好曲好盤探訪

名曲か、名盤か、というより、個人的好みで好きな曲の好きな演奏との出会いを求めてボチボチと。同じような方の参考になれば

ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」 スクロヴァチェフスキ/ザールブリュッケン放送響

2015-07-31 21:32:57 | ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」
ベートーヴェン
交響曲第6番「田園」

指揮…スクロヴァチェフスキ
演奏…ザールブリュッケン放送響
好み度…5(5点満点)

洗練された美しい響きの田園である。
録音も大変よく、第1楽章から重なり合う明るく美しい弦の響きが印象的。
全編通して、高音も低音も弦の美しさは印象的。
第2楽章は 田園風景の小川のせせらぎというよりむしろ静かなしずくの光る山中の源流のような静けさの印象。
第3楽章は明るく美しく快活に踊りの風景が奏されている。
嵐は十分な響きの厚さと緊迫感を伴って美しくも激しい仕上がり。
続く終楽章は弦の調べにのるピチカートも美しく始まり、続くホルンも大変美しい。
その後も大げさに騒がず、清らかに自然への感謝がにじみでるような美しさで、
最後の高揚部はワルターほどではないが少し波のような処理をしつつも引ききらず高揚は持続させ、
終盤は厳かなほどに美しく、終始美しかったこの演奏にふさわしいフィナーレを形作っている。
終始丁寧な音作りはスクロヴァの長所が非常によく出ていて、アンサンブルの完成度も高く、何とも美しい田園であり、これは名盤といってよいと思う。

ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」 クレンペラー/フィルハーモニア管

2015-07-31 21:30:05 | ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
ベートーヴェン
交響曲第5番「運命」

指揮…クレンペラー
演奏…フィルハーモニア管
好み度…4.5(5点満点)

ゆったりと、慌てず騒がず、わがままなまでに独自の世界を作っているかのようでもあるが、
どこか巨匠でござい、といったようなところが感じられて(先入観ありすぎかな…)、あんまり好きにはなれない演奏でした。
遅いテンポで、ウラの音をしっかり聞かせつつ、ときに他にはない解釈を堂々とやっちゃいながら、
達者なオケが丁寧にしっかり音をつくり、芸達者なところは随所に感じられるけれど、
熱の通っていないというか、ダイナミックな流れが感じられないというか、
私の好みではありませんでした。

2018.2.2 追記====================
久しぶりに聴いてみて、確かに激しさや熱さはない。が、ゆったりしたテンポに漂う風格やスケール感はさすがになかなかのものと思う。
以前聴いたときは意表をついて音を絞ったりするところとかが耳についたりムキにならず一貫して泰然としたスタンスにちょっと抵抗を感じたりしたが、改めて聴くと上にも書いたように「ゆったりと、慌てず騒がず」「ウラの音をしっかり聞かせつつ」「達者なオケが丁寧にしっかり音をつくり」厚く奥行きのある響きは重厚感はあまり伴わないがスケール感のある響きを聴かせ、ゆったりしたテンポは、音の持って行き場や音を合わせることに困る様子もなく伸びやかに旋律を謳い、終楽章なんかも冒頭からゆったりと全開でおおらかで豊かなな力感を湛え、なかなか堂々気品ある風格を漂わせた、やっぱり名演なんだと思う。(好み度3.5から4.5に修正)

ドヴォルザーク 交響曲第8番 テンシュテット/フィラデルフィア管

2015-07-31 21:25:07 | ドヴォルザーク 交響曲第8番
ドヴォルザーク
交響曲第8番

指揮…テンシュテット
演奏…フィラデルフィア管
好み度…5(5点満点)

ベルリンフィルとの録音のの2年後のライブ録音。
オケの性質もあるかもしれないが、ベルリンと比べると、一変に近いくらい趣を異にし、
緊張感と燃焼度とが印象的なベルリン盤に対し、叙情性あるいは情感を強く感じる印象。
テンポも少しゆっくりとなっている。
この曲は、所謂ボヘミア色の濃い美しい旋律が、どちらかというと軽やかに流れていく曲という印象があったが、
第1楽章の重みの効いた力のこもったアンサンブルはそんなイメージの完全に外にあるし、
第2楽章がこんなに敬虔な深い美しさを湛えた楽章であったとはこの演奏を聴くまで気が付かなかったし、
第3楽章は哀愁を帯びてぐいと迫ってくる。
両端楽章の聴かせどころの迫力もしっかり出ているし、この曲のスケール感と叙情性に初めて気付かされ、この曲はこんなに深く、聴かせる曲であったかと気付かされた感がある。
録音は極上ではないにしても聴くに問題なく、
流暢なドヴォ8を聴き慣れた方にとってはこの曲のイメージが一変するくらいの情感と力のこもった聴き応えのある名演だと思う。

ブラームス 交響曲第2番 モントゥー/ウィーンフィル

2015-07-05 00:34:39 | ブラームス 交響曲第2番
ブラームス
交響曲第2番

指揮…モントゥー
演奏…ウィーンフィル
好み度…4(5点満点)

明るめの管弦の美しい音色と統制のとれたアンサンブル、オーソドックスなテンポ運びで洗練された美しい模範的良演と思う。
深みを感じさせたり情感が感じられるタイプではないような印象で、
大変よくできた演奏とは思うが個人的に特に推す盤という感じではないかな。
ただ、よくできた演奏だし、解き放たれたかのような終楽章の活力等聴いていると、名盤との評も頷ける。
同じウィーンフィルを鳴らした演奏という意味でベーム盤と比べるとベーム盤のほうが少し情感と、より風格を感じ、こちらのほうが少し機能的な雰囲気かな、
との印象ではある。

ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」 クリップス/ロンドン響

2015-07-05 00:25:45 | ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
ベートーヴェン
交響曲第5番「運命」

指揮…クリップス
演奏…ロンドン響
好み度…5(5点満点)

激しくはないけど、よい意味で古風な重厚な雰囲気を湛えた良盤。
重厚といっても重いというよりはおおらかで温もりを感じる響きである。
ネットなどでの評では「中庸」との評が多いようで、確かに中庸といえば中庸だし派手ではないが、
オーソドックスな展開の中で古風で厚い響きをしっかりつくりこれくらい雰囲気を湛えれば名盤の域と思う(いろんなところから同演異盤が出ているようで、盤によっては印象ちがうかも)。
多分録音のせいだと思うけど、出だしの1音が何となく途中から入っているような感じなのがちょっと残念ではあるけれど、
落ち着きながらもよく鳴っている弦の少し多めの残響も美しく、低音も心地よく効いている。
一音一音を短く切らずに少し長めに弾いているせいか、タイム以上に落ち着いたテンポと印象を与えるが、1楽章後半の盛り上がり等をとってもなかなか聴き応えがあるし、終楽章の厚さと活力も十分に標準以上だし、熱くないまでも、しっかりこの曲の雰囲気をつくり、落ち着いた美しさと重厚さを感じさせている。
決して慌てない、古風でおおらかで重厚な運命が展開されている。
録音は、他の盤の後で聴くとかなり古く聴こえるが単独で聴く分には聴いてるうちに気にならなくなる範囲の許容範囲かと。

(↓2018.4/22追記)
結局クリップスの運命はほんの少し聴いたものも含め3つの盤を聴いた。
1つは上のレビューを書いたときのもの、これは多分廉価盤(?)、次に缶に入った全集、次がSACDハイブリッドのもの。
廉価盤はいかにも昔風の録音といった音でいまどきの録音と比べると録音良好とはいい難いが古風な響きと力強さがかえって効を奏すようなところもあって上に書いたような印象、
缶入りは音質は改善され簿冒頭の一音もちゃんと入っていたが、ちょっとこもったような感もあってむしろ勢いが削がれておとなしくなったような感があり、
最後のハイブリッドはこれは音質は格段によくなり(缶入りと比べて微妙になのだがこの微妙が響きに艶と力と奥行きを与えて印象として格段の違い)、この演奏が温もりを感じる正統で豊かなベートーヴェンであることを頷かせる。
技術の世界はわからないが、マスタリングでこうも変わるのか、の感も感じる。新録音になって、激しさや新鮮味はないが、迷わず名盤と思う。
好み度4から5に変更。



チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 ポゴレリチ/アバド/ロンドン響

2015-07-05 00:20:35 | チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番
チャイコフスキー
ピアノ協奏曲第1番

ピアノ…ポゴレリチ
指揮…アバド
演奏…ロンドン響
好み度…4.5(5点満点)

何とも個性的な盤である。
ポゴレリチはチャイコフスキーピアノコンクールにおいてもその評価が真っ二つに分かれたという逸話があるそう(アルゲリッチが、このポゴレリチを選から落とすという決定に納得いかず、途中で選考委員を投げてしまったとか)だが、この演奏も好みは分かれるかもしれない。
これがはまった人には正に唯一無二の盤ということになろうかと思う。
特に第一楽章は大胆。
出だしはいたって力強く、途中テンポを落とすところは極端に落とし一音一音の美しさをいとおしむかのように、また、ときに他にはない斬新な解釈があったり、とにかく個性的である。
でも、強打でも音は濁らず、弱音部では、「一音の美しさ」に初めて気付かされる思いもあり、技術と表現力の高さは存分に感じられ、その個性は芸術性を感じさせ情感豊かであり、私は好きである。
第2楽章も美しい。
終楽章は平均的な演奏となり、
とにかく第一楽章の個性が印象的な盤である。
アバドとロンドン響のサポートは堂々と厚く、さすがと思わせる一級品である。
オケとピアノの馴染みもよく、好みは分かれるかもしれないが、ピアノもオケも演奏水準は高く、個性が目立つが芸術性豊かな名盤と思う。