テキスト主体

懐中電灯と双眼鏡と写真機を
テキスト主体で語ろうとする
(当然、その他についても、語ったりする)

視覚の冗長性

2012-08-07 14:47:44 | 双眼鏡 望遠鏡
大仰なタイトルで始まりましたが、たいしたことではありません。

以前に紹介したキヤノンの視線入力デバイスは、瞳の動きをセンサーで捉えて、四角いフレームがファインダー内を自由に動き回ります。よく観察すると一点を注視しているときでも、瞳の動きに追随するフレームは、細かく上下左右にランダムに振動しています。
同じように外部からの観察によっても、ヒトの視線は常に震え、引き攣り、瞬かれていて、同時に、身体の動きにとともに躍動していますが、視界の揺れが気になることはあまりありません。これはヒトの視覚には極めて優れた振動補正システムが組み込まれていることに依ります。網膜上の映像の揺れは極めて高精度に視覚システムのなかで補正されていることは、ジター錯視などから、どなたでもうかがい知ることが出来ます。
ただ、便利なことに、瞳の振動や、身体の動きに依らないブレ(レンズを通した視界の中のブレ)にはそのシステムは働きません。視覚はもともと、自分を食料とする外敵をよりはやく発見し、自分の獲物をより早く捕捉するために進化してきました。故に、自発的な振動にたいして外界を静止して見せ、その中で、僅かにでも動く対象を認識しやすいように発達してきました。明滅する光点が、眩く輝き続ける光点よりずっと遠くから認識されたり、素早く動くモノにはたとえ正体が単なる糸くずであっても一瞬身を引いてしまう反射行動と、根源は一緒です。
視覚全体がブレると、そういう認識を高める機構が誤動作します。視線でいくら追っても、認識できにくいのです。
動体視力が悪いとかいう問題とは原因が違い、ヒトの意識の問題であることは、運動誘発盲によく似ています。

双眼鏡でも、しっかり保持して、視界のブレない高倍率機では、より遠くの情報をうかがい知ることが出来ますが、たとえ低倍率機で、対象が小さくしか見えなくても、ブレのない視界の中では、視覚の誤動作もなく、特に対象が動くモノであった場合、よほど容易く意識し、発見できます。

霊長類は、ヒト含めて、視覚的動物です。猿に芸を教えるには、言葉より、動作や、文字や、色を使います。犬に芸を教えるときは、かけ声や、笛や、号令を用います。視覚はヒトの意識の根源を形作る外的刺激の一つであり、その根源部分を、気持ちよく、くすぐってくれるトコロに双眼鏡、望遠鏡など、いろんな光学機器の旨みがあるのだと思っています。

最後に、二つの錯視現象で紹介した元ページイリュージョンフォーラムは一見(といっても全部見るには時間がかかります)の価値があるウェブサイトなので、あらためて紹介しておきます




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