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Carpe Diem

Seize The Day.それが私の生き方。

シェイクスピア・グローブ座「お気に召すまま」観劇

2009-06-23 06:40:41 | Weblog
この一言に尽きる。

「「 面 白 か っ た ! ! 」」

シェイクスピアは戯曲集からして大好きだったけど、

やっぱ戯曲は読むもんじゃねえ、観るもんだ!!

戯曲読んでた時から「牧歌的で長閑だな~」「登場人物がみんな可愛らしいな~」とは思ってたが、こんなに和めて笑える喜劇だったのか、「お気に召すまま」!!

読んだ時は何も思わなかった兄弟の喧嘩、レスリング、そしてまさかの拷問ですら、もう笑わざるを得ない(公爵に拷問され、弟のオーランドーを殺すように脅されるオリヴァー、「オレ、どうせ弟のこと好きだったこと一回も無いのに、何で弟のせいでこんな目に合わなきゃなんねーんだよチクショー!」と泣く。苦笑)

そして何より、森での場面。幾つもの茶色い柱を森の木々に見立てた舞台上で、逃亡中の身とはいえ、宮廷の陰謀や緊張から解放された人々が、のんびりゆったり、思い思いに自然に囲まれた生活を満喫している。本で読んだ時には不自然に感じた、初め悪役に近かった人たちの、森に入ってからの唐突な改心も、この緩い心地よい空間を体感した後は、それも有り得るかもしれないと納得できてしまう。(劇中の歌やマンドリンの効果も凄い。和むわー、しかも上手いわー!)

戯曲の台詞って、実際に口に出されたら、ビックリするぐらい印象変わるのね!紙上では普通にスルーしてた台詞が、ふとした場面に与えるインパクトの大きいこと大きいこと!逆に、紙上では印象に残ってた台詞が、サラッとあっさり言われていたりする(「この世は全て舞台だ」とか「時が糸を解きほぐしてくれるのを待つしかない」とか)。読んでる時は「わざとらしいなー」と思った言い回しも、冗長に思えた台詞も、舞台上では本当にナチュラルで、何の違和感も無い。

あと、英語で戯曲を読んだ時に、古語に馴染まない私が時として「読みにくい」「難しい」と思ったものも、舞台だと、役者がうまく強調したりニュアンスを醸しながら話すこともあって、本当に分かりやすかった。

衣装の再現度、半端ないね!演出も古典的で、めっちゃ好き!!そして役者が皆はまりすぎ!!やっぱ上手いよーイギリスの役者!!こんなに安心して、どっしり腰を据えた上で、のめり込んで観られることないもん!!

グローブ座で舞台を観たのは今回が初めてだったわけだけど、ほんっとーに役者と観客が近い!!実質的な距離だけでなく、精神的な距離で!!舞台が、舞台として独立して存在しているだけでなく、役者は観客の存在を明確に意識していて、私たちに向かって「演じてみせる」。漠然と捉えるのではなく、ちゃんと観客一人ひとりを見ていて、時には、舞台のニュアンスと絡めて私たち、もしくは私たちの誰かを示唆し、また私たちを喜ばせる。例えば、子どもと教育の話が出る時は、団体で来てた学生たちの座っているところに寄っていって、彼らを指しながら話したり。

同じく、観客を意識しているのだが、役者が、というより、既にシェイクスピアの脚本自体が、グローブ座での観客を意識している事が感じられる部分に、実際その場で舞台を観て初めて気づいた。たとえば、ジェイクイーズが歌で"Ducdame"と言い、説明を求められて"Greek invocation, to call fools into a circle(ギリシャの呪文で、阿呆どもを円形に呼び集めるものだ)"と答えるんだが、これ、グローブ座が舞台を中心に円形に造られていて、つまりは観客の事を指してる台詞。舞台で役者が余裕の笑みを浮かべて両の手を広げ、私たちを見据えながらこの台詞を言った時、観客は、舞台と自分たちとの確かな一体感に満足して、大きな拍手を送り、歓声を上げる。ただ戯曲を読んでるだけじゃ、この意図も、そこから得られる興奮も分からない。

舞台で観て初めて気づいたといえば、男装したロザリンドとオーランドーの「恋愛の稽古」シーン、なんというか、あんなに同性愛に近い、一種危うい雰囲気が出ているとは思わなくて、ちょっとビックリした。あれ思い出した。日本古典の「とりかえばや物語」。帝は吉野で会った少女に惚れるんだが、彼女そっくりの「兄(本当は本人)」が宮仕えに入ると、初めは彼女の面影を重ねて「兄」がお気に入りだった帝だが、徐々に「兄」自身に入れ込んでいく…という。ロザリンドとオーランドーが真似事の結婚式して接吻するシーンなんか、舞台上の従姉妹のシーリアすら苦笑。観客も、「まあ微笑ましい」という意味の「オーゥ」って声上げてる人もいたけど、殆どはみんな忍び笑い。キスした後に我に返ったオーランドーも、自分で愕然としてたし。笑 ジェイクイーズのロザリンドに対する態度も、そう。他の場面での台詞から(女性たちはイイものだ、みたいな)、あんまりジェイクイーズが男色家ってイメージ無かっただけに、男装したロザリンドの手を撫でる彼に、ロザリンド本人のみならず私もビビッた。

「お気に召すまま」は、シェイクスピア作品の中で「十二夜」に次いで、道化の台詞が多い作品なんだけど、ヤツが面白すぎる!!道化のタッチストーン本人も言ってたけど、やっぱ道化になれる人は、頭が良くて賢いがゆえに道化を演じられるんだね。そして、だからこそ道化は哲学者にもなれる。タッチストーン役、まさかのコリン・ファース激似のイケメン。笑 それが無表情で面白い行動・言動取りまくるから、もう可笑しいのなんのって!

今回の後悔:なんでカメラ持ってかなかったんだ私ーっ!!劇が始まる前のグローブ座内部の写真も、終わった後の様子も、劇中で本当に結婚式の演奏をその場でやる楽団の幕間の演奏も、全然写真撮れなかったあああっ!!無念!!

グローブ座の舞台って、天井が天空をあしらっていて、太陽に当たる部分の板が抜かれ、その周囲を星座の生き物が取り囲み、それを更に雲が囲むように描かれていて、縁取るようにポツポツと星の煌きが金色の飾りで表されている。そのすぐ下にある舞台奥の壁には、太陽系の星が名前と共に描かれている。私はスタンドにしたが、見渡してみると、座席のある三階立ての部分、舞台に一・二番目に近い両側のボックス席全てには、ギリシャ神話をモチーフにした絵が描かれていた(アンドロメダとペルセウスの物語とか)。

グローブ座って、照明がまったく無いのね!中心舞台と桟敷以外は天井がないので、すべて太陽の明かりの中で演じられる。この開放的な感じも、舞台の自然さも、その事実が大きく一役買ってるといえるかもしれない。私が観た夜講演は19:30から22時くらいまでだったんだけど、この時間でもかなり明るい、夏のロンドンだからこそできることだろうな。「雨降ったらどうするんだろう」と思ってたんだけど、隣にいた人たちが同じことを話してた時、そのうちの一人が「雨が降った時に居合わせたが、筒抜けの上の部分に、ビニールを張っていた」と言ってたのを小耳に挟んだ(盗み聞きしてたわけでは…)んで、雨降っても問題ないみたい。天井がないことの唯一の難点は、時折通る飛行機の音が役者の台詞を聞き取りにくくすること。飛行機をこんなに恨んだ事なかったわ。特に肝心のエピローグが始まった途端に飛んできた時とか。

幕間・舞台での演奏に使用されていた楽器は、旧い型の肩掛けの太鼓、マンドリン、あとは恐らく当時には無かったトロンボーン、トランペット、ユーフォ(だと思う)。幕間の演奏では、渋めのサラバンドに近い演奏をしていた。男装のロザリンドとオーランドーが「恋の稽古」することが決まった一幕終了後、10分くらい普通に休憩取られてて、その後バンドの5人が舞台上方に出てきて、10分ほど4曲ぐらい演奏してくれた。その後に続けてタッチストーンが登場して山羊とモメて(笑)、そのまま第二幕へ。

ところで、今回、めちゃくちゃ良い物ゲットしました。

「お気に召すまま」では、ロザリンドにゾッコン恋したオーランドーが(笑)、彼女を讃える詩を書いて森中の木に張りまわってるシーンがあるんだが、

なんと、オーランドー、書いた大量の紙をスタンドに投げてくれた!!

ああそうともっ!!一枚ゲットしたともさっ!!

まあ固まって落ちちゃったんで、自分では取れず、大量に取った人から一枚もらったんだが、そんなのかんけーねえっ!!ゲットはゲットだっ!!

それが、上の写真でプログラムと一緒に写っている紙。ホントにきちんと詩が載っていて、私がゲットした紙には、シェイクスピアのソネット20からの1・2行目の引用が書いてあった。

A woman's face with nature's own hand painted
Hast thou, the master mistress of my passion

「自然自らがその手で描いた女性の面差し
貴方はそれをお持ちだ 我が情熱の主人である御婦人よ」

もっと長いのもあって、周りの人の中にはB5ぐらいの大きさのをゲットしてた人もいたみたいでビックリした。なんかビッシリ書いてあったし!

しかしホント、

ああーースタンドにしてよかったあああっ!!

さっき精神的な距離の近さ書いたけど、やっぱスタンドだと、実質的な距離も半端なく近いしね!!あんなに舞台を間近に観られると思わなかった!!正直、身長低いから心配してたんだけど、早めに行けば物凄い前の方で観られるし、前の人と被りそうで観にくかったら少しずれればいいし、もう役者の表情はっきりと見えたし!!役者さん、本当によく舞台から降りて演じるんだね!!レスリングのシーンでなんか、一回案内の人たちに観客後ろに下げさせられて、ほんと目の前で役者二人が戦うんだもん!!凄い迫力!!

そうそう、エンディングの結婚式のシーンのあと、エピローグまでの合間に、役者さん全員がノリノリの踊りを披露してくれるシーンがあって、すんごく盛り上がった!!メイン・キャラクタ-の時は、にこやかにウワーッと楽しめたんだが、その次のターンでフロントライン陣取った連中が、悪役系のフレデリック公爵やらその手下やら、とりあえず濃いっ濃いオッサンたちばかりで思わず噴いた。そのダンスの後に、珍しく女性であるロザリンドの独白によるエピローグ。最後まで笑わせてもらったわー。あーーーもう、めっちゃ面白かった。すっげ和んだーー!!

そんな感じで、もうルンルン気分で寮に戻った私。

部屋戻る途中の廊下で友人に会い、「どこ行ってたの?」と聞かれたので、グローブ座でシェイクスピアの「お気に召すまま(As You Like It)」を観てきたと告げる。

「どうだった?」と問われ、私の返答:

"As I liked it, I liked it!!" (私の気に入るがままに、気に入ったよ!!)

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