約120年ふりに民法の債権にかかる部分が大きく改正されます、それによって一般のアパートやマンションなどの賃貸借契約の内容も大きく変更となります。
借りる方、貸す方ともに興味のある方は目を通して頂いて情報と知識を吸収して頂ければと思います。
●賃貸住宅の修繕について
賃貸物件の修繕に関し賃借人に帰責事由がある場合には、賃貸人は修繕義務を負わないことを明文化した。現行民法では解釈が分かれていたが当事者公平の観点から明確化された。
また改正民法では賃貸人が相当の期間内に修繕をしないときや、修繕の急迫性があるときに例外的に賃借人が修繕することができるようになった。この場合、賃借人は賃貸人に対して費用の請求をできるようになる。
<横山専務のコメント>
今後の対応として修繕内容については、契約書の条文や特約を設けて個別の対応をする必要がある。
●賃貸住宅の一部滅失等による賃料の減額について
大震災などの災害で賃貸住宅が使えない状態になったことを想定して設けられたルールである。
要は被災した賃貸住宅が住宅として機能していないのに、賃料を払わなければならない事態を回避する趣旨である。
現行民法では一部が滅失した場合には、賃借人は賃料の「減額を請求できる」とされていたが、賃借人に帰責事由がないときは、使用収益できなくなった部分の割合に応じて「当然に減額される」というルールに改正される。
<横山専務のコメント>
改正民法に減額割合や減額手段など具体的な規定があるわけではないため実務レベルで考えると取り扱いが非常に難しい・・・紛争に発展するケースが多くなると予想される。
判例が蓄積された段階で契約書類の作成の手順など改めてルールが出来上がるのではないだろうか。
●連帯保証人に関する保証契約について
これまでは保証人の責任について上限額は定めずに賃貸借契約に基づいて発生する一切の債務を保証するとしていたのが一般的でした。
改正民法では、極度額の設定する必要があるとされ、極度額が設定されていない場合には、保証契約自体が無効となってしまいます。
改正民法では、賃借人が死亡した場合、連帯保証人の元本が確定することとなり、連帯保証人は賃借人死亡時点の債務(滞納賃料債務)のみを保証し、それ以降に賃貸借契約から発生する債務は保証の範囲外となってしまいます。
契約書については保証人が亡くなった時点で作り直しが必要となる。
また賃貸人が保証人から賃借人の賃料滞納状況について問い合わせを受けた場合には、賃貸人は遅滞なく賃料の滞納額、遅延損害金などの情報を提供しなければならないと規定されました。
これを怠って保証人が損害を受けた場合には保証人は賃貸人に対して損害賠償請求を行うことが認められています。
賃借人が法人の場合、または事業を行うために個人が借りる場合に、個人が保証となる場合には、賃借人から「財務状況の情報提供」が必要になる。財務状況の情報とは、「主たる債務以外の債務の有無や内容」「主たる債務への担保提供」「財産や収支状況」である。保証人は保証契約を取り消すことができるとされている。
契約の際に必要情報書類を添付させる必要が出てくる。
<横山専務のコメント>
保証に関しての改正点を鑑みると、賃借人の契約形態を問わず、個人を連帯保証人とする契約は後々発生する問題の対処が煩雑となるため、保証会社と保証契約結ぶ(機関保証)の契約形態が一般的となることが予想される、また個人保証を望むお客様との契約を拒む貸主、不動産会社も増えそうだ。
●原状回復義務に「自然損耗」「経年劣化」を含まれないことを明記
賃借人の原状回復義務の範囲には、「自然損耗」「経年劣化」は含まれないことが明文化される。
すでにほとんどの不動産会社は国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に準拠した賃貸住宅標準契約書を使っているため、問題としては大きくない。
<横山専務のコメント>
問題としては大きくない・・・としたものの、原状回復義務について詳細に設定した上で、賃借人へ説明する必要がある。また不動産業者は賃貸人に対しても十分な説明と理解を求める必要があると考える。
特約の標記が不十分な契約に関しては、賃借人、賃貸人双方で話合いを行い取り決めをしっかりと決め直して契約書類に記載しておく必要がある。
≪横山専務のコメント・総括≫
改正民法の適用時期については、2020年4月1日に一斉に適用となるわけではなく、現在の契約が終了し新たな契約を更新または再契約した時点からとなる。
契約書の再作成の手間を省くために自動更新の契約としている場合であっても当初の期間終了時をもって改正民法が適用となるため自動更新を採用している場合は書類の再作成が必須となる点に注意が必要である。
今回の改正は借主に重きを置いた内容が多いため、今後益々借主優位の状況になることが想像できる。
貸主、管理会社は、契約条文にどういった内容を盛り込んでおくのかを入念に考えてトラブル防止に努めていかなければならない。