合間の博物館旅日記

博物館を回りながら日本各地を旅をする過程の壮絶な日記。(2005.4-9月)
旅終了後は適当に随時更新の予定。

大阪について

2012-06-11 21:08:06 | Weblog
大阪という町はよく知らない。何回か行ったことはあるが…。

大阪のイメージというとまず吉本。
通天閣、ずぼらや、花登筐の「どてらい奴」、秘密の県民ショーに出てくる「秘密の大阪」、藤山寛美、アホの坂田、浪花恋しぐれ、悲しい色やね、やしきたかじん、岸和田少年愚連隊、あとなんだろなあ……。

大阪に友人のT石君と二人で行ったのはもう何十年も前。あんときゃ驚いた。
天王寺の動物園を見ようと道を歩いてた。ちょうど雨が降ってて、傘をさして歩いてたんだが、道に数名の男達が何やらたむろしている。平日の午前中に彼らは何をしてるんだろう? と思った。
彼らは――何もしていなかった。ちょうど彼らの頭上に動物園の橋みたいのが掛かっていて、雨が防げる。何と彼らは雨宿りをしていたのだ。

別のタイミングで大阪を訪れた時もカルチャーショックがあった。
村田英雄の「王将」にも登場する通天閣。東京でいえば東京タワーにも匹敵する観光名所だと勝手に思っていたが、何とその真下に男が大の字になって寝ており、でかいむく犬が男のにおいを嗅いでいたのだ。
恐るべし大阪!

また数年後に大阪を訪ねた時も、天王寺駅北側の世界のお風呂を体験できる施設に泊まったのだが(確か叶姉妹が宣伝していた)、こちら側はジェットコースターや大阪プロレスのお店などもあるテーマパークだというのに、駅の南側へ行くと、途端に歩くのさえはばかられるような治安の悪さ、ガラの悪さを感じたからである。
これが大阪西成地区、いわゆるアイリン地区か……と身震いし、早々に退散したものだ。
この空気は東京にはまずない。
池袋や新宿の町を深夜にでも歩けば別の意味で怖さを感じるが、それとも違う。

ここのブログではかねてより橋下市長の悪口を書いて来たけれど、自分は一般論として述べており、大阪の異常性や特殊性はあまり理解していなかった。
こういう異常さに代表されるように、大阪に改善すべき点が多々残っており、それを一番実感してるであろう大阪市民が市長を支持するというのなら、関係ない都民の俺が口を挟むことではないのかもしれない。
生活保護が本当に必要な人のところに行かず、わけのわからない恩恵を受けている人たちのために国や自治体の財政が圧迫されてるとゆうのなら、まずそのあたりを全て明確にして国民に審議を問えばいい。

しばらく動向を静観してみよう。

「JIN-仁-」(村上もとか)の知られざる名シーン

2012-06-09 23:46:06 | Weblog
酷い下痢と高熱で体調不良です。医者に行ったら胃腸炎だろうとのこと。薬をもらい症状は快方に向かってますが、仕事を連日休むわけにもいかないので勤務についております。まともな固形物を食べてないので、じっとしていてもきつい。

昨夜はそんなわけで勤務を変わってもらい、サッカーのヨルダン戦を見ていた。相手が一人足りなくなったからといって、6-0というスコアはどーよ! ヨルダンもオマーンも弱すぎ。日本が過去に比べて特別に強くなった印象はない。(まあ過去に比べて意味のない横パスやバックパスは減ったけど)
圧勝でもつまらない試合というのはあるもんだね。吉田と香川の怪我の方が心配だ。次のオーストラリア戦に期待。


日本人の平均寿命が、男は78歳、女は86歳でまた伸びたらしい。年金制度の崩壊を思うと、一概に喜ぶべきでもないだろう。長く生きること=幸せに生きること、ではない。
要はどれだけ充実した人生を送れたかがポイントなんで。
長生きせずとも世に名を残した人はたくさんいる。幕末の志士なんかほとんど早死にではなかったか? あるものは斬られ、あるものは切腹し、またあるものは病に倒れた。
龍馬、中岡慎太郎、武市半平太、高杉晋作、吉田松陰、小松帯刀、新選組の面々……。
江戸~明治の平均寿命は40-50歳ぐらいであろうか?

村上もとかが漫画「JIN-仁-」を描こうと思った動機は、女郎たちが結核や梅毒などで20-25歳ぐらいでばたばたと死んで行く――その理不尽さに心を痛めたから、というのは有名な話である。
漫画の中では野風の先輩にあたる花魁が末期の梅毒にかかり、仁がペニシリンを開発して治療にあたる、というのが前半の山場である。
この一連の仁の治療を目の当たりにし、野風は仁を本気で想うようになるのだが、野風が色仕掛けをして、いざ男女の関係になりかけた時、火事が起きて未遂に終わってしまう。

こうして「JIN-仁-」をあらためて通して読むと、主人公の仁や龍馬、恭太郎や東修介などの男性陣はあまり印象に残らず、女性の登場人物ばかり印象に残ってしまう。特に咲と野風である。

咲は見合いをするが、結納の席で縁談を断り、野風の乳癌の手術の場に駆け付ける。三隅の扇動で手術を邪魔しにきた武士たちの前に立ちふさがり「わたくしは覚悟が足りなかった」と、喉に短刀をあて、「もはやこれまで」と死ぬ覚悟までして手術を守ろうとするのである。
しかしその代償は大きく、母の栄はショックで寝込み、勘当同然となってしまう。

さらにこのあと、三隅の姦計にかかり仁が入牢。野風は仁を助けるために自分の身を売って金を作る。やがて疑いがとけ仁は釈放されるのだが、拷問で足は傷だらけ。満足に歩くこともできない。その足に泣きながらすがりつく咲。一見非常にいいシーンだが、この時野風が密かに涙を流しているのを見逃してはならない。仁が釈放されたことを喜んでいる涙か。咲の先生を想う心に打たれたか。咲が言うとおりあまりの理不尽さに涙したのか……。
自分が思うには、自らの身を売ってまで助けた仁……しかしその足元にひざまずけるのは、自分ではなく、やはり咲さんなのだ。その思いが、二度と泣かないとさえ誓った野風に涙を流させた、と読む。

場面は飛び、野風とルロンの結婚式に仁と咲が呼ばれるシーン。
野風は横浜で、末期の梅毒患者の元女郎たちを収容する施設を作り、彼女らの看護にあたっていた。今でいうホスピスみたいなものか。
しかし火事が起こり、野風は歩けない患者を助けに火の海に飛び込んでしまう。火消しの千吉により無事に助かるが、仁は野風を「命知らずにもほどがある!」と叱り付ける。それに対して野風は「先生はあちきを心配して怒ってくれたのでおざんしょう。うれしくてまんだ胸がふるえていす」と答える。えっ? 野風の本当の気持はルロンではなく、まだ仁にあるのか?と思わせるエピソードである。

このあと、野風の癌が再発。すでに肺に転移しており、余命が二年もないだろうことが仁の診察で判明。
そして結婚式が終り、その夜のパーティーで。
「南方先生、咲さま…お二人もダンスをしんせんか? 次が最後の曲でありんす」と言う野風に
「い…いえ、わたしはダンスは出来ませんので」と未来人らしくなく断る仁。
それに対し咲が「あのわたくしも出来ませんけれど…ルロンさんに教えて頂けるのなら…」
さらに「先生も野風さんに教えて頂いたらいかがでしょう?」と水を向ける。
「それにしても驚きましたよ。咲さんがダンスをしたがるなんて…」
「いいえ、先生…それは違うと思いいす…咲さんは…」
力ない咳をする野風。
「ごめんなんし…もう大丈夫。曲が終わるまで踊りいす…」
「このダンスは…咲さんからのプレゼントでおざんしょう」


自分の身を他人に売ってまで慕った男と一緒になることができず、しかもそれがおのれの幸せであると嘘をつき、しかしまだ気持が続いていることを恋敵である咲に見破られている。そしてそれを言うことで間接的に自分の気持を相手に伝えている……。
自分が選ぶ漫画「JIN-仁-」の名セリフのナンバーワンです。

で、敢えてこんなことを何故書いてるのかといいますと、この名シーンがドラマには一切ないからなんです。
ドラマの「JIN-仁-」しか見てない人はこの名シーンを知らないわけです。だから伝えたかった。

原作を読んでない方、読んでも筋だけ追って流し読みした方、漫画だからと馬鹿にして読まなかった方。
この作品は凡百のくだらない漫画とは違います。まずこころざしが違います。
是非お読み下さい。