処置法研究室

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遺体修復手当ての増額

2005-03-13 10:56:47 | Weblog
 ある自治体である議案が通り、4月1日より「遺体修復手当て」が1,000円の増額となります。
この遺体修復手当ては従来から公務員を対象に支給されていましたが、大規模災害時には医療資格者にも支給される「遺体処置・修復手当て」と同様の物であり、予算化はされていました。

 遺体に対する考え方は、従来の行政や司法機関の考え方から大きく変貌しており、今年の4月1日以降は「各地の自治体や司法機関、その他の公的機関では変貌が著しくなります」。
国立病院で入院患者さんが死亡した場合は病院での遺体処置がシステム化され、レベルの高いエンゼルケア(遺体処置)を病院内で行う事が決まっています。
厚生労働省は遺体処置に関して「届出も認可も資格もなく、実態は判らない」と言い逃れを続けて来ましたが、自省が出している「通知2件に対しては抵触している事は認めており」、各自治体への回答では「医学資格を持たない者が遺体の切開や縫合を行う事は、現行法令では抵触する法令はないが限りなくグレー」と回答をしています。(各自治体の議会HPでも見れます)

 医療サイドでは「遺体処置の診療点数化」を要望していましたが、現在の国保や社保の巨額赤字を考えると、可能性はゼロです。
以前はエステ業者が「ケミカル・ピーリング」を行って来ましたが、現在は法令で医療機関で医師または看護師出なければ出来なくなりました。
年間に4,000件の医療機関が倒産する時代ですので、「米櫃の取り合い」が起こります。
葬儀社に寄生する医師や、葬儀社の儲けを横取りする医師が出てきてもおかしくはありません。

 中井貴一さん主演の映画(TVでは西田敏行さん)の「ラブレター」では、病院でエンバーミングを行った事となっていました。
現行法令や通知では、「医療機関内でエンバーミングを行うには医学国家資格が必要」とされています。
この件に関連する事項としては2002年に行政指導が入っています。
そのため、医療機関としても「遺体の縫合資格として厚生労働省が通知している、医師やその他の医学資格所持者」でなければ遺体の縫合やエンバーミングは出来ないとされていますが(解剖実習に使用するための遺体へのエンバーミングは遺体を遺族に返す事がないので、医学資格は不要)、医療機関には解剖室や処置室もあれば医学資格者は沢山います。

 医療機関が法令や通知を厳守する事は当たり前であり簡単なのですが、何故か法令や通知を無視する医師達が増殖して来ています。
「医は算術」は嘆かわしい。
コメント (13)
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遺体の見方の相違

2005-03-10 08:12:47 | Weblog
 昨日の会議でも話しましたが、立場により「遺体を見る目が変わります」。
葬儀業界は遺体を見ると「儲けを考え、金を絡めて考えます」。
即ち、葬儀業界にとっては「遺体はお金」であり、葬儀業界の遺体処置には社会的意義をあまり感じません。
私は今まで年に数件ですが「司法・行政・外国政府・教育機関から依頼された犯罪被害者や災害被災者、外国人に対し無料のエンバーミングを行って来ました」。

 昨日の会議でも話しましたが、「社会的意義のない遺体処置は単なる利益行為でしかなく、社会的認知や受け入れが難しい」と考えています。
しかし、「業として遺体処置を行う以上は収益は必要です」。
問題は「方法と対象」です。
昨日の会議でも「近隣他都道府県からの無償エンバーミングの受け入れがポイント」と話しましたが、これを行う事により人件費を除き1遺体に要するエンバーミング・コスト1万円より、それ以上の効果は明らかにあり、「社会的存在意義は上昇します」。

 病院やスーパー・マーケットの様な「日常生活に不可欠な物には法令があります」。
しかし、「葬儀業には法令はありません」。
社会生活では葬儀社は必要な部分もありますが、「必ずしも日常生活に必要とは考えられていません」。
自治体では「玉野市方式」は葬儀を福祉の一環と考えているため、葬儀は行政の仕事と考えています。
社会構造や国民の意識の変化により葬儀の変貌は著しく、「セレモニー行為の縮小は明らかです」。
特に葬儀社のブローカー化が著しく、電話器1台で葬儀を施行している業者も東京には増えて来ました。

 葬儀業界では「火葬だけのプラン」を行う葬儀屋が増えていますが、これは利幅が薄いですが社員も道具も殆ど必要もなく、業者への連絡だけで葬儀が行えます。
ただし、これらのプランでは「葬儀社のプロとしての存在意義は見出せません」。
これら程度の仕事であれば「行政の福祉や民生担当でも行っています」。
私から見れば「ラーメン専門店がお客にお湯を入れるだけのカップ麺を出している」と同じです。
葬儀業界の厳しい現状は理解出来ますが、「レベルを落とすと元には戻れません」。

 今回のプロジェクトは「収益も考えていますが、社会的意義と存在を重視」しています。
利益重視から社会的意義重視の過渡期は当に過ぎていますが、最後の時期かも知れません。

 最近、私の周りで新たにベンツを買った遺体屋が増えて来ました。
決してベンツに恨みはありませんし、1,500万円のベンツに遺体屋が乗っても構いません。
しかし、「ベンツでおネーチャンの元へ通うより遺体処置に通え、ベンツを磨くヒマがあったら腕を磨けと言いたい」。
日本的には「色即是空 空即是色」、外国的には「バベルの塔 パンドラの箱」です。

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今回の出張

2005-03-09 00:36:20 | Weblog
 今日の午後の便で帰京する事となりました。
今回は明日の打ち合わせで終了ですが、3年越しの計画が間もなく出来上がります。
これは単なるスタートに過ぎません。

 来週は地方からヒトが来て在京での会議です。
翌週は別の地方に出向き会議を行います。
4月1日から「遺体処置」が変わります。
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これから地方で会議

2005-03-07 07:57:19 | Weblog
 今日から地方で会議があります。
今回はパソを持参しますので、更新するかも知れません。
帰京は明日か明後日で、未定です。
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大規模災害時の遺体の置かれる立場

2005-03-06 12:00:48 | Weblog
 大規模災害時に発生する「多数被災遺体」については医学会としては検案・解剖以外は検討をしておらず、検案や解剖が終わった後の事は一切、検討されていません。
政府・内閣府や関係省庁、自治体では数十年前からの基本姿勢は変わりません。
「災害発生時の遺体処置・遺体修復は医療従事者(国家資格所持の厚生労働省通知にて認められた者)」との考えは不変です。
今回、この件で某国立大学の先生とお話をしましたが、この考えが変わる可能性は「全くない」との考えは同じでした。

 警察庁や各都道府県警察本部でも「災害発生時の遺体処置・遺体修復には医学国家資格が必要」との考えは変わっていません。
また、「遺体の清拭と納棺においては医学国家資格は必要ない」との考えも変わっていません。
これは、遺体の清拭や納棺まで「法令資格に限定」すると、災害現場で遺体を担当する司法警察官や司法警察員は医学国家資格を有していないため、警察の遺体業務は行えなくなります。

 自治体の災害被災遺体処置予算は2段階性を採用しています。
遺族に遺体を引渡す前の「医学資格者が担当する法令指定遺体処置業務は1遺体7,000円」であり、
法令の指定を受けない「医学資格を有しない葬儀関係者行う納棺やドライアイスを入れる行為は1遺体3,500円」が規定されています。
前記の7,000円には「遺体縫合費用や薬剤費用も含まれており」、後記の3,500円には「ドライアイス費用も含まれています」。

 棺代金の負担はどうするのかも課題ではあります。
取り合えず、「最も廉価な棺に納め、気に入らなければ遺族が葬儀社から棺を買い換える」が一般的ですが、自治体が市民に販売している棺価格(龍野市 8,600円、さいたま市 8,000円 等)を考えると、自治体が災害被災1遺体に要する予算は「検案費+遺体処置・遺体修復費+遺体納棺費+棺費+ets」により、1災害被災遺体について「40,000円以上」となります。
これら以外にも遺体搬送費や火葬費用は自治体負担であり、これらを加えた総額は「7,000円」になります。

 そのため、行政としては「自治体負担額の減額を検討」する必要があり、医師に支払う検案費は手をつけ辛い関係から、遺体処置・遺体修復費、遺体納棺費、棺費、遺体搬送費の削減を検討しています。
遺体安置所に使用された教室や部屋は「気持ち悪い、臭いがついた等」の苦情が多く、床板やカーペットの張替えと壁紙の張替えを行うのが一般的です。
そのため、これらの費用も加算すると行政が1災害被災遺体に関して要する支出は「約100,000円」となります。

 更に行政解剖が加わると「200,000円以上」となります。
東京都では大地震により最低でも11,000人は死亡すると考えられています。
東京都監察医務院の平常時の行政解剖能力は最高でも20遺体以内ですが、大規模災害時は時間の延長と増員体制を取るため、最高で50遺体は対応が出来るかも知れません。
それでも「50遺体/日」のため、災害現場が落ち着く災害発生から7日目までに行える行政解剖遺体数は250~300遺体以内でしかありません。

 東京都監察医務院の遺体保管能力は20遺体以下のため、行政解剖は「3~4日待ち」は当たり前となり、季節によっては解剖待ちで「遺体は腐敗します」。
エンバーミングを行うために「ドライアイスを禁止」したため、遺体が腐敗するケースは多々ありますが、これと同じ事が起こります。
阪神淡路大震災は「激寒時」のため遺体の腐敗は非常に少なかったですが、大規模災害は冬に起こるとは限りません。
スマトラ沖大地震では気温35℃以上の地で起こった災害ですが、夏の東京で大規模災害が発生すると今回のスマトラと同様に「24時間後には遺体は腐敗しているのは明らか」です。

 阪神淡路大震災は早朝に発生したため、「遺体発見場所が死亡者の住居」と考えられ個人同定が容易でしたが、昼間の災害被災では外出者の被災が多く個人同定は容易ではありません。
そのため、遺体に関して言えば「阪神淡路大震災は管理が容易でした」が、夏に起これば水着で海岸で被災した遺体の個人同定は「殆ど不可能です」。

 
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