アカネみたいにずぼらで中途半端者だと、普通に生活しているだけで「やりかけ」のものが溜まっていってしまう。
今日はその中の一つ、作りかけだった「手紙入れ」を完成させることにした。
何のことはない。以前友人からもらっていた、サイズの大きいジーンズにいろんな布を貼り付けて、手紙を入れて飾ってやろうと思ったのが始まりである。
アカネという生き物はめんどくさがりなくせに貧乏性なので、必要なものがあっても「これ、自分で作れるんじゃないか?」などと考えてしまい、結局とりかかるのが億劫で、何ヶ月もそれがないために不便な生活をおくるのが常である。
しかも、自分で作ったらほとんど全て失敗して、手間と時間を失って後悔したりするのだ。
さて、余り布などを縫い付けているこの糸、そういえばリンカーン島で買ったものだ。
リンカーン島に来てまだ間もなかった頃、アカネは12:00の船に乗って買い物に出かけようとして、朝8時に起きたものの、風呂に入ったり服を選んだり化粧をしたりお菓子を食べたり本を読んだり、と悠長に時間を使いすぎた結果、何時間も前から準備していたにも関わらず、12:00の船に乗り過ごしてしまった。
一便逃すともう次がないのがリンカーン島である。
アカネは諦めて、港の傍の商店にお菓子を買いに行った。
その商店は、時が30年は止まっているかと思われるような駄菓子屋だった。
チップスターを手に取ると、う”っ、賞味期限が過ぎている。
店の奥にはお婆さんが座っていて、お婆さんの後ろにボタンだとかレースだとか、裁縫道具を収納している棚が見えた。
アカネはバイトで使っていた「MICAL」のロゴ入りエプロンを、可愛い布をあててリメイクしたいと前々から思っていたのだ。
「あの、ここで糸買えます?」
「糸ね、へぇへぇありますよ。前はねぇ、和裁も洋裁もする人がたくさんいて、ようけ取り寄せてましたけど、最近はねぇ・・・」
そう言って引き出しを開けて糸を捜してくれるお婆さん。アカネは、その引き出しの中を、長い触角を持った黒い虫がサッと動いたのを見て見ないふりをした。
「へぇへぇ、ありました。青い糸と、ピンクの糸ね。」
「それと、ズボンに入れるゴムもください。長さは・・・」
今度は、別の引き出しからササッと黒い影が走る。
「ありがとうございました。」
アカネがそう言って商品を受け取ろうとしたとき、あろうことか、愚かにもその虫がアカネとお婆さんの前にチョロ出てきたのである!
「あ、ゴキブリ。」
お婆さんは冷静にそう言って、ばしん!!!
素手でゴキブリを叩き潰したのである!しかも引き出しの中の商品の上でである!!
「あれあれ、手ぇ洗わなぁ。」
お婆さんは触覚の痕がついた手を見てどこまでも平静であった。
「ありがとうございましたぁ!!」
アカネは何故か来たときよりもスッキリした気持ちになって店を出た。
リンカーン島だもん!イイよね!!
アカネも、したたかに逞しくリンカーン島で生き抜いていかなければ!
今日はその中の一つ、作りかけだった「手紙入れ」を完成させることにした。
何のことはない。以前友人からもらっていた、サイズの大きいジーンズにいろんな布を貼り付けて、手紙を入れて飾ってやろうと思ったのが始まりである。
アカネという生き物はめんどくさがりなくせに貧乏性なので、必要なものがあっても「これ、自分で作れるんじゃないか?」などと考えてしまい、結局とりかかるのが億劫で、何ヶ月もそれがないために不便な生活をおくるのが常である。
しかも、自分で作ったらほとんど全て失敗して、手間と時間を失って後悔したりするのだ。
さて、余り布などを縫い付けているこの糸、そういえばリンカーン島で買ったものだ。
リンカーン島に来てまだ間もなかった頃、アカネは12:00の船に乗って買い物に出かけようとして、朝8時に起きたものの、風呂に入ったり服を選んだり化粧をしたりお菓子を食べたり本を読んだり、と悠長に時間を使いすぎた結果、何時間も前から準備していたにも関わらず、12:00の船に乗り過ごしてしまった。
一便逃すともう次がないのがリンカーン島である。
アカネは諦めて、港の傍の商店にお菓子を買いに行った。
その商店は、時が30年は止まっているかと思われるような駄菓子屋だった。
チップスターを手に取ると、う”っ、賞味期限が過ぎている。
店の奥にはお婆さんが座っていて、お婆さんの後ろにボタンだとかレースだとか、裁縫道具を収納している棚が見えた。
アカネはバイトで使っていた「MICAL」のロゴ入りエプロンを、可愛い布をあててリメイクしたいと前々から思っていたのだ。
「あの、ここで糸買えます?」
「糸ね、へぇへぇありますよ。前はねぇ、和裁も洋裁もする人がたくさんいて、ようけ取り寄せてましたけど、最近はねぇ・・・」
そう言って引き出しを開けて糸を捜してくれるお婆さん。アカネは、その引き出しの中を、長い触角を持った黒い虫がサッと動いたのを見て見ないふりをした。
「へぇへぇ、ありました。青い糸と、ピンクの糸ね。」
「それと、ズボンに入れるゴムもください。長さは・・・」
今度は、別の引き出しからササッと黒い影が走る。
「ありがとうございました。」
アカネがそう言って商品を受け取ろうとしたとき、あろうことか、愚かにもその虫がアカネとお婆さんの前にチョロ出てきたのである!
「あ、ゴキブリ。」
お婆さんは冷静にそう言って、ばしん!!!
素手でゴキブリを叩き潰したのである!しかも引き出しの中の商品の上でである!!
「あれあれ、手ぇ洗わなぁ。」
お婆さんは触覚の痕がついた手を見てどこまでも平静であった。
「ありがとうございましたぁ!!」
アカネは何故か来たときよりもスッキリした気持ちになって店を出た。
リンカーン島だもん!イイよね!!
アカネも、したたかに逞しくリンカーン島で生き抜いていかなければ!