「競技場」が2025年オープン、量子コンピューターが迎えるChatGPTモーメント中田 敦様記事抜粋<様々な方式の量子コンピューターが1カ所に集まり、互いに性能を競い合う。そんな量子コンピューターの「競技場」が2025年にオープンする。競争の舞台となるのは、産業技術総合研究所(産総研)の「量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)」
産総研のG-QuATでは、2025年に3つのコンピューターが稼働する予定だ。米NVIDIA(エヌビディア)の人工知能(AI)用GPU(画像処理半導体)である「H100」を2000基以上搭載するスーパーコンピューターの「ABCI-Q」、富士通が開発した超電導方式の量子コンピューター、米国のスタートアップであるQuEra Computing(クエラ・コンピューティング)が開発した冷却原子方式の量子コンピューターである。これらで「量子・AIクラウドプラットフォーム」を構成する。このプラットフォームには、新たな量子コンピューターの追加も想定されている。
GPUスーパーコンピューターであるABCI-Qを構築するのは富士通で、産総研との契約額は92億4000万円。富士通の超電導方式量子コンピューターの契約額は59億9500万円、クエラの冷却原子方式量子コンピューターの契約額は64億9999万9999円である。
「テストベッド」として一般に公開
量子・AIクラウドプラットフォームは、量子コンピューターの性能を検証したり、量子アプリケーションを開発したりする「テストベッド(実証環境)」として、研究者や企業に公開される。詳細はまだ決まっていないが、同じ産総研のAIスーパーコンピューター「ABCI(AI橋渡しクラウド)」と同様に、従量課金制で利用できるようになる見通しだ。
GPUスーパーコンピューターであるABCI-Qでは、エヌビディアが開発した量子コンピューターのシミュレーションソフトウエア「CUDA-Q」を利用できる。量子コンピューターの実機を使った処理がスパコンでのシミュレーション通りの結果を出しているかどうかなどを検証できる。
「様々な方式の量子コンピューターと既存方式のスパコンが隣り合い、インターネットを介さずに利用できる環境は、世界中を探しても他にはない。異なる方式の量子コンピューターをリアルに比較できる環境は、ユーザーにとって魅力的だろう」。G-QuATの堀部雅弘副センター長はそう語る。
光方式量子コンピューターなどの追加を検討
堀部副センター長によれば、量子・AIクラウドプラットフォームには他方式の量子コンピューターが追加される可能性があるという。有力な候補の1つが、光方式の量子コンピューターだ。また稼働から5年後の2030年には、量子・AIクラウドプラットフォーム自体を次世代機に更新する予定だ。その際には米IBMの量子コンピューターが追加される可能性があるという。
産総研は2024年5月10日、次世代型量子コンピューターや量子コンピューターのサプライチェーン開発の推進で、IBMと研究協力覚書(MOU)を締結した。このスキームで開発した次世代量子コンピューターが、テストベッドで利用できるようになる見込みだ。
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