御殿山ヒルズ(品川)にて。
郵政民営化と外圧
十年来の持論であるという小泉首相の郵政民営化論の背景に、1969年、父、順也氏の急逝に伴い、急遽、参議院選に初出馬して落選した際、地元の特定郵便局長たちの協力がえられなったことが大きな要因であるとし、これを恨んで言い出したとする、まことしやかな風説もあるようであるが、もともと、小泉首相の祖父、小泉又次郎氏は、戦前の浜口内閣の逓信大臣を勤めた人でもあり、郵政一族の遺伝子を受け継いでいることは、否定できない事実ではありましょう。
しかし、だからといって、こういう純個人的な好悪の問題が、今回の馬鹿の一つ覚えのような郵政民営化の強力な推進の原動力になっているとは、到底考えられず、小泉首相自身も、「私が郵政三事業民営化の必要に気がついたのは、大蔵政務次官をしていた78年頃のことです」と述べている(自著『小泉純一郎の暴論青論』1997年,集英社)。
大蔵関係にあれば、当然深く知っていると思われるが、そもそも最近の日本の規制緩和や官営諸事業民営化推進の大きな原動力になっているのは、何と言っても外圧、すなわち、アメリカ側からの要求である。
サンフランシスコ講和条約で日本は、完全な独立国になり、GHQの支配下で主権が制限された時代とは違って、一々アメリカの要求に従う必要はないことは、いうまでもないが、しかし、それは、あくまでも法的、形式的な面のことであり、日米安保体制下にあって、日本外交を貫く基本的な要素が、「対米配慮」「対米依存」であることにはっきりと見られるのと同様に、内政、特に経済、通商問題においても、やはりアメリカ側の要求を好むと好まざるとにかかわらず、原則的に受け入れざるをえない立場にあるわけである。軍事・外交面と同様に経済通商面においても「対米配慮」「対米依存」の基本的な立場に立たされていることは、いまさらいうまでもないところである。
具体的には、1994年の宮沢・クリントン会談で合意されて以来アメリカ政府は、毎年日本政府に対し、「年次改革要望書」という公文書を手交し、その実行を強く要請している(これらの『要望書』は、在日米国大使館のウェブサイトで公開されている)(http://japan.usembassy.gov/tj-main.html)。
95年の『要望書』では、郵政省のような政府機関が、民間保険会社と直接競合する保険業務に携わることを禁止せよ」と明記し、以来、アメリカ政府は、簡保の廃止を強く要求し続けてきたところである。勿論、その背景にはアメリカ保険業界からの執拗な圧力が存在し、日本の郵政民営化は、アメリカの生保業界にとって最も重要な通商問題とされてきた。このように郵政民営化の背後には、10年も前からアメリカの外圧が存在する点については、一般の新聞、雑誌等には、ニュース性に乏しいことからか、殆ど報道されておらず、与党自民党議員の中ですら、この重要な『要望書』の存在を最近まで知らなかった者も少なからずいるということのようである(関岡英之「郵政民営化の背後にある真実」世界9月号)。
小泉首相が特に郵政民営化に強いリーダーシップを発揮したのは、おそらく、道路公団民営化で十分なリーダーシップを発揮することができず、道路族議員を押さえきれず、竜頭蛇尾に終わってしまった苦い経験の反省の上に立ったものではあるまいか。今回の郵政では、はっきりと、郵政族議員と袂を分かったことが、その一応の成功の基礎にあるのではなかろうか。
郵政民営化と外圧
十年来の持論であるという小泉首相の郵政民営化論の背景に、1969年、父、順也氏の急逝に伴い、急遽、参議院選に初出馬して落選した際、地元の特定郵便局長たちの協力がえられなったことが大きな要因であるとし、これを恨んで言い出したとする、まことしやかな風説もあるようであるが、もともと、小泉首相の祖父、小泉又次郎氏は、戦前の浜口内閣の逓信大臣を勤めた人でもあり、郵政一族の遺伝子を受け継いでいることは、否定できない事実ではありましょう。
しかし、だからといって、こういう純個人的な好悪の問題が、今回の馬鹿の一つ覚えのような郵政民営化の強力な推進の原動力になっているとは、到底考えられず、小泉首相自身も、「私が郵政三事業民営化の必要に気がついたのは、大蔵政務次官をしていた78年頃のことです」と述べている(自著『小泉純一郎の暴論青論』1997年,集英社)。
大蔵関係にあれば、当然深く知っていると思われるが、そもそも最近の日本の規制緩和や官営諸事業民営化推進の大きな原動力になっているのは、何と言っても外圧、すなわち、アメリカ側からの要求である。
サンフランシスコ講和条約で日本は、完全な独立国になり、GHQの支配下で主権が制限された時代とは違って、一々アメリカの要求に従う必要はないことは、いうまでもないが、しかし、それは、あくまでも法的、形式的な面のことであり、日米安保体制下にあって、日本外交を貫く基本的な要素が、「対米配慮」「対米依存」であることにはっきりと見られるのと同様に、内政、特に経済、通商問題においても、やはりアメリカ側の要求を好むと好まざるとにかかわらず、原則的に受け入れざるをえない立場にあるわけである。軍事・外交面と同様に経済通商面においても「対米配慮」「対米依存」の基本的な立場に立たされていることは、いまさらいうまでもないところである。
具体的には、1994年の宮沢・クリントン会談で合意されて以来アメリカ政府は、毎年日本政府に対し、「年次改革要望書」という公文書を手交し、その実行を強く要請している(これらの『要望書』は、在日米国大使館のウェブサイトで公開されている)(http://japan.usembassy.gov/tj-main.html)。
95年の『要望書』では、郵政省のような政府機関が、民間保険会社と直接競合する保険業務に携わることを禁止せよ」と明記し、以来、アメリカ政府は、簡保の廃止を強く要求し続けてきたところである。勿論、その背景にはアメリカ保険業界からの執拗な圧力が存在し、日本の郵政民営化は、アメリカの生保業界にとって最も重要な通商問題とされてきた。このように郵政民営化の背後には、10年も前からアメリカの外圧が存在する点については、一般の新聞、雑誌等には、ニュース性に乏しいことからか、殆ど報道されておらず、与党自民党議員の中ですら、この重要な『要望書』の存在を最近まで知らなかった者も少なからずいるということのようである(関岡英之「郵政民営化の背後にある真実」世界9月号)。
小泉首相が特に郵政民営化に強いリーダーシップを発揮したのは、おそらく、道路公団民営化で十分なリーダーシップを発揮することができず、道路族議員を押さえきれず、竜頭蛇尾に終わってしまった苦い経験の反省の上に立ったものではあるまいか。今回の郵政では、はっきりと、郵政族議員と袂を分かったことが、その一応の成功の基礎にあるのではなかろうか。