大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆試用期間の意義

2017年09月20日 09時58分37秒 | 労働契約
試用期間の意義を考えてみたことはあるだろうか。

①試用期間とは何か

試用期間とは、入社前の採用過程では判断できなかった能力や適格性を
実際に就労させながら判断する期間とされている。
実際に働かせてみたら、正直、能力にかけていた・・・ということはままあるだろう。
そのような場合に備えて、就業規則、労働契約書等に「試用期間」を定めている企業は多い。

試用期間については有名な最高裁判決がでており、
試用期間は「解雇権留保付き雇用契約である」(S48.12.12三菱樹脂事件)とされている。

「解雇権留保付雇用契約」とはどういう意味だろうか。

試用期間開始時点で労働契約は成立しているが、試用期間中は、使用者が労働者の適格性を判断する期間であり、
その期間は、労働者の不適格性を理由とする解雇権が留保されているという意味である。
もっとも、使用者の恣意的な解雇は当然に無効であり、解雇には社会通念上相当な理由が必要とされている。

②どういう場合に解雇できるか

それでは、どのような場合に解雇が相当と判断される可能性があるのか。
前述の最高裁の判断では、
「採用過程で使用者が知り得なかった、または知ることができなかった事実を知るに至った場合で、
その新たに判明した事実が、その者を引き続き当該企業に雇用しておくことが適当でないと判断でき、
それが客観的に相当であると認められる場合」とされている。
使用者の恣意的判断は排除されるが、本採用後の解雇相当性の判断より若干広い意味で判断される(だけである)。

③試用期間は必ず設けなければならないか

試用期間を設ける設けないは使用者の自由である。
そもそも法律で定められているものではなく、使用者が就業規則、労働契約書等で定めているものである。
逆の言い方をすれば、試用期間を定めていない労働契約には試用期間というものはない。
試用期間を定めたい場合は、就業規則に規定し、かつ、採用時の労働条件通知書に明記して、口頭でも説明しておくとベストだ。
試用期間中の解雇トラブルは後を絶たない。

④試用期間を定めていないとどうなるか

試用期間を定めていない場合は、解雇権留保付雇用契約は存在しない。
労働基準法の解雇予告手当の支払い義務が、雇用日初日から始まる。
労働基準法第21条第四号によれば、試用期間中の者を解雇した場合は、
採用日から14日以内であれば、使用者に解雇予告手当の支払い義務はないと規定する。

試用期間を定めていないアルバイトに採用日から3日で即日解雇したとする。解雇予告手当は30日分支払わなければならない。
試用期間を定めており、試用期間中、採用後14日以内に解雇したアルバイトには、解雇予告手当は支払わなくてもよい。

お金の問題ではないが、使用者にとって、この違いは大きいだろう。


★雇用問題でお悩みの使用者の方は、特定社会保険労務士大澤朝子へ

埼玉で派遣業許可申請なら社会保険労務士大澤事務所へ

★就業規則、労働者派遣業許可、労働・社会保険、助成金、給与計算
介護保険事業所知事指定、パート雇用、社会保険手続なら
こちら
“企業と人のベストパートナー”社会保険労務士大澤事務所

にほんブログ村 経営ブログ 中小企業社長へにほんブログ村