新幹線「のぞみ」に乗車しました。近年、西日本へ行くことが少なく、最新の車両(N700系と言うらしい)には初めて乗車したのですが、その意外なデザインの悪さに不快な旅となりました。
通路側の席だったんですが、まず窓が飛行機のように小さくて圧迫感がある。まあ、これはコストとの兼ね合いでしょう。大きくすれば強度も増さなければならず、ガラスも高いし、重量が増えてランニングコストも上がるというわけで、考え方としては理解できます。
ひどいのは、シートのデザインです。短時間で首や腰が痛くなり、とても続けて腰掛けていられません。一体プロがデザインしてるのだろうか。以前乗車したヨーロッパの列車のシートはどれも快適でした。想定しているヨーロッパ人の体型は私とずいぶん違うはずなのに。今回の同行者と私の体型もだいぶ違いますが、同行者もこのシートは大変座りにくいと言っていました。4時間の苦行の後、在来線のボックス席に乗り換えたときはほっとしました。
初代の新幹線車両の椅子は千葉大学で人間工学に基づきデザインしたというのが売りでしたが、これも掛け心地はお世辞にもよいと言えませんでしたね。デザインしている人たちがよほど変な体型なのかな。とにかくバスも含めて車両のシートのワーストワン賞を差し上げたいと思いました。
ところが、ひどいデザインはそれだけじゃなかった。帰りの「のぞみ」で、またあの椅子か、と憂鬱になっていたら、さらにがっかりしたことに指定席が車両の最前列通路側でした。目の前にデッキへ出るドアがあって一番落ち着かない席です。それにしても、この不安定感は普通じゃないと思ってよく見たら、デッキへの自動ドアの幅が、通路幅より広いではありませんか。逆に言えば、シートの幅が、ドアの枠より10センチほど内側にはみ出ているのです。つまり、もしドアの幅一杯に荷物を持って入ってきて直進すれば、かならず座っている人にぶつかります。自動ドアなので、開き始めてすぐ入ろうとするせっかちな人も、私の脚にぶつかりそうになり、あわてて斜行します。一体なんだこの設計は。デザイナーの顔が見たい、と怒りを感じました。
おそらく、ドアの幅を少しでも広くしておけば、ドアの部分で出る人と入る人が鉢合わせで立ち往生なんてことが少なくなる、という発想なんでしょう。最前列に座っている人の不快感など気も留めず、考えたとしてもそこの席の人は運が悪かったと思ってあきらめればよいという考え方なんでしょうね。しかし、図面上は判らなくてもモックアップ(実物大模型)の段階で、実際に数時間使ってみるシミュレーションをすれば、シートの座りにくさを含め検証できたはず。ドアの幅を広げつつ、最前列の客に不快感を与えないデザインの解決方法は複数存在するはずです。要は使用者の立場でデザインしてるかどうかですね。
かく言う私は、決して機能優先主義ではないし、時と場合によっては使用者に、ここはちょっと我慢しましょう、という設計をしないことはないです。しかし、それはもちろんそうすることによって、別のより良いものが得られる場合です。また、プライベートな住宅のようなものと公共のものは、その基準も違えて考えます。この新幹線の椅子の場合、すわり心地を犠牲にして何を得てるのでしょう。単にデザイナーが無能なのですね。他山の石として気をつけようとも思った次第です。
あー、それにしてもまだ首が痛い。