大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆家族手当を廃止したい……

2015年01月22日 10時25分46秒 | 給与・賞与
先日、NHKの「プロフェッショナル」で、凄腕の「かけはぎ職人」を観ました。
どんな「穴」や「切り裂き」などでも、まったく元通りにしてしまう、
その腕の凄さと朴訥な人柄に心を打たれました。

その中で、「難しい仕事は断らない。難しい仕事を引き受けないと腕が上がらない」
という主旨の言葉が心にずんと響きました。

●家族手当の弊害
さて、今日は、給与のことについて考えてみましょう。
給与のうち、「家族手当」についてスポットを当ててみたいと思います。

人事制度、特に「給与制度」の改革をお願いしたいという企業さん方にお邪魔すると、
少なからぬ企業さんで「家族手当」の支給がいまだに見られます。

私は、仕事上の能力や成果、会社貢献度等が「対価」を決めるべきと思っていますので、
いまだに戦後・産別時代の「家族手当」がある給与体系をみると、心の中で「廃止すべき」
と思ってしまいます――。

ただ、実際に家族を扶養している従業員さんに、これまで支給されていた家族手当を
廃止するとなると、これは大きな問題です。
不利益変更に合理的理由がなければなりませんし、
実際、廃止になったときの「心理的影響」の大きさが伺われます。
モラールの低下は避けられないでしょう。

一方、一生独身を通している男性・女性の場合、
同じ能力・同じ会社貢献度であっても、
家族手当の額が、例えば、配偶者1万、子供2人各5,000円)の場合、家族持ちは2万円多いことになり、
家族持ちでない人とは、年間年収で24万円、10年間で240万円の差が出ます。

家族持ちの従業員さんは、家族手当は安定した生活を支える大事な糧。廃止など論外と
思うでしょうし、家族なしの従業員さんにしてみれば、10年間で240万円の差は受け入れがたい
大きな数字、廃止すべきと思われるでしょう。

家族の種類や数に応じて支給される家族手当には、ひとつだけ小さなメリットがあります。
それは、割増賃金の計算単価に算入しなくてもよいことです。
ま、メリットはこれくらい……。

もし、そんな家族手当を本当に廃止し、能力や会社貢献度などのみを持って給与を決定する場合は、
家族手当廃止の不利益変更? の代替措置が必要です。
扶養家族があってもなくても、会社貢献度等の評価の底上げを図って、現行と遜色ない給与を
支給しなければなりません。
分かっているのですが、これは、なかなか難しい問題です。

家族手当の廃止には、家族持ちの男性の強力な反対が立ちはだかります。

そんな時、それには手を付けず、職能資格制度や成果給を採り入れるのみで
終わることになってしまいます……。

そんな時、扶養家族を持たない従業員さんの給与と持っている従業員さんの給与を
見比べて、「年間〇〇円も違うんだ……」とため息をついています。


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