中国株が暴落している。上海の平均株価は、6月中旬に高値の5千ポイント強をつけた後、6月末から急落し続け、現在3400ポイント前後まで、32%も下がった。中小企業の株が多い深センでは、高値から40%も下落した。中国政府が下落防止の対策を打っても効かず、急落が続いている。上海では急落の結果、上場株式の7割が取引停止になった。中国政府は、マスコミに対して株の売りを推奨する記事を書くなと命じ、年金基金や国有企業、党幹部に対して上場企業の株を売ることを制限するなど、強硬策を始めている。(China Stock Sellers Frozen Out of 71% of Market)(China Makes Selling For Big Investors Illegal)(China's State-Owned Firms Ordered Not to Cut Share Holdings)
中国上海の平均株価は、2005年末の1千ポイント前後から07年10月の6千ポイントへと6倍に膨れ上がった後、バブルが崩壊し、1年間の急落によって株価が3分の1になり、08年末に2千ポイント前後まで下がった。今回のバブルは、昨夏の2千ポイント台から、今年6月の5千ポイント台へと株価が2・5倍にふくらんだ後、2週間で3分の2になっている。今回のバブルは、膨張の倍率が前回のバブルより小さい。(China Rolls Out Emergency Measures To Prevent Stock Market Crash)(上海平均株価の推移)
感染下落を防ぐためなのか、中国株の暴落が続いた7月8日、ニューヨーク株式市場がシステムの不調を理由に4時間取引が停止した。不調の原因の詳細は発表されていないが、同時期にウォールストリート・ジャーナルのウェブサイトもダウンしており、ハッカーの仕業の可能性もある。ハッカーは当局の敵ばかりと限らない(米国最強のハッカーは国防総省の要員だ)。この日、NYのダウ平均株価は1・5%下落したが、システムが正常に稼働していたらもっと下落していたかもしれない。NY証券取引所は、システムを復旧する早道(バックアップを使ったリカバリ)をとらず、システムダウンを長引かせた。バブル崩壊の感染を防ぐための意図的なシステムダウンだったなら、中国当局が国有企業に株の売却を禁止した方策に劣らない「株価の不正操作」ということになる。(The Historic NYSE Halt Post-Mortem: The Shock And Awe When It All Went Down)
米日は、バブル崩壊の回避(延命)が最重要の戦略だ。米国勢が中国の金融界などの内部に構築したエージェントが、今回の株バブル崩壊を誘発している可能性はある。とはいえ、そもそもマスコミや国内金融界などを通じて昨年からの株バブル膨張を煽ったのは中国政府だ。今年5月以来のバブルの最後の2カ月、小口の個人投資家つまり一般市民が、マスコミや証券会社の口車に乗って株式投資に参入し、今回の暴落で最も大損した。中国政府が、米国にバブル崩壊を誘発されかねないと懸念するなら、国内マスコミや金融界によるバブル扇動を制止するのが筋だったが、そのような動きはなかった。(Angry Chinese premier takes charge of market fightback)(中国のバブルが崩壊する?)
今回のバブル崩壊が、前回のように1年続く場合、中国株は来年にかけてもっと下がることになるが、今年のAIIBやBRICS開発銀行などの設立を皮切りに、BRICSの経済面の主導役である中国は、来年にかけて国際影響力をさらに拡大することが確実だ。前回のバブル崩壊と同様、今回も、中国のバブル崩壊と国際台頭が同時並行で進むことになる。今後数年かけてBRICSが経済規模でG7を追い抜いていく流れは変わらない。(日本から中国に交代するアジアの盟主)(日本をだしに中国の台頭を誘発する)(GDP of BRICS could surpass G7 in 2-3 years)
中国勢の参加はガセネタだったか、と懸念される事態になったが、6月中旬、LBMAが、中国の4大銀行の一つである中国銀行が6月22日から値決めに参加すると発表した。その後、4大銀行の中の中国商工銀行も、値決め会員になることを検討していると発表し、中国勢が国際金相場の決定権の一部を握ることが確定的になった。(LBMA Gold Price Bank of China to join as new participant)(Bank of China Joins Auction Setting Gold Prices in London)
金相場と同時に、原油相場も下落を再開した。一方、原油安の再加速は、前回の記事に書いたように、米国のシェール石油業界を潰したいサウジアラビアが、ロシアに接近したことと、たぶん関係している。サウジは、ロシアに農業部門などで100億ドル規模の新規投資を行う計画だ。ロシアは、経済制裁で欧米からの投資が入ってこなくなった分を、中国だけでなく、サウジにも補ってもらえるようになった。サウジは、米国の石油産業を潰そうとしているだけでなく、米国のロシア敵視策を妨害するようになった。もはやサウジは米国の同盟国でなく、中露イランと並ぶ米国の敵だ。(Saudi Arabia to Invest up to $10 Billion in Russia)(◆多極側に寝返るサウジやインド)