大根もジャガイモも里芋も、野菜の花は清楚でいい。
派手さはないけれど、決して押しつけがましくなく、控えめなところがいい。それは草花にもいえるものがある。
渡良瀬川の土手沿いを久しぶりに走った。先日は利根川の土手を走ったが、どちらも菜の花が一面に咲いていた。
土手に近い所で育ったからか、幼少の頃からこの黄色い絨毯はよく目にしていたし、幼心に焼きついたまま今でも心の写真館の中にその黄景色は閉まってある。
それがこの季節になるたびに実景と重なる。幼なじみの花に今年も会えたうれしさ。
菜の花は別名花菜、油菜、菜種ともいう。
移植を嫌う代表的な植物だ。原産地がヨーロッパや地中海沿岸というのは意外だった。いつ頃伝来したのか定かではないが、どうも弥生時代には中国から渡来していたらしい。
椿とともに植物油として重宝された。
椿は伊豆大島とすぐイメージするが、菜の花はあちこちの畑が私には浮かんでくる。
修学旅行のときお伊勢さんへ向かう近鉄特急から見た沿線に咲く一面の黄色い世界。みんなキャーキャー言いながら、片側の窓辺に寄ってしまった。
長野の山々を背にした、まるで唱歌のごとき風景。
自宅から車で30分で行ける菜の花の公園。
それぞれに菜の花の黄のシーンが目に浮かぶ、!
でも、やはり小さい頃から馴染んだ渡良瀬川や利根川の土手の菜の花が一番好きだ。誰にも管理されずに、自由きわまりなく、わが城とばかりのびのび咲いているからなのだろう。
人間にたとえれば、さしずめ普段着の女といったところか。
素直だけれど 強い
純真だけれど 強靭
平凡だけれど 鮮明
素朴だけれど 絢爛
「季節の花(5) 菜の花は清楚で控えめ」