私達の育てた小さな緑が失われようとしています

緑のまちを望んで、私たちは緑を育てました。その小さな緑が失われようとしています。

私たちの声が届かなかった都市整備委員会

2007年06月09日 | 私たちの育てた緑が
6月7日、都議会都市整備委員会において、「六町神社の早期移転計画の撤回と六町エコプチテラスの存続に関する請願」について、審議が行われました。
スタッフとともに傍聴してまいりましたのでご報告します。

審議結果については誠に残念ながら「不採択(否決)」となりました。

各政党の思惑が反映される政治的な結果でもありますが、都議会がくだした大きな判断です。

15年で終わるはずの区画整理が、東京都の見通しの甘さから30~50年以上かかることになり、人々の人生が大きく狂い、高齢化した住民から先の見通しを失わせ、まちが壊れる中で、六町エコプチテラスは、多くの人に希望を与え、まちを再生してきました。
折りしも、翌日の6月8日、ドイツで開催されたG8ハイリゲンダム・サミットでは、各国の首脳が地球温暖化対策の実現に向け、何とかスタートラインにたつことができた日であり、これからまさに持続可能な社会の実現に向けて、国だけでなく、企業も国民一人ひとりも参加し、行動する世界の流れが確認されました。
主観的な見解かもしれませんが、六町エコプチテラス事業は、環境問題を身近に、わかりやすく、また楽しく市民につたえる極めて民主的なプロセスを重視した、自立した市民と、協働を経営理念とする足立区・足立区まちづくり公社との協働による先進的な事業であり、まさに地域レベルで地球温暖化対策に取り組むツールとして効果的なモデルであると考えますが、その先進性ゆえに、また地球温暖化対策の必要性の認識不足ゆえに、また私たちの説明が不十分であったがゆえに、まさにこれからその必要性と価値について、評価・検証・普及させるべきときにもかかわらず、今回の不採択となった結果はまことに遺憾です。

しかし、今回の審議においては、単に「採択・不採択」だけでない、たいへん中身の濃い審議が1時間半にわたって行われました。
そこには、
「私たちの活動の価値がいったいなんであったのか」
「新しい公共とは何なのか」
「まちを豊かにしていくのは誰なのか」
「深刻化する環境問題について私たちはどう向き合っていくのか」
という議論がなされ、まさに現場の声が反映されたものでした。

特に印象的だったのは、最終的に否決に回った東野都議(公明党)から、「今回は賛成できないけれども」と前置きしつつも、
「東京都の都合で、このような物事の進め方が行われるべきではない」
「自治体・地権者・審議会だけでなく、ボランティア団体への丁寧な説明と情報交換が行われていたならば、このような事態にはならなかった。認識の薄さについて、今回の件は教訓とすべき」
など、まちをつくる人(ステークホルダー)への説明は、単に区画整理法で定められた範囲ではないという、「新しい公共」に対する認識の高い意見が出されました。

また、可決に回った吉田都議(民主党)からは、区画整理によって壊れた町が、市民の手によってぬくもりある活きた場所として再生したことにたいする評価をすべきであるという意見が出されました。世界に広がるコミュニティガーデン同様、エコプチテラスが地域の活性化、コミュニティの形成に成果を挙げていること、石原都知事が掲げた10年後の東京の方針の下、東京都環境局がおこなっている空き地の隙間緑化プロジェクトとの整合性があることなどについて、意見が出されました。

また、議論としてもバランスが取れており、神社移転の賛成についても意見が出されました。川井都議(自民党)からは
「神社移転は区画整理の一環として行われるもの」
「氏子が土地の寄進をするというのは大変なこと」
「区民農園に変わってできる神社の横に緑があれば、鎮守の森として本格的なヒートアイランド対策が期待できる」
などの意見がありました。
なお川井都議は、質問のとき以外でも、都の職員の説明に対し
「それじゃあ、都が説明責任果たしていないと認めることになるじゃねーか、笑ってんじゃねえ」
と都の職員をヘルプする野次を飛ばしたり、自分の発言の後居眠りを始めたりと、発言以外でも傍聴者の注目を集めていました。

植木都議(共産)からは、暫定利用が問題で、足立区がきちんとした用地を提供すべきという意見がありました。

今回の審議会では、東京都の考える町の関係者;足立区でも地権者でも審議会でもない、それでも町に住み、町を愛し、町のために汗を流し、町から世界に向けて発信する人がいるということが、何度も何度も繰り返し発言されました。
東京都にとって存在すら認識されていなかった私たちの発信は、
「緑を増やしたい」
「いいことやってるんだからがんばれ」
「エコプチ大好き」
という人と署名という形でつながって、7570名のぬくもりあふれた活きた市民の声として広がりました。
そして、東京都議会において、その存在と、新しい公共のあり方についての現場の議論がなされました。

繰り返しますが、神社は大切な施設です。歴史と文化を大切にし、神社を大切に思う人が町にたくさんいます。
それは子供たちや未来を大切にし、環境について考える人と重なっていることも多くあります。
人がいて、人が活き活きとして、町は活き活きとするのです。
まちづくりをしている私たちは、その人たちのために、その人たちが町をもっともっと好きになってもらうように、あらゆる合意形成のプロセスにかかわる準備があります。
そのとき、エコプチか神社かという議論でない、第三の道が現れるのです。

今回の件は、東京都が区画整理法の上にあぐらをかき、そこに住む人たちの思いを虫けらのように扱い、神社という大切な施設を軽んじ、エコプチという大切な施設を軽んじ、東京都が区画整理法だけを根拠に考えるまちづくりを押し付けていることが、背景にあります。
それは「ここは空き地だ」「環境問題は関係ない」などという発言が続くことで裏付けられています。
このようなプロセスでは、まちを大切にする人の心が壊れ、ささやかな幸せや人のつながりは踏み潰され、心のない、ぬくもりのない町ができてしまいます。
だから私たちは異議を唱えているのです。

今回の採決では私たちの意見は採択されませんでした。
しかし審議のプロセスにおいては、私たち現場の意見が反映され、都の対応や説明のやり方はおかしいんじゃないか、という議論がなされました。
不採択という結果の重要性を認識しつつ、そのプロセスで話し合われたことも重く受け止める必要があると考えます。
このような活きた議論をしていただいた都議会議員の皆様に感謝すると同時に、エコプチのような場を広げたいと署名に協力していただいた7570名の皆様のおかげでこのような議論が行われたと思っております。

改めてお礼申し上げます。