不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Palinuro

2007-07-17 06:42:20 | アート・文化

Palinuro(パリヌーロ)はナポリの南、サレルノを更に南に下り
アレント川を越えたところに広がる
チレント海岸(Costa Cilento)の小さな街。

この名前はVirgilio(ウェルギリウス)の
Eneide(アエネイス)にも記されている伝説に由来します。

ギリシャ神Enea(アエネイス)の舵取り船頭に
パリヌーロという男がいました。
航路をイタリアに向けている途中で眠りに襲われたパリヌーロは
夜の海に落ちてしまいます。
その場所もヴェルギリウスは
ティレニア海沿岸の古代ルカーニア地方の
とある磯場だと明記しています。
Policastro(ポリカストロ)湾と
Pisciotta(ピショッタ)の入り江に挟まれたあたりで
まさに現在も手を広げたような形で
海に伸びるパリヌーロ岬を指しています。

海に落ちたパリヌーロは一晩中むなしく仲間の名を呼んで
救いを求めますが叶わず
三日三晩に亘って海を漂流し、やがて砂浜に漂着します。
しかしそこで彼を待ち受けていたのはハッピーエンドではなく、
残酷な最期。
先住民捕らえられ、無残に殺された挙句
その遺体は海に打ち捨てられてしまいました。

成仏できずに漂う魂の中に埋もれていたパリヌーロは、
Sibilla Cumana(巫女クマーナ)に先導されて
Ade(ハーデス)の支配する黄泉の国へ赴いたアエネイスと
悲しい再会を果たします。
アエネイスはその魂を見て、
かつての自分の舵取り船頭の遺体を捜し出して
埋葬するように懇願します。

シビッラ・クマーナが奇跡的に遺体を回収して、墳墓を作り
そこは常に祀られ、永久に彼の名を留めることになったのです。
それがパリヌーロ。

海に2キロ張り出す形のパリヌーロの岬の周辺は
その海溝のつくりから、
実際に非常に複雑な海流を起こし
海を知る人々からは危険性の高い場所としても良く知られています。

海流と風の作り出す自然の景観が非常に美しい場所で
ここにはいくつかの海中洞窟があり、
中には青の洞窟もありますが
カプリ島のそれほどアクセスが良くないので
あまり知られていません。
パリヌーロの青の洞窟を含めた洞窟ツアーもありますが
人数が集まったら出発するというなんとも暢気なシステム。
催行会社によってルートは若干異なりますが、
銀の洞窟、赤の洞窟、硫黄の洞窟、
青の洞窟、修道士の洞窟などを巡り
ブオンドルミーレの白浜ビーチで休憩などを含めて
約1時間30分の行程になります。

Parinuro(パリヌーロ)
ナポリもしくはサレルノからPisciotta-Palinuro駅まで。
(ナポリからは約2時間、サレルノからは約1時間15分)
ピショッタ-パリヌーロ駅から
岬や青の洞窟へアクセスする船の出る港までは車で約20分。
駅前からは市バスもしくはタクシーで港までアクセスできます。

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