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普通ではない地震

2013年07月12日 | 気になるネタ

前回までは「普通ではない、のろまの地震」が巨大地震が繰り返す間にはさまっていて、巨大地震の繰り返しを左右しているのではないか、という話だった。

 世界の巨大地震地域にはこの種の不思議な地震が起きないところもある。だが日本ではプレートの動きから計算した巨大地震よりは、実際に起きてきた巨大地震のほうが少ない。日本人にとっては、もちろん幸いなことである。

 しかし現在の地震学では、どんなときに「普通ではない地震」が起きるのか、どういうときに巨大地震が起きるのかは、残念ながら分かっていない。

 ところで、この「普通ではない地震」が意外に多く起きていることも分かりかけている。

 たとえば、1997年には九州と四国の間にある豊後水道の地下で、その前年には宮崎県沖の日向灘の地下で起きていた。また2001年から04年にかけて、静岡県の浜名湖の地下でも起きた。身体にも、普通の地震計にも感じない「のろまの地震」だった。もちろん新聞にも出ない。地震の大きさは、今年1月からニュージーランドで半年以上かけて起きている「のろまの地震」のマグニチュード(M)7よりも小さい。

 これらの不思議な地震は、いずれも1944年に起きたM8クラスの東南海地震や、46年のやはりM8クラスの南海地震の震源断層の縁辺部で起きた。そしてこれらの場所は、将来起きることが恐れられている南海トラフ地震の震源域の中やその境界でもある。

 地震学者として、私はあまり気持ちがよくない。これらの地震は巨大地震のエネルギーを「散らして」くれるだけではなくて、その次に来るべき巨大地震の、何かの先駆けである可能性がないとはいえないからである。

 しかし日本でのこの種の地震の観測は、ニュージーランドに比べて不利なことがある。それは、ニュージーランドで使われた精度の高い地殻変動の観測は陸上でしか行えない制約があるからである。

 ニュージーランドでは、この不思議な地震は同国の陸地の地下で起きている。正確に言えば同国の北島と南島の間にある海峡下なのだが、北島にも南島にも展開している観測点が震源を取り囲んでいるのである。

 これに対して日本の場合は、海溝型地震のほとんどは海底下で起きるために、遠い海底下の現象を陸上から観測しなければならず、精度も感度も悪いという制約がある。

 実は海底で、精密な地殻変動観測を行おうという研究はいろいろ行われている。だが、どの研究もまだ、開発途上なのである。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。理学博士。東大理学部助手を経て、北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。『直下型地震 どう備えるか』(花伝社)など著書多数。



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