源氏物語に付き纏う違和感は、源氏と藤壺が不倫関係にある事だ。
帝には全くの瑕疵はない。ただの藤壺と源氏の我儘の犠牲者だ。
その為、藤壺と源氏の恋愛が薄っぺらいものになっている。
瓊瓊杵尊は木花之佐久夜毘売と結婚したが、姉の石長姫も舅から案内されている。
山幸彦は豊玉姫と結婚しウガヤフキアエズを生んだが、育てたのは妹の玉依姫。
ウガヤフキアエズは叔母の玉依姫と結婚し、神武が誕生した。
垂仁天皇は丹波の日葉酢姫と結婚したが、同時に他の姉妹達も連れてきて結婚している。
女性は子を産むと、若い妹に子を託し、妹は無事育て上げたら甥と結婚する。
8世紀の古事記の時代まで、この倫理観・習慣が古代から存続していたか、8世紀の倫理観・習慣そのものであった可能性が高い。
紫式部の時代までは、この慣習が貴族社会の常識であったと思われる。
桐壺と藤壺が同母姉妹だとすると、設定の違和感が消える。
源氏は桐壺の妹・藤壺に育てられた。成人したら帝は藤壺を源氏に与えなければならない。
しかし源氏に藤壺は与えられず、帝の姪で従妹の葵の上と結婚することになる。
葵上も源氏も、この結婚が藤壺との結婚の代替である事に、気まずい思いを持つ。
源氏と藤壺は源氏が生まれたときから、結婚は宿命であり、その日を心待ちにしていた。
それを慣習を破り、引き裂いたのが悪玉である帝。
源氏は全く曇りのない、悲劇の主人公であった・・・と思う
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