福岡 秋月近くの川のこと。

チョッと前の話。

黄金川 佐田川。秋月小石原の南側を流れるこの川にはスイゼンジノリと言ういわゆる「川海苔」が生息している日本唯一(に近い)健康な川だ。

「健康」と言ってもそれを保つための市民の努力は並大抵 のものじゃない。
絶滅危惧種スイゼンジノリは江戸時代すでに絶滅したと思われていた。 熊本で見つかり、ここ福岡朝倉で養殖が試みられている。

「昔は日本中にあって、庶民の食卓に並んでたのか…」どうかはわからない。江戸時代幕府の献上品としてすでに幻の海苔だったという。

「じゃあその前は？」
「あったかもね」


僕はダムが嫌いだ。「エコロジー」とか「自然愛玩者」とかじゃない。バイクで野山を走る時「ここって良いよね」ってとこにボーンと無粋なダムが邪魔するのがイヤなんだ。
戦争がおわってもまだ電気も通らぬ町や村に、安心電力供給を果たしたのも「ダム」のお陰だったし、電気が通ることで田舎の乳児死亡率がグッと下がったのも確かなのだ。

「なるほど、そりゃわかる。で今、今現在 新規のダムをつくり電気供給する必要はあるのか」
「福岡市は一級河川が１つもないのに130万人も住んでいる。万年水不足だ。近年起こった２つの福岡大
渇水の時の苦労はおぼえてるだろう。飲料のための貯水ダムはいるに決まっている」

佐田川 黄金川の上流に今、小石原ダムが造られようとしている。朝倉の人たちが何年もかけ、育てはぐくんだスイゼンジノリが消滅するかもしれない。

「こんなステキな田舎町清流で？そんなダムありきのダムなんて要らない。利権にまみれた公共事業をまだやってるのか。時代遅れもはなはだしい」

鼻息も荒くそう叫んでも

「このダムの活用のほどんどは福岡市への飲料水供給です」と言われる

何かを得るためには、何かを失わなきゃいけない。


そう割り切って良いのか。
中世以前のこの国で、庶民が当たり前に食べていた食文化がまた１つなくなろうとしている。
そして僕は福岡市に、住んでも、いる。