おやじ達の青春夏

団塊世代のおやじ達が過ごした楽しかった青春時代の想い出の数々。

#33★★車が・・・

2013-12-31 | おやじ達の青春夏・エピソード
9時を回った蒸し暑い夜。
みんな麻雀をやっている。
退屈だ。
「スズキ、車貸してくれない」
「うっんん、オヤジから車は貸さないように言われているけれど少しだけなら良いよ」
「え~と鍵はと」
「あったあった、はい」
「暑いから、ちょっとそこらへんを走って涼んで来るだけだから」
と家を出ようとしたら
「ヤッチン、私も連れてって!」とアケミさんが・・・。
「行くの一緒に・・・」
「乗せてよ」
「アア、良いよ」
白の“いすゞ・ベレット1600”、良いな~。
体を包むようなシートに木目のハンドル、カッコ良いな~。
「何処へ行くの」
「海岸沿いを走って洲崎灯台あたりまでかな・・・」
「ラジオのスイッチを入れFENに・・・」
家を出て海岸道りに出てハンドルを左に切りフラワーラインを洲崎灯台に向かって走り出した。
ラジオからは“マー・ベィビー・ベィビー・バラバラ”と
「この曲何て言うの?」
「レインボーズの“バラバラ”だよ」
「この曲、流行っているわよね、良く聴くから・・・」
「うん、レコードが欲しいんだけどね、まだ売っていないんだよね」
「この放送局はねFENって言って、アメリカ軍の基地から放送されているから、曲が日本より早いんだ」「今、流行っている“ハンキーパンキー”なんか去年から流れていたよ」
音楽は花のサンフランシスコ、モンキーズのデイドリーム等々と快適な曲が流れていた。
窓からは気持ちの良い風が・・・。
車は館山休暇村、西岬海水浴場、坂田を過ぎゆるい左カーブ、
そして右カーブに・・・その時、
車がキッキッキッ~、カーブがきついこのままじゃ曲がれないと感じ軽くブレーキをかけた。
すると車がフワァー~っと~浮き上がったような感じ。
助手席のアケミさんが・・・
「きゃ~~~~~」っとしがみ付いて来た。
ハンドルが利かない、
車がドン、ドン、ドンと大きな音をたてて転がった。
「手を離して!」
「アケミさん、手離して!」
目の前がぼんやりと霧が掛かったように見える。
どうなったのか。
車は止まっている。
車内はまだぼんやりとしている。
「アケミさん、大丈夫!」
スピードの出し過ぎだった。
幸い車は一回転して起き上った状態だった。
ドァーを開け外に出た。
暗闇の中、周りを見ると空に満月と星がキラキラと輝いていた。
最悪だ。まいったな~。
スズキに何て言おう。
車はエンジンが切れカーブの中ほどを過ぎた道路脇で止まって、
ヘッドライトが海を照らしていた。
車内がぼんやりとしていたのは一回転した時に床のほこりが落ちて来ていたのだ。
道の右脇は数メートルの崖、左は畑のようだった。
「ヤッチン、大丈夫」
「俺は大丈夫だけどアケミさんは?」
「怪我ない?」
「私も大丈夫よ」
「下に落ちなくてよかった~」
「ごめんね!アケミさん」
車の両サイドのドァーと屋根がベッコリと凹み助手席のドァーは開かなかった。
キ-をひねるとブルン、ブルン、ボッボッボッとエンジンが掛かった。
助かった。ラジオからはビージ-ズの“マサチューセッツ”が流れていた。
快適なドライブになる筈が暗い沈黙の世界に・・・。
スズキ、ごめん!
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