The Alan Smithy Band

The band is on a mission.

Sleepless in the air

2011年12月17日 | ASB活動日誌
前回までのあらすじ:
12年ぶりに米国本土の地に降り立ったひで氏を待ち受けていたのは乗り継ぎ便のキャンセルそして空港での11時間レイオーバー。
尿管結石という爆弾を膀胱付近に抱えながら果たしてひで氏は無事目的地にたどり着けるのか??

ブッキングし直された乗り継ぎ便が11時間後と知った私ひで氏はしばし呆然となった。
数時間なら覚悟していたがまさか10時間を超えるとは。。。直前に9時間のフライト、そして乗り継ぎ便キャンセル騒ぎでここまですでにここシアトルの空港で3時間以上を費やしている。ずっとココに居るなら、昔トムハンクスが出ていた映画「ターミナル」よろしく空港の住人の様になるしかないだろう。

性格的に、通常ならひとかけらの迷いもなく外に出るところだが、
懸念は下腹に漂う違和感である。このストーンの転がり具合によってはいつどこで激痛が発生するかわからない。。。
しかしここまで飛行機の中で同じリスクを抱えながらなんとかやって来た事を思えば仮に外で痛くなってもまあなんとかなるか。。。しかも空港にいたからといって痛みが来ないわけではないし、むしろ動いたりしているほうが気が紛れる。

こうして全く予定になかったシアトル訪問が実現した。
調べてみるとダウンタウンまでモノレール的な電車があった。これはありがたい。

どんな所にいっても、空港から街へと移動するバスやタクシー、列車から見える風景が好きだ。
空港の周りというのはたいがい同じようなものだ。それがだんだんと街の様相を呈してくる様、人の生活が垣間見えてくるそのグラデーションが好きなのである。
途中、セーフコフィールドが見えた。ああ、そういえばイチローか。と思った。

結局ぶらぶらするしかないという状況で、シアトルの街をぶらつく。クリスマスムード満点の、美しい港町が印象的だった。
頑張って22時ぐらいまで時間を潰し、その間いくつかの駅をランダムに訪ねたが、ある駅では、まさに Wrong Place at the Wrong Timeというテイストで、旅行者に見られないように苦心した。

こうしてとてつもない空き時間をなんとか過ごし、Tacoma空港へ戻った。
幸い、ストーンも大人しくしてくれていた。
しかし午前0時のシカゴへの乗り継ぎ便への搭乗が始まる頃、ゲートにてやや下腹部に鈍痛&妙な残尿感を感じた。
とりあえずトイレに、と思い周りを見渡すと意外にもトイレがない。
もう搭乗も始まっているし、乗ってからでいいか、と思い直す。

この判断が後で誤っていたことに、この時は気付くはずもなかった。

余談だが私は飛行機に乗る時に、早く乗りたいという気持ちは一切なく、できるだけ最後の方に乗りたいタイプだ。
早く乗ったところで早く飛ぶ訳ではないし、競う様にして早く乗ってもエコノミークラスの席で離陸までじっとしているほうがよっぽどしんどいからだ。
そして席は必ず、通路側にする。今回は特に、だ。

そしてほぼ最後に乗り込んだ時、チケットと座席を照らし合わせて「あ!」と思った。
この国内線の飛行機は、両側に3列ずつシートがあり、自分の席は左側の窓側だったのだ。
元々アレンジしていた乗り継ぎ便は通路側だったに違いない。しかしキャンセルの後急遽アレンジしたこの便で、通路側を指定するのを忘れていたのだ。

飛行機は完全に満員。自分の席の横2席にはものすごい大きなアメリカ人夫婦が座っていた。
私を見るなり

「ほら、彼のどこがベイビ-なんだい?」

「うふふ、ごめんなさいね、私たち、あなたが遅かったもんだから時間のかかる赤ちゃんと母親連れかと思って」

と映画の中のようなユーモアめいたことを言われ、二人に席を立たれ誘われるままに席に着いた。
そしてこの女性は続ける。

「0時に出て朝の5時にシカゴでしょ、ここに居る人はみんな寝るためにいるのよ。赤ちゃんが嫌なわけじゃないけど、今この場所ではちょっと困るわよね」

言われてみればそうだ。この便は夜行バスのようなものだ。寝ていれば着くのだから、考えて見れば楽な移動かもしれない。。。

この妙な尿意さえなければ。。。。!

言うや否やこの夫婦は首にU字型の枕を装着して寝てしまった。
よっぽど先にトイレに行かせてもらおうかと思ったが、ほぼ最後に乗ったため、座った頃には離陸準備のためシートベルト着用サインと共に座っていなければならなかった。仮に離陸後サインが消えたところで、この二人の膝頭と前の座席の背もたれの間には全く隙間がない。女性の方とは少し話したが、旦那さんの方はまさに屈強な巨漢という感じで、12月のシアトルから極寒のシカゴに向かう便の中で、機内とはいえ半袖、その袖口からタトゥーが顔を覗かせている。

現在の尿意は我慢できないようなものではないが、今から5時間、深夜ぶっ通しで耐えられるかと問われれば甚だ疑問である。
とにかく、離陸してランプが消えたら、まだ眠りの浅いうちに起こして通してもらうのがベストな選択だ。。。。!ととりあえずの決断をする。

こういう時の時間の進み方は信じられないぐらい遅い。
離陸してもいつまでたってもなかなかシートベルトサインが消えず、ようやく消えた頃には機内は完全消灯だった。隣りの二人は寝息を立てている。

よし、今しかない。
エクスキューズミーと女性をつついてみるが、全く反応がない。相当眠りは深い。すまん。
少し揺すってみる。ごめん、といいながら。
起きない。仮に彼女を起こす事ができても、夫の方はもっと難関そうだ。

この時、ふと思った。もしかすると、またいでいけるのではないか、と。
前後の隙間はないが、夫人と夫の間には足元にかろうじてやや隙間がある。そこに足を入れていけば、もしかすると起こす事なくいけるかもしれない。

覚悟を決めて、靴を脱いだ。
そろりそろりと立ち上がり、夫人と夫の間の数センチの隙間に一旦右足を入れる。
つまり、いま一時的に夫人と向かい合って彼女にまたがっている状態だ。
この状態で彼女が起きたら最悪だ、と思った瞬間、

あれほど揺すってもつついても起きなかった彼女が起きた。

目の前に自分にまたがって立っている謎の日本人を見て彼女は目をひんむいて
オウ!!! と叫んだ。

するとその声に反応して夫が目を覚ました!


絶対絶命。


つづく。














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