凍て蝶の翔ぶがごとくに春さらば吾も目覚めて飛ぶ日のあるや
(髭彦) (雪の朝ぼくは突然歌いたくなった)
「凍て蝶」は寒さによって死んだ、あるいは死んだように動かない蝶のこと。
凍えた蝶が飛ぶのは春を連想しますが、この歌ではその「春」が「さらば」と言われている。
目覚めの季節と言われ、+のイメージがある「春」も、なぜかとても頼りなく、朧に見えます。
下二句では、そんな「蝶」と「春」に、二重に自分を重ね合わせ、「目覚める時はあるだろうか」と考えている。いえ、想いを巡らすのではなく、(たぶん)来るべき事実を事実として認識しているのかも。
詠み人には失礼かもしれませんが、僕にはなぜか、「目覚め」=「死」という風に思えてしまいました。
間違っていたら、申し訳ありません。
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凍えてるせかいを肺につめこんでつめたいひとに(きれい)なりたい
(なかた有希) (* にじのかかるばしょ *)
歌意としては、そんなに難しくありません。
凍てついた冬の空気を胸一杯に吸い込んで、私もこの空気のように冷たくなってしまいたい。
しかし、(きれい)が間に入るだけで、読みがぐっと難しくなります。
( )でくくってあるということは、この(きれい)は主体以外の誰かが声に出したのだろうか。
それとも、主体の心の別の場所でわき上がったつぶやきだろうか。
前者だと、「つめたいひと」になった主体に対する褒め言葉か、あるいは「せかい」への感嘆。
後者では、「つめたいひと」は「きれい」だという主体の認識が表に現れた、と読むべきでしょうか。
声に出して読むと、「い」段の連続がやさしい流れを作り出しています。
また、文字を目で追うと、ひらがな、特に「い」「つめ」などの字面が、やわらかく感じられます。
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腐るのに ほんとはすぐに 腐るのに 冷凍サンマはうつくしいまま
(みち。) (虹色アドレナリン。)
3つの文字空けが、どこか自信なさげな呟きを表しています。
「サンマ」、しかも「冷凍」を美しいと鑑賞することは、普段めったにありませんが、言われてみれば、ぴんとしたサンマは一種日本刀にも似た美しさがあります。
「すぐに」「腐る」のに、「うつくしいまま」というと矛盾しているように聞こえますが、結句の後に
「(うつくしいまま)でいるんじゃないだろうかと思えるくらい美しい」
という言葉が省略されているのでしょうか。
「ほんと」「サンマ」「まま」もそれぞれ呼応し合って、歌をひとつにまとめ上げています。
(髭彦) (雪の朝ぼくは突然歌いたくなった)
「凍て蝶」は寒さによって死んだ、あるいは死んだように動かない蝶のこと。
凍えた蝶が飛ぶのは春を連想しますが、この歌ではその「春」が「さらば」と言われている。
目覚めの季節と言われ、+のイメージがある「春」も、なぜかとても頼りなく、朧に見えます。
下二句では、そんな「蝶」と「春」に、二重に自分を重ね合わせ、「目覚める時はあるだろうか」と考えている。いえ、想いを巡らすのではなく、(たぶん)来るべき事実を事実として認識しているのかも。
詠み人には失礼かもしれませんが、僕にはなぜか、「目覚め」=「死」という風に思えてしまいました。
間違っていたら、申し訳ありません。
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凍えてるせかいを肺につめこんでつめたいひとに(きれい)なりたい
(なかた有希) (* にじのかかるばしょ *)
歌意としては、そんなに難しくありません。
凍てついた冬の空気を胸一杯に吸い込んで、私もこの空気のように冷たくなってしまいたい。
しかし、(きれい)が間に入るだけで、読みがぐっと難しくなります。
( )でくくってあるということは、この(きれい)は主体以外の誰かが声に出したのだろうか。
それとも、主体の心の別の場所でわき上がったつぶやきだろうか。
前者だと、「つめたいひと」になった主体に対する褒め言葉か、あるいは「せかい」への感嘆。
後者では、「つめたいひと」は「きれい」だという主体の認識が表に現れた、と読むべきでしょうか。
声に出して読むと、「い」段の連続がやさしい流れを作り出しています。
また、文字を目で追うと、ひらがな、特に「い」「つめ」などの字面が、やわらかく感じられます。
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腐るのに ほんとはすぐに 腐るのに 冷凍サンマはうつくしいまま
(みち。) (虹色アドレナリン。)
3つの文字空けが、どこか自信なさげな呟きを表しています。
「サンマ」、しかも「冷凍」を美しいと鑑賞することは、普段めったにありませんが、言われてみれば、ぴんとしたサンマは一種日本刀にも似た美しさがあります。
「すぐに」「腐る」のに、「うつくしいまま」というと矛盾しているように聞こえますが、結句の後に
「(うつくしいまま)でいるんじゃないだろうかと思えるくらい美しい」
という言葉が省略されているのでしょうか。
「ほんと」「サンマ」「まま」もそれぞれ呼応し合って、歌をひとつにまとめ上げています。