神秘の島

これは、日本海域に浮かぶ離島で暮らしていたアカネが、郷里に帰ってからも巻き起こす、陳腐な体験の数々である・・・

新宿には魔物が住んでいる

2008年06月30日 | 日々是好日
 この土日、新宿でお料理セミナースイーツ編があったので、行ってきた。雑穀自然食(つぶつぶクッキング)の提唱者、大谷ゆみこさんが講師である。
 二日間行われるので、土曜日の晩、予め安宿を予約しておき、地図を持って出かけた。ネットで引き出した地図によると、そのホテルは新宿駅からまっすぐ歩いたところにあり、明らかにすぐにたどり着けそうであった。


 金曜の夜から夜行バスに乗り込み、朝7時に新宿駅に着く。他にすることもなかったので、会場に一足も二足も先についておくことにする。 
 会場は、牛込柳町(うしこみやなぎちょう)という駅から徒歩10分の、つぶつぶカフェである。

 
 さて、アカネはトイレの便座が上がっていることを嫌がる女たちの気持ちが全く理解できないぐらい乙女心を持ち合わせていないが、自分は100%女脳だな、って感じるときがある。
 しかし、今日このときくらい、それを痛感したことはなかった。

 地 図 が 読 め な い ん で あ る 。

 
 新宿駅から、都心大江戸線に乗って、牛込柳町駅まではすぐであった。
 アカネは東出口に立った。
 手持ちの地図にあるように、目の前にコンビニもある。・・・てことは、この地図の向きに従って、まっすぐ歩いて行ったらいいってことなのかな?
 
 アカネは歩き始める。

 この角を左に曲がったらいいのかな?こんな路地に入ってしまうのか??・・・なになに、この傍に神社があるのか・・・・ないよ??むしろ学校があらわれたんやけど。地図には、学校の記載などどこにもないんやけど。

 混乱し、もと来た道を戻る。歩道に、「自転車の禁止駐輪区域」を書いた看板があり、その地図と手持ちの地図を合せてみる。

 ・・・・あたし、今どこにおるがやろう・・・??
 どっち向いて歩いたらいいがやろう・・・・?
 そう言えば、地図って全部北向きに作られちょった気が・・・。けんど知らん場所で、どっちが北かなんてわかるわけないし・・・
 もしかして、反対向いて歩いてたのか??
 頭の中で、この地図を反転させないかんってことなのか!?
 反転させた挙句、左右を逆転させないかんのか!?!?

 アカネのニワトリ脳に、そんな芸当できるわけがなかった。想像力だけでそこまでイメージできない。それはもはや、古代ヘブライ語を反転させて読んでみろと言われているようなものであった。
(だいたい、目の前にある景色しか見えないのに、空中図解みたいな地図がそもそもわかるわけないのだ)

 第一、牛込柳町っていう名前自体が、不吉すぎる。
 牛を柳の木にぶち込んでおくだなんて、尋常じゃない。

 結局コンビニの店員さんに聞き、あっさりとたどりつくことができたのであった。



 しかし、最大の魔物は、新宿駅に住んでいた。

 アカネは、その夜、大学時代の友人Oh!野くんと、ご飯でも食べようと約束していた。ホテルには11時にまでにチェックインしないと、入れてもらえないし風呂を使うこともできないので、先にチェックインを済ませようと考えていた。
 アカネは新宿駅の地下で、壁に貼ってある地図と、ネットで印刷した地図を比べてみた。あれ??「東南口」がどこか、書いてない。ホテルは、東南口からまっすぐ行ったところにあるのだ。
 しょうがない、駅員さんに聞いてみるしかない。

「すいません、私今どこにいるんですか!?」
「えーと、今ここですね。東南口は反対方向ですね。このエスカレーターを二つ上がってもらって、それから右に@ぇ:」+あ&2★38♪A+?{=」
 アカネに聞き取れたのは、「右に」までであった。
 駅員さんは、そのあとも交差点がどーの、大通りがどーの、身体の向きがどーの、と言っていたような気がするが、その情報はアカネのニワトリ脳を素通りして行った。

 とりあえずエスカレーターを二つ上った所を右に曲がって、今度はガードマンに聞いてみた。
「反対方向ですからね、ここをまっすぐ行ったらカラオケがありますから、それを右に曲がってですね@xく82:*」}。>v」
 とりあえずカラオケを右に曲がったら、すんげー複雑な交差点にぶつかってしまった。この交差点をどっちに渡ればいいんだろう!?(もしくは渡らないか)

 行き当たりばったりで渡ってみると、JRの路線が見え、ルミネストの建物が見えてきた。(ルミネストは、地図で目印になる大きな建物なのだ)

 やった!
 あたしってすごくない!?
 行き当たりばったりでも、イイ線のとこまでこれたやん♪

 なになに、どうやらここが新宿駅のここら辺だから・・・この大通りが地図のこの道だとすると、地図をこう向けて、こっち向いてあるいたらいいんだな!

 意気揚揚と歩いて行くと、左側に歌舞伎町が見えてきた。

 ん?地図には歌舞伎町のってないけど??どーなってるんだ??

 店の前で突っ立ってるおじさんを捕まえて聞いてみると、あっという間に何人もの人を呼んできて相談会みたいになってしまった。
「ここを真っ直ぐいきゃぁいいんだ!」という人もいれば、
「うーん・・・どこだろう・・・説明しづらいですね。」というお姉さん、
「ここは一体、この地図のどこになるんだ?」というおじさん、
「この先に交番があるから、聞いてみたらいい!」と言うおじいさん。
 つまり、誰しもが自分がいる場所を答えられないのを見るに、アカネがわかったのは、

「そうか、東京の人も、自分がどこにいるかよくわかってないんだ。」

ってことだった。(その発見をOh!野くんに話すと、「違うよ」と、チョー迷惑そうな顔をされた)

 
 結局、アルタ前まで戻り、そこまでOh!野くんに来てもらた。ほんで、一緒にホテルを探してもらった。アカネはやっぱり、逆走してたことが分かった。
 知らない街で地図が読めないということは、学校に来て字が読めないのと同じぐらい、死活問題だってことがわかった。


 磁場が狂うミステリースポットが富士の樹海にあるという。そこでは、迷い人が同じところをぐるぐると回り続けて、けして出られないのだ。
 だが、新宿自体がミステリースポットなのではないか。
 アカネは、強くそう思う。

私のベクトル

2008年06月27日 | いろいろ。
 「何のために生きるのか?」という人類普遍の問いには、今まで真剣に考えたことがない。
 中学生のころは、「死なないから生きてるだけ」って思っていた。
 
 生まれてきたこと自体に、意味なんてないと思う。
 人のいのちそのものに、それほどの価値もないと思う。

 だが、最近とみに考えている。

 自分は、何のために生きるのか、と。
 自分には、何ができるのか、と。


 久しぶりに、リンカーン島(今まで住んでた島である)に渡った。職場の子どもたちと遊んだり、友人や後輩たちと語らった。
 
 今年入ってきた後輩は、世界を旅した経験をもつバックパッカーであり、頭も良くてエネルギッシュだ。
 その彼女に質問された。
「何でアカネさんはエコなんですか??」
 アカネにしてみれば、何でそんなことを聞くのか、という感じであった。アカネは今まで、自分のベクトルを抑えてきたので、自分が自然や世の中に対してどういう洞察を持っているかを、語ってこなかった。言葉にしてこなかった。
 そのため、Johnも含め、多くの人に“ファッションでエコやってる”“流行だからちょっと変わったことしてる”と思われてたようなのだ。

 だから、最近思ってることは、自分の考えを言葉にしないといけない、ということだ。

 自分は口下手だから、そのときに何を感じてるのか自分でわからないことがよくある。しばらくすると、適切な表現が心に浮かんでくるのだが、時すでに遅しなのだ。

 後輩は、こんなことも言っていた。
「環境のために頑張ってる人もいるけど、何で頑張れるのかがわからない。」
 アカネにとってそれは当たり前過ぎて、疑問に思ったこともないので、やっぱりそのときはうまく答えられなかった。
 
 
 自分が今まで、眠っていた時間が多すぎて、伝え損なっていたことが多すぎて、知りえなかったことが多すぎて。
 そんなことを、少しずつ実感してゆく。


 「私は、何のために生きてゆくのか。」
 自分の中で、その答えは出た。
 アカネは、地球環境を残すために、自分を使ってゆく。

 「私には、何ができるのか。」
 地元で、何ができるのかを、その答えを、これから探してゆく。

非常に陰気な遊び

2008年06月10日 | 日々是好日
 我が家では、今はもう食べてしまったが、昔は鶏を飼っていて、鶏小屋はアカネとおねえの最高の遊び場だった。鶏に関する思い出は尽きることがない。

 子どもの頃、アカネとおねえは、野犬に襲われ母を亡くした5羽のひよこをとても可愛がっており、その5羽を主人公にした『にわとり王国物語』などを作って、互いに話して聞かせたりした。
 平和なにわとり王国に、悪い雌鶏がやってきて、雌たちが温めている卵をスーパーの冷えた卵と替えたり、雄たちをみんな手なずけてしまったため、その5羽が王国の威信をかけて武道会で対決する、という話である。

 アカネやおねえに電話がかかってくると、母は鶏小屋の方を向いて叫んでいた。

 
 そんな、身も心もどっぷり鶏小屋に浸かっていたいたアカネの経験から言うと、鶏は雑食である。
 草も穀物も大好き、ミミズも青虫もウジ虫も大好きな鶏は、当然ナメクジも大好きである。


 今年は、ナメクジが多い。
 
 ニンニクを抜いたら、房の間に2~3匹入り込んでいるし、レタスやチンゲンサイを抜いても現れる。ナメクジと言えば、葉っぱをばりばり食べてしまう悪いヤツである!
 オクラを喰われたアカネは、ナメクジを退治してやろうと決めた。
 しかし、我が家にはもう鶏はいない。
 近所に飼っているところはないかと父に聞くと、ひろみっちゃんくが飼っているという。ひろみっちゃんくは、我が家の隣である。

「でもナメクジ勝手に鶏に食わしたら、怒られんかなあ?」
「かまんろう。けんど食べ染めてなかったら食うか判らんぞ。」

 バイトが休みの日、アカネはナメクジバスターズとなり、畝から畝へと彷徨った。父が、竹でピンセットを作ってくれ、ナメクジ取りには最適である。
 最初は、鍋に捕獲されたナメクジが逃げようとして大変だったが、鍋の中に葉っぱを入れておいてやると、その下に隠れるということがわかった。
 そうして、アカネはナメクジを捕って捕って捕りまくった。


 わくわくしながらひろみっちゃんくの鶏小屋に向かうと、納屋でおじいさんが煙草をふかしている。この人が噂に名高いひろみっちゃんなのか!?
「おはようございます。あの、おんちゃんくの鶏にナメクジやってもいいですか?」
「かまんけんど・・・。ナメクジらぁ喰うろうか。」

 鶏がナメクジ好きなのは、意外に認知度が低いのかもしれない。
 事実、金網からナメクジを与えても、ここの鶏は見向きもしない。てゆーか、口ばしを切られているので上手に食べられないようだ。

 アカネはここの鶏は諦め、東のおばちゃんくの鶏にターゲットを絞ることにした。


 午後からもたくさん捕り、さっそく東のおばちゃんくの鶏小屋に向かう。
 金網から差し入れてやると、初めは不思議そうにしていた鶏も、コツコツとついばみ始める。
 金網の手前に落ちたナメクジも、口ばしを出して食べようとする。

 これって、鶏が喜んでる証拠じゃない!?

 調子に乗っていたアカネは、東のおじちゃんが様子を見に来ていたことに気付かなかった。
「あ!こんにちは!おんちゃんくの鶏にナメクジやりゆう。」
「そう、なんか鶏が騒ぎゆうき見に来たけんどよ、そんなもん食うかえ。」
「うん、うちくでも鶏かいよったときはよ、ナメクジやりよったもん。」
 
 おじちゃんは不審そうに一瞥し、奥へ消えた。
 その後、おばちゃんの
「・・・ナメクジらぁて・・・・」
と不思議そうに話している声が、漏れ聞こえてきた。

 どうやら、鶏とナメクジの関係は、意外に知れ渡っていないようである。
 アカネは、その後もおねえが帰ってきたときに、ナメクジを捕獲して一緒に東のおばちゃんくの鶏に与えた。
 おねえの彼氏であるコウヘイくんは、一匹づつピンセットで与えながら食われていく様子を見守る自分たちを、
「めちゃめちゃ暗い遊びやな、コレ・・・・」
と言った。


 
 鶏の喜びは、アカネの喜びである。
 鶏が喜んでくれるならば、アカネは何度でもナメクジをプレゼントしてあげよう。

 鶏のために、アカネはいつか三度、ナメクジバスターズになるだろう。