「聖書」 と 「古事記」

　”the Challenged”の意味の取り方は「神からの挑戦を受けて立つ人」と「神からの課題に挑戦する人」が可能ですが、これは「聖書」と「古事記」の違いにも思えます。

　「聖書」では「人に対する神からの罰（運命）や命令（道徳・倫理）」が書かれていて、「古事記」では「神々自身の間違いや失態」が書かれています。

　「聖書と古事記」の神話時代のエピソードや、神道とユダヤ教の儀式には似た様な事があり、「日猶同祖論」の根拠にもされています。遺伝子科学的には否定されていますが、「物語」として伝来した可能性は否定できません。

　「創世記」では「はじめに神は天と地とを創造された。」と書いてあり、神の由来は判りませんが、暫くして人間（男）を創造し、その男の肋骨から女を創造しました。男と女は当初「盲目」でしたが、「善悪の知識の実」を食べた事で開眼し、互いの裸を見て恥じらいを感じ局部を隠しました。

　「禁断の果実」を食べた事で神は、男には額に汗して働かなければ生きていけないように、女には苦痛を以て妊娠と出産をするように罰を与え、最終的にはエデンの園から追放しました。最初に創造された男女が神の命令に従わなかった事から、人間は常に「神からの挑戦（罰）を受けて立つ」運命に有ると言えます。

　「アダム」はヘブライ語で「土、人間」の意味が有り、人間は土から造られたとされ、「土人」とも言えます。神の地以外に住む土人（アダム）はその女を「イヴ」と名付けました。「イヴ」には「生きる者・生命」の意味が有り最初からその役割が指定されています。

　十戒には、①～④は道徳が、⑤～⑩には倫理が書かれています。

①主が唯一の神であること

②偶像を作ってはならないこと（偶像崇拝の禁止）

③神の名をみだりに唱えてはならないこと

④安息日を守ること

⑤父母を敬うこと

⑥殺人をしてはいけないこと（汝、殺す勿れ）

⑦姦淫をしてはいけないこと

⑧盗んではいけないこと

⑨隣人について偽証してはいけないこと

⑩隣人の財産をむさぼってはいけないこと

 

　「古事記」では、「天地初發之時、於高天原成神名、天之御中主神訓高下天、・・」と書いてあり、天地開闢の時に「天之御中主」が現れた事になっていて、「物質と神性は一体」と解釈できます。最初の七神は性別は無く生まれ、この六代と七代の単神と八代目からの男女対の五代を合わせて、十二神の時代を「神世七代（かみのよななよ）」と言います。ここには男女の差別も順番も無く、区別すら無い時代も有りました。

　「神世七代」の最後の七代目が「イザナギ・イザナミ」で、「国生み」により日本列島を創り、「神産み」で森羅万象の神々を産みましたが、最初に産んだのが「ヒルコ（不具の子）」で、この蛭子神は葦の舟で海に流され、後に海や漂流物の神である恵比寿様になったとされています。

　また、アマテラスオオミカミは引き篭もり中に、アメノウズメのストリップショーの騒がしさに騙されて外を覗いたら、八咫鏡に映った自分の姿を観て他の美しい神が現れたと勘違いし、顔を出したところ引きずり出されたと云う、自惚れにも見えますが、自分自身を理解していない神と言えます。

　スサノオノミコトに至っては、我が儘で自己中なトンデモ神で、結果的には国造りに貢献しました。これらの神々は御自身が”the Challenged”であり、後の人間が解決しなければならない課題を残しました。課題とは言っても、自分自身を律する「道徳」であり、他人に直接影響する「倫理」ではありません。

　この神々の直系の子孫である天皇も、勅諭や勅語（おことば）では「・・・と共に・・・したい。」とか「・・・ねがう。」となっていて、神々と同様に、何も強制はしません。