HPに電話番号が載っているので、砒素に関して知りたいことがある、という電話をしばしば受けます。企業からの宣伝、日本の砒素公害の歴史、砒素中毒にかかっているかもという相談など。どれもあまりお役に立てなくて申し訳ないのですが。。。
10日ほど前にもバングラデシュ人と結婚されているという日本人の女性からお電話をいただきました。ご主人の実家であるバングラデシュでの飲料水の砒素汚染の問題を知り、心配になってお電話をかけてくださったそうです。「実家に滞在していたとき、家の前の井戸にも汚染を示す赤色が塗られていたが、それを塗った人たちは住民にきちんと説明をしているのでしょうか?」「どうすれば安全な水は得られるのでしょうか?」というご相談でした。
5年ほど前にバングラデシュ政府が割り当てを決めて、様々な団体が井戸検査をしたが、検査の精度や村人への説明を含めたフォローは請け負った団体によって差があること。
安全な水を得るためには、共同の設備を作るのは難しいと思うので、水質検査を自分たちですること。それから雨季の間だけでも雨の水を使い、砒素の摂取量を少なくすること。
を説明しました。
「それはホームページで読みましたが、もっと現実的な方法を知りたいのですけど」
と切羽詰った声が返ってきました。
現実的な方法。確かに、日本人からすれば雨の水を飲料や調理用に使うのは抵抗があります。それに自分たちで定期的に検査をする、というのも村人だけの力ではなかなか始められないでしょう。
私たちは普段、NGO関係者などいわばサービスを提供する体制を持っている人と話をしています。そして私が提案した方法は彼らにとっては有効な情報となりえます。でもバングラデシュの村人を家族に持つ彼女にとっては非現実的な方法に捕らえられても仕方なかったと思いました。
彼女とは、バングラデシュ政府も認定している家庭用の砒素除去フィルターがあり、それを利用する方法がいいかもしれない、ということで電話を切りました。ご実家がダッカから近ければフィルターを購入することも難しくないでしょう。
私たちが活動をしている国境沿いの村ではこの方法は難しいのですが。
その人にとってのもっとも現実可能な方法を考える。このことの大切さを一本の電話が教えてくれました。