大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆社会保険料の正しい控除の仕方

2015年01月13日 15時13分41秒 | 社会保険
一般企業さんの賃金台帳を見ていると、
社会保険料の控除の仕方がまるで間違っている場合があります。

どんな風に違っているかと言いますと、
月額給料が上がったり下がったりしている都度、その額に合わせて
その都度、社会保険料を上げたり下げたりしているのです。

雇用保険料は、給与総額に料率を乗じて計算しますので、毎月、給料の
額に応じて数字が違ってきますが、
健康保険・厚生年金などの社会保険料の場合は、
給与実額に料率を乗じる計算方法をとりませんので、毎月、変わるということは
ありません。

社会保険料が変更されるのは、毎年の「定時決定」で見直される場合と、
それ以外では、①給与体系の変更②昇給③降給など固定的賃金が変更になり、
変更後3か月間の給与額の平均が、従前の「標準報酬月額」より2等級以上
上がったり下がったりしたとき等となります。

ですから、昇給があっても等級が2等級以上上がらなかった場合は、保険料は
変更にはなりません。

月給30万円(標準報酬月額30万円)の人が昇給になり2万円上がったとします。
変更後3か月間の平均額が32万円だっと場合は、標準報酬月額の等級は1等級しか
上がりませんので、変更の対象とはなりません。据え置きです。

賞与の場合は、賞与額の1000円未満の端数を切り捨てた「標準賞与額」に料率を乗じますが、
これには上限があります。
①健康保険料:賞与額の上限は累計540万円(年度)
②厚生年金保険料:賞与額の1回の上限150万円

なお、賞与支給月に退職し資格を喪失した場合は、その月は被保険者期間では
ありませんので、賞与から社会保険料を控除しません。

その他、産前産後休業中や育児休業期間中などは、申請により、社会保険料が
労使共に免除となりますので、これらの届出も忘れないようにしたいものです。


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◆国土交通省の建設業の社会保険加入促進

2014年02月10日 14時13分40秒 | 社会保険
建設業に社会保険の未加入事業所が多いという事実は、
数年前から指摘されていたことですが、
平成24年度から平成29年度をめどに未加入率0%を目指す具体的な施策が
開始されています(国土交通省)。

健康保険、厚生年金、雇用保険の3保険への加入率(平成24年10月時点)は、

・企業単位では、87%
・労働者単位では、元請79%、1次下請55%、2次下請46%

だそうですので、今さらながら、加入率の低さに驚かされます。

国土交通省の建設業社会保険未加入対策では、
平成24年11月より、建設業の許可申請、経営事項審査の際に、加入状況を
確認・指導することとなっており、指導に従わない未加入企業は、
日本年金機構等へ通報するなどの施策も講じられています。

特に、下請け事業者の場合は請負金額に法定福利費を上乗せし難い側面もあり、
それを解消するため、

「法定福利費が明示された標準見積書(専門工事事業団体作成)を
活用するなどして元請企業に見積書を提出させるよう」指導もなされています。

いったい、これらの措置がどれほどの効果があるのでしょうか。
不確定ではありますが、とにかく、目標では平成28年度までに社会保険加入率100%を
達成し、平成29年度からは、

・建設業許可事業者の社会保険加入率100%
・未加入事業者の工事現場からの排除

と目標が定められています。

数年前、埼玉県の某年金事務所管轄で、一斉に会計検査院が建設業の厚生年金未加入事業所
を検査し、未加入事業所が30数件が、2年前まで遡って、強制加入の措置を受けました。
それまでも、県内の各建設業国民健康保険組合が、傘下企業を或いは説得し、或いは
訪ね歩き、厚生年金への加入を説いて回っていたにもかかわらず、最後まで加入を
渋っていた企業が、ついに最後は会計検査員の縄にかかってしまったのです。

今回の国土交通省の計画によれば、平成24年度から平成28年度までの5年間に
未加入事業所ゼロを目指すということですが、結果はいかに。

期待して待っていたいと思います。

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