一昨日のクイズは「上の写真は何と言うテストでしょう?」というものでした。正解はD-testです。阻止円がDの形をしているのでD testとよばれています。D-zone testと呼ばれる事もあるようです。
これは耐性のエリスロマイシンが存在する事でクリンダマイシンが耐性化するという事を示しています。こういう現象を耐性誘導といいます。あらかじめエリスロマイシンに暴露されてからクリンダマイシンにさらされるのではなくて、同時に暴露しているのに耐性が誘導されているのが面白いですね。この耐性機構はマクロライド(エリスロマイシン)、リンコマイシン(クリンダマイシン)に加えて、グループBストレプトグラミン(キヌプリスチン)にも共通しているので、MLSB耐性と呼ばれています。
この耐性機構はerm遺伝子のリボゾームの薬剤結合部位がメチル化されて、薬剤がくっつけなくなることで起こります。常に耐性遺伝子が発現していれば、感受性検査でも耐性になるのですぐ分かるんですが、誘導されていない場合は感受性と報告されるので、遺伝子を持っているかどうかは感受性試験からはわかりません。
「でも、エリスロマイシンとクリンダマイシンを一緒に使う事なんてめったに無いので、心配いらないんじゃない?」と思われるかもしれませんが、実はエリスロマイシンを一緒に使わなくても、治療中に耐性化が起こることが報告されています。クリンダマイシンが全く効かなかったり、効いていったん治ったように見えたのに、すぐに再発して再検査をしてみるとクリンダマイシンが耐性になっているというようなことが起こりうるのです。
最近市中型のMRSAの登場に伴って、クリンダマイシンの治療が注目されています。蜂窩織炎くらいであれば、MLSB耐性があってもが、治療の失敗や再発を注意深く観察しながら使う事が出来るかもしれませんが、心内膜炎や膿瘍や骨髄炎などの重症の感染症の場合は避けた方がいいですね。もしエリスロマイシンが耐性であれば、使用前に必ずD testでMLSB耐性が隠れていないかチェックする必要があります。
ちなみにキヌプリスチンはダルフォプリスチンという薬とセットになっているおかげで、耐性になることはありませんが、黄色ブドウ球菌に対する効果が殺菌性から静菌性になってしまいます。やはり注意が必要ですね。
参考文献
Inducible clindamycin resistance in Staphylococci: should clinicians and microbiologists be concerned?
Lewis JS 2nd, Jorgensen JH. Clin Infect Dis. 2005 Jan 15;40(2):280-5.
PMID: 15655748
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って誰が読んでるかは分からないんですが。
「erm遺伝子」とか出てくるだけでもう嫌でしょう?僕もそうです
。文献にそう書いてあったので、そのまま書いてみただけですので、気にしないでください。つまりまんまとはったりにやられたわけですよ(笑)
MRSAの話は長くなるので、またいつか書こうと思いますが、ともかく「一生」って言うのは凄いですよね。日本と同じように培養3回連続陰性で解除とやっているところもあるそうです。
D-testですか。さっぱりわからなくて、nipple test?Mickey test?とかばかな事を考えていました。
そしてなんで、集合で言うところの必要十分条件のとこが抑制されてないのか不思議でしたが、さくっと耐性化しちゃうからなんですね。勉強になりました。
正直「erm遺伝子・・・」の下りはさっぱりですが、またぼちぼち教えて下さい。
先日のMRSA保菌の患者の接触感染対策が基本的にずっとというのには驚きました。アメリカとかその辺の経費を切り詰めている印象だったのですが。結局感染対策にかかる対費用効果のほうが優位と言う事なんでしょうかね。