牛が恋に落ちたら)(2016年)では、有能な刑事役で主演。

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2 コメント

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Unknown (miki)
2017-04-15 16:38:04
早速見たんですね~。ネットでも意外に評価が良かったので、私も見てみたいと思っています。
ちなみにうちの母は「瑯琊榜」を見て以来、すっかり王凱ファンです^^
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mikiさん (上海阿姐)
2017-04-16 21:49:38
こんにちは~「嫌疑者X的貢献」面白かったです!主人公二人がかっこよすぎたかなとは思いますが・・王凱は今回もひたすらイケメン役でした。また劇中でバドミントンやってます。ものすごく細いですね。日本公開されるといいですね。謎の要素の一つに話題のMOBIKEが出てきますが日本の観客にすっと仕組みが分かるかな??
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