abyman の折り紙と日記

折り紙、本、旅の日記

折り紙と青春の日記4

2017-12-04 19:54:49 | 日記
次の日は土曜日だった。
野球部は遠征試合のために、鹿児島市内の中学へ午後から行っていた。
遠征に行くのはレギュラーと準レギュラーだけだ。
ぼくたち補欠は、グランドならしをしたら、帰ってもいいことになっていた。

遠征試合を具合が悪いと言ってばっくれたコッペが、ぼくの横に立っていた。
「おまん、具合が悪いんやないんか?」
「カツよ、試合どころやないやろが、とにかく計画を立てんとよ。
グランドならし終わったら、クラスに来いや」
ぼくは俯いて、
「ああ」
と答えた。

放課後の二年一組の教室に入ると、ぼくは立ち止まってしまう。
コッペの他に三人の女子が机をくっ付けて車座に座っている。
ぼくは思わず、
「コッペや、昨日のこと三人に話したんか?」
コッペはニヤニヤ笑っている。
「おう、おまんと二人で話してても埒いかんじゃろう!女のことは女に聞くんが一番じゃろうが。
カツや、ほんとに退部になってもいいんか?」
ぼくは黙ってたじろいでしまう。

ぼくとコッペ、三人の女子は一緒に給食を食べたり、宿題を写させてもらったりして、
普段から仲が良かった。

コッペが、
「それに、マナミとキョウコは、カツと恋人契約結んでも良かって!」
ぼくは、思わず、
「え!」
と声を出してしまう。

添田マナミは頭が良い。メガネを掛けているが、鹿児島の典型的なえら張り美人。
中薗キョウコは清楚でおとなしい性格、こちらも日本美人という感じなのだ。
ぼくはマジマジ二人を見てしまう。
ぼくの中に悪魔と天使が降りてくる。
でも二人の中の一人を選んだら、ぼくたち五人の関係は崩れてしまうと思う。
ぼくはため息をつく。

一番快活な宝田チナツが笑い出した。
「カツは、恋人契約が嫌なんやろ!」
コッペもマナミもキョウコも笑い出した。
ぼくもホッとしてしまう。

マナミがキリっとした顔でみんなを見る。
「みんな、この計画名は、カツに彼女を作る大作戦よ!」
ぼくの他の四人は、
「おう!」
と言って手を挙げた。
ぼくは俯いて、小さな声で、
「おう」
と言った。

※つづく


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