テレビとうさん

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「放送法」 と 「表現の自由」

2020年05月31日 | 法律
 沖縄のFM放送局が番組制作者から訴えられているようです。

 一部の人は「電波を借りて番組を放送するなら、放送局の方針に従うべきだ。」と言います。しかし、番組を作るのは番組制作者で、放送するのは放送局なので、電波を借りているのは放送局です。番組の制作者は放送局との契約約款に従う必要は有りますが、放送局の方針には従う義務は有りません。

 国民の共有物である電波を借りて利益を得ているのは放送局であり、番組制作者は放送局の設備を借りているだけです。放送局の契約約款は見た事が無いので、正確な事は判りませんが、恐らく「公序良俗に反する番組は放送を停止する。」程度の事は書かれているとは思います。当該番組の放送を停止する為には、放送局側がその番組の不適切部分を具体的に提示する義務が生じます。

 放送法に違反すると思われる番組を放送したからと言って、国が「通告なし」に放送局から電波を取り上げる(運用停止になる)事は有り得ませんし、今までに聞いた事も有りません。国の手続きとしては、最初は事情聴取、改善指示、・・・最終通告、それでも改善されないのなら法律に則って運用停止や免許取り消し処分です。国からその最初の事情聴取すら行われていない段階で、放送局側が契約番組を一方的に中止する事は、寧ろ放送局側の「放送法違反」「契約違反」になる可能性の方が大きいです。

 ネットで調べてみると、沖縄のFM放送局側は当該番組の「差別的な発言を放送していた問題」について第三者機関による番組審議会を(複数回)開催し、その結果として番組制作者側に対し「改善がなされない場合は終了する」と通告したようです。番組製作者側は「内容を改善し継続したい」として「改善すべき内容を明示すように」要求したところ、それに対応する(具体的な)返事は無く審議内容は公開されずに、契約期間が終了していないにも拘わらず、一方的に放送を打ち切ったそうです。

 国側から何らかの干渉が有ったとは思えませんが、若し(秘密裏に)干渉を受けたのなら、その件を公表すべきであり、無かったのなら「番組審議会」は番組を審議することで「当該番組の放送分」の審議は出来ても、将来に放送される予定の番組の審議までは出来ない筈で、番組を打ち切る事は憲法で保障されている「表現の自由」を予断を以て、将来に亘り制限する事になり違憲と言えます。現に、フェイクニュースを流した放送局でも放送は「適法」に継続されています。

 放送法では、放送業者に番組の編集権が「法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」権利として認められていますが、「放送番組の種別及び放送の対象とする者に応じて”編集の基準を定め”それに従い放送番組の編集をしなければならない」と書かれていて、放送業者は番組の製作者に対して「差別的とされる基準を明示」する義務が生じます。当然ながら、使用する電波は「公共物」なので、その「基準」は、一般に公開されなければなりません。

 政府が「秘密裏」に圧力を掛けたり、放送業者が「内々」で基準を決めたり、番組制作者が「圧力に屈する」ことは、放送法の精神に反する事になります。

 
放送法 第一章 総則(目的)
第一条 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。




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