あべっちの思いをこめた雑記帳

ネジバナはどこから

 歩いているとさまざまなことに出くわす。
 散歩中の老夫婦やワンちゃん連れのお母さん。変わった車や自転車の中高生。その姿にしばし心をとめたくなるような場面もある。
 小さいお子さんのいるお宅では、土曜や日曜になると今頃の季節は親子そろってシャボン玉を飛ばしている光景を目にすることもある。
 とりわけ季節を代表するような花や木に会うとよろこぶ。桜梅桃やチューリップやヒマワリ。朝顔やコスモスも心やすらぐ花のひとつだろう。まあ今の時期ならやはり紫陽花が一番かもしれない。

 家のまわりの山はほぼ少なくなったけれど、田んぼや畑はまだまだ健在。だからおたまじゃくしをすくう親子の姿に心を奪われるのは毎年のことだと思っている。さりげなく挨拶をして、うまくすくえるといいねえと心の中でいのる。そして拍手を内心してしまう。

 近所はすべて一戸建ての家だから、どこのお宅もオール庭持ち。芝生やコンクリート敷きの駐車スペース。そして花で飾った庭園や草ぼうぼうのお宅も。
 季節になるとパンジー、ニラ、猫じゃらし、ポピーなどはいろんな場所へ浮気する。
 わが家に1メートルにも伸びた、まもなく咲こうとしている百合などはその典型的なお恵みをいただいた。どこからか鳥が飛んできて、百合のお土産を置いていってくれたのだろう。今では資本金ゼロのそののっぽさんも、この夏は10本くらいの茎に無料で成長してくれそうだ。

 そんな中にかつては見たことのないような花が3年前に咲いた。
 直立の茎にピンク色した花弁がぐるぐるそれを取り巻くように咲いている。咲き始めは特に気にもとめなかったが、本数が増え、大きくなるにつれ、その存在のたしかさに気づいた。
 いつの間にかあちこち4ヵ所に天を指すようにまっすぐ起立して人目をひく。そして螺旋状のピンクがなんとも言いがたい。

 ネジバナという名は知っていたが、わが家では初めて目にする可憐な花だった。その時、図鑑でラン科の一種だと知った。そして漢字は捩花と書き、花言葉は思慕、秘密の思い出とある。
 名前のように捩れるように咲き、ピンクの花を可愛く咲かせる。別名を「捩摺(もじずり)」というのも、右巻きと左巻きがあるのも3年前には知らなかった。名前に似合わず、その花の凛々しさを今では感じる。
 繁殖力が強いところをみると、何かの鉢植えを買ったときに、その土に混ざって一緒にわが家に嫁いできてくれたのかもしれない。
 わが家に嫁いで丸3年。
 今年もこうして元気に顔を見せてくれている。


                   「季節の花(44)ネジバナはどこから」

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