カメレオンの独り言

当分は漫ろ言の漫ろ歩き、頭に浮かんだ事柄を挿絵と写真と下手な文で綴ります。色々と間違い多いですがご容赦を。

カメレオンの独り言-1728 『十年ひと昔、振り返れば、おさげのおまえが笑ってるよ』

2016年12月04日 | 日記






 2016年12月4日







好きで好きで堪らなかった釣りだったけど遠く彼方に消えてしまった。押入れから束になって釣り雑誌の特集版ばかりがどっさり出てきた。

よく読んだんだけど、みんな新品みたいに綺麗だよ。投げ釣り、釣り場ポイント集、仕掛け集とか夢中だったね。

もう、昔のようには、大層な釣りをすることがないだろうね。小物釣り程度ならとは思ってるけど、其れもどうだろうかねえ?





捨てよう、昔の夢の残骸、束ねて括って玄関口に山のように積み上げた。もう、何かを溜め置こうとは思わない。

鯉釣りののべ竿が2本出てきた、磯竿も2本出てきたよ。淀川の河口手前の河原でキチヌをよく釣った、ハネも釣ったね。

ガチャッて倒れた音で身体を折って押入れを覗くと、ほう~、まだ有ったのか、40年になるかなあ? モリゲンの竿受け三脚だよ。





当時、投げ釣りに持参していたお気に入りの三脚でしっかりした拵えでタフなんだね。手にして脚を伸ばして立ててみる。

どうにもなってないよ。三本脚の中心に丸い金具の飾りが取り付けてあってモリゲンってカタカナで銘打ってある。ちょっと凹んでるね。

野暮いんだけど頑丈で竿受けの役目をしっかりこなしていたよ。重たいグラファイト竿からカーボン竿に進化した頃だった。





オリムピックの投げ竿「世紀」カーボン製で軽くて堪らず小遣いはたいて2本買ったね。当時は、先端の高級投げ竿だった。

モリゲンの竿受け三脚に2本の「世紀」を並べ立てて、E93だったかな?リールを巻いて張った道糸が海面を貫くさまが好きだった。

遠い昔、商売盛況で丸一日働きまくってた頃、まだ、幸せの若者の喜びに酔っておれた頃だね。





釣りがあったら、オレは何も要らないって思ってた。ホンマに本気で思ってた。そのぐらい好きだったねえ。


















打ち寄せては砂を巻き上げ這い上がるようにして押し上げ泡を残して引き戻しては砂を引きずり降ろして次が打ち返す。

オレは、その単調な繰り返しを飽きずに見つめて時間を忘れるんだね。

モリゲンの投げ竿受けには、二本の道糸を海面に突き刺して押し来る波に打たれてゆらゆらと「世紀」の穂先がお辞儀を繰り返してる。





視点をどこに置いてるのか定かじゃないんだね? 何を見てんだろうかねえ? 

この贅沢な時間が堪らんねえ、永遠に続けてろって思うんだね。大海原を目の前にしてオレ独りがのんびりと生きているんだよ。

そんなのを思い浮かべてて、ふっと気づいたら周りはガラクタの山の中、これ、ホンマに引っ越しまでに片付くんかいなあ、と不安になるね。





生活の場を確保しつつ片付けて行かねばならんから選り分けて詰め替えて整理しているから片付けし終えて襖を閉めれば元のスタイルに戻る。

つまり、見た目は、なんにも片付いてるようには見えないんだね。こんな攻略法でええんかいね?

奥さんは、おこたの中に入ってパソコン睨んで動かない。おまえ、そんなの遣ってたら間に合わなくなるぞ? 「大丈夫や」





オレの頭の中では、作戦はかなり緻密に組み立てられてるけど勢いで押せ押せとこなしてた昔のオレではないから自信がない。


















一段落して時間がないけどパソコン起動して、いつものように駄文を書きだしてる。今日もゴミ箱漁りのような駄文しか思い当たらん。

机の周りが、少し、スカスカとしてきてはいるね。棚を取り払って分解してゴミにして書斎もどきのさまも元のリビングに戻るだろう。

足元のパソコン本体3台、モニター2台、ウーハー、DVDプレーヤーなどを業者さんに回収頼んでるから、その日に消える。





ここまでは、下段取りは順序良く進んではいるようだけど、実際、要らん物ばかりに空間埋もれさせて愚かなもんだね。

引き出しの中の真っ新なDVDをダンボールに詰め替えたけど凄い量だね。こんなの、もう一度観るんかね? 絶対に観ないだろうね?

「じゃあ、なんで持っていくねん?」 解らん、勿体ないって思うんだろうねえ? 「捨てっちまえ」 踏ん切りが悪いね。





次から次から新作が湧き出て来るのに、こんなの溜め置いても切りがないよ。真っ新なDVDだけど売っても二束三文だよ。

「頭に詰め込んどけ」 それはそうだけど、オレのドタマのハードディスク容量の事情もあることだし無理が利かんよ。

「ジョン・ウェインやリチャード・ウィンドマークやゲーリー・クーパーやらバート・ランカスターなんか覚えておろうが?」





観たままだよ、彼らの雄姿は、忘れようと、忘れ果てようとしても忘れるものではござりませぬ。「健在ではないか」 そうだね。


















続けねばならないって思いがキーを打たせるんだけど、此の切羽詰まった状況では、かなり無理が生じておるよ。

「なんで休まないのか?」  オレにも訳が解らんわ。今、駄文なんか書いてる時ではないと思うよ。

いや、駄文なればこそ書き易いんだろうかね? 「どうでもええんか?」 違うがな、肩凝らすほどのもんではないからではないか?





道でバッタリ、「よう」 「おう」 「なにかおもろいことないか?」 「せやねえ~、此の前、斯く斯く然々」 なんてね。

その程度のもんだよ。だから、此の状況下に於いては、オレらしく与太話(よたばなし)ですむんだよ。

「斯く斯く然々(かくかくしかじか)ってどういう意味や?」 つまり、こう云うことだよってこと。省いて通じる、オレの駄文と一緒だよ。





「与太話は?」 つまらなくてくだらないってこと。 此れもオレの駄文と変わりなしだよ。 今の人、こんな言葉使わないからね。


















彼女が来たよ、「なんぼ電話しても通じへん、無視してんか?」 ポケットで鳴ってたのかなあ? いよいよ、聴覚危なくなってきたね。

「退院して、その足で寄ってんで」 そうか、無事済んでなによりだよ。「全身麻酔やで」 

「此処、ちょっと切ってんで」 Gパン下してお腹出して、見せんなよ。臍んとこ、ちょっと絆創膏貼ってるだけだね。





「脚のほうも切ってんで」 怖いこと説明すんな。もう、完全に回復して元気に元通りだね。「痛いんやで」 ああ、そう。

傷跡は残せん、なんて云ってたから医者も気を使ったんだろうね。

そこまで送ってやる。 「咳なんかでけへん、痛むから」 そうか。「でも、もう、元気やねん」 よかったね。





ほんの僅かな時間なのに忘れずに顔を見せてくれるよ。オレも、いよいよ、此の半ばでおさらばだよ。「行ってしまうんかあ?」

何か困ったことがあればメールでもしておいで。 知らん顔してるよ。

おまえとオレとは、ほんとうに不思議な縁で繋がってたね。10年か、振り返れば昨日のようだよ。


































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