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【対岸の彼女】女同士の友情

2007-02-13 22:19:39 | Weblog
対岸の彼女
角田 光代
文藝春秋

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女同士の友情
「対岸の彼女」
角田光代・著

女同士の友情は、共感で成り立っていると思う。

仕事での人間関係や、恋人のことで女友達に愚痴をこぼす。話すことでストレスが解消される。相手から「そういうの分かる」と共感があると「話してよかった」と思い、安心感が得られる。

そういうことは、女性ばかりでなく、男性にもあることかもしれない。
しかし、おしゃべりと買い物にかける時間が長いのは、やはり女性のほうだろう。

「共感してもらえる」という安心感が持てないと、会って話しをしていても、どことなく落ち着かない。なんとなくスッキリしない気分を抱えてしまう。

共感は、同じような立場や経験をしている人同士のほうが生じやすいし、強くなる。
同じような職種、専業主婦なら主婦同士のほうが、話に出てくる状況を分かち合いやすいから、そういう共感を得るために成り立つ友人関係がある。

一方で、自分と違う立場の人との友人関係は、相手の話を聞くことによって、自分自身の視野が広げられ、発見がある。異なる環境にいる人のほうが、状況を冷静に分析して、的を得た指摘をすることもあるだろう。

「対岸の彼女」は、女性同士の人間関係の機微を描いている。
幼い子を抱える専業主婦と独身の女性起業家の出会い。
生活や仕事に対する価値観の違い、生き方の違いが、人間関係の決別につながる寸前にまで発展する。しかし、どこかで互いに認め合い、友情の絆はしだいに強くなっていく。

生活の中で起きる些細な出来事について互いに共感できる部分は少ない。
しかし、環境の異なる者同士の友情関係は、互いに「自分が持っていないものを相手は持っている」という共感がある。

「この人と知り合いになれて、よかったな」と思える出会いは、明日を生きる力をくれる。
「対岸の彼女」は、それを思い出させてくれた。



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