■Q3■
『カレシ募集、という言葉に抵抗があるのですが…』
[質問]
カレシがほしくてほしくてたまらないのでフォトメに投稿しようと思うのですが、でも、「カレシ募集」と書くことに抵抗があります。
募集してすぐ手に入っちゃう恋愛って、なんだか超お手軽っていうか、間に合わせの恋愛ゴッコみたいで…。
でも、「カレシ募集」と書くのがためらわれるからって、「友達募集」って書くと嘘になっちゃいますよね。欲しいのはやっぱりカレシだし…。第一、フォトメで友達を募集するっていうのも白々しい気がします。
いったいボクは、どう書いて投稿したらいいでしょうか。
[回答]
なるほど。気持ちはよく分かります。
あなたと同じように、
「フォトメで知り合って、いきなり恋人同士になるなんて嘘臭い」
と感じる人は多いと思いますよ。
そしてそういう人々はいろいろと投稿文を工夫しているのです。
…が、
しかし、「カレシ募集」に代えて考案されたそれらの文章(代替文)にも、どこかしら問題があるのが現状です。
今回は、そういったよくある代替文の例と、その問題点および改善案を紹介して回答に代えることにしましょう。
▼よくある代替文例(その1)
『まずは友達から始めて、恋愛関係に発展できるような人を募集します』
ネットで募集していきなり恋人同士になる…というウサンくささを解消することを主眼においた投稿文で、恋愛に対するマジメさを適度にアピールできることから、非常に広範に用いられています。
が、
恋愛に対するマジメさに気を遣うあまり、友情に対するマジメさが顧みられていないのが惜しまれるところです。
相談者の指摘にもあるように、そもそもフォトメで友人関係を築こうとする発想を受け入れ難く感じる人も多く、もしそういう人たちがこの代替文を目にすれば、
「友達から始めて…」
という部分に大いに違和感を覚えることでしょう。
しかし、それは言葉のアヤというもの。
ここでいう「友達」とは何も、厚い友情で結ばれた人間関係のことなどではなく、ただ単に、恋愛関係に至る以前にワンステップが欲しい、という心情を表現したものに過ぎないのです。そしてその「ワンステップ」は、人により様々な関係が想定されていることでしょう。
では、投稿者が考える「関係の発展の仕方」に則した投稿文にするため、次のような文章に変えてみてはどうでしょうか。
(1)『まずは顔見知りから始めて、恋愛関係に発展できるような人を募集します』
(2)『まずはセフレから始めて、恋愛関係に発展できるような人を募集します』
(3)『まずは援助から始めて、扶養関係に発展してくれるような人を募集します。住むところもなく困っています。なんでもするので助けてください! 家事は得意ではありませんが、フェ○はうまいとよく言われます!』
▼よくある代替文例(その2)
『カレシ候補を募集します!』
(カレシは募集して見つかるようなものじゃないと思うけど、でも、「友達募集」っていうのは本意じゃないし…)
という思考の末に生まれた迷文がこれです。気持ちは分かるのですが、しかし、かなりヘンテコな文だと言わざるをえません。
なぜ、奇妙に感じられるのでしょうか。
その原因はもちろん、「候補」という言葉にあります。
ちょっと考えてみましょう。相手が「候補」なら、投稿者(あなた)はなんなのでしょうか?
面接官?
審査員?
いずれにせよ、候補者の当落を決定する側の人間ということでしょう。
もちろん、相手をカレシにするもしないもあなたの心ひとつなわけですから、この例えは適切なものだと言えます。
しかし、もうちょっと考えてみてください。果たして審査しているのはあなただけでしょうか?
そう、
相手も同様に、あなたを審査しているのです。視点を変えれば候補者と審査官が入れ替わるわけで、つまるところ両者の立場は同じなのです。(もちろん、それぞれが相手をどう評価するかにより恋愛関係におけるパワーバランスは崩れますが、今はその前段の話です)
つまり投稿者には、本来「審査官」と「候補者」という二面性が備わっているわけですが…
ここで、
「カレシ候補を募集します!」
とフォトメに投稿するとどうなるでしょう。
これはすなわち、自分の立ち位置を「審査官」に特化しようとする行為です。と同時に、他の人間を否応なく「候補者」として自分の下に這いつくばらせようとする行為にほかなりません。
あくまで主権は自分にあるのだというその傲岸不遜極まりない宣言は、
「朕は国家なり」
といったルイ14世の言葉に通ずるものだといえるでしょう。民衆の心があなたから離れていくのも道理なのです。
では、どう書けばよいのでしょうか。
簡単です。
要は腰を低くすればよいのですから、次のように書いてみましょう。
『ボクをカレシ候補にしてください!』
ここまでへりくだれば、日本人が見失った謙虚さの美徳に、多くのゲイが胸をつかれること間違いなしです。
また、「安売り感」も十分ですから、いつもはお高い商品に手が出せず、フォトメをウインドウショッピングしているだけの庶民にも手をのばしやすく感じてもらえるかもしれません。
しかし、
「ボクをカレシ候補に!」
…と自ら立候補するなんてそんな大それたこと、とてもできないよ…と尻込みする人も多いことでしょう。奥ゆかしさは日本人の美徳ですから、その気持ちは大事にしていただきたいもの。
ではここはひとつ目先を変えて、
『○○くんをカレシ候補に推薦します!』
と書いてみてはどうでしょうか。
一刻も早くカレシを見つけてあんなことやこんなことをしたい…と妄想その他を膨らませているあなたが、他人の幸せのおせっかいをやいている場合でないことは分かります。
…が、
ここは「お返し」の美徳が根付く日本。遠回りなように思えても、いずれはあなたも同じように、誰かから推薦してもらえるはずです。
え?
もし誰もあなたを推薦してくれなかったら?
そのときは、こう投稿すればいいのです。
『誰かボクをカレシ候補に推薦してください!』
こうなってはもう、何がなんだかよく分かりません。
…が、少なくともあなたがカレシ募集中であることだけは、みんなに理解してもらえることでしょう。
(回答者:鷺ヶ蔵能勢雄)
(夏休み前フォトメ相談室・第3回 おわり)