iPhone回復期待で注目のブロードコム、クアルコム_sbi様記事抜粋<
先週は市場予想を下回るインフレ指標で米10年国債利回りが4.2%台まで低下、AI関連やアップル関連などテクノロジー株が物色され、株式市場は再び最高値を更新しました。今週の株価材料として、米国の5月小売売上高、トリプルウィッチング、欧州株式市場の動向、などが注目されます。
今回はAI機能の追加でiPhoneの買い替え促進が期待されるアップル(AAPL)および、その関連銘柄から、ブロードコム(AVGO)、クアルコム(QCOM)、スカイワークス ソリューションズ(SWKS)、クォルボ(QRVO) を選んで今週の5銘柄
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ブロードコム | 23.3% |
アドビ | 12.9% |
オラクル | 9.7% |
エヌビディア | 9.1% |
アップル | 7.9% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ペイパル・ホールディングス | -9.9% |
ボーイング | -6.8% |
クラフト・ハインツ | -5.8% |
アルトリア・グループ | -5.1% |
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | -4.9% |
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で1.6%、ナスダック指数は3.4%の上昇となる一方、ダウ平均は0.5%の下落でした。米10年国債利回りが大きく低下する中、グロースのテクノロジー株が集中的に物色される一方、景気敏感とディフェンシブがともに売られました。
6/10(月)、6/11(火)はマクロ的には明確な材料がない中じり高でした。6/12(水)の5月消費者物価指数が市場予想を下回って上放れ、6/13(木)は5月生産者物価指数が予想を下振れて、さらに相場を押し上げました。
6月FOMCでは、メンバーによる年末の政策金利見通しが、年内3回の利下げから同1回の利下げ相当に引き上げられました。3月のFOMC以降、インフレの下がりにくさ、米景気の強さを示唆する指標が出たことが背景にあります。ただ、このような変化は市場に織り込まれていたとみられます。
企業面では、アップルのAI機能追加がiPhoneの買い替えを促進するとの期待、オラクル(ORCL)が大規模言語モデルの運営契約で受注残が大幅に増えていること、ブロードコムはAI関連売上が市場予想以上に増えていること、などAI関連でポジティブなニュースが相次いで相場を押し上げました。
業種指数では「情報技術」が6.4%の大幅高となりました。半導体株が大幅上昇となったほか、これまで低調だったソフトウェア株もオラクルやアドビの決算発表を契機に上昇するものが増えました。
今週の米国株式
S&P500指数は先週再び最高値を更新して、相場の上昇圧力が強いことが確認されました。企業業績の堅調、インフレ鈍化のトレンド、リセッションに至らない程度の景気鈍化といった株式投資の環境が良好であることが背景となっていると言えるでしょう。
こうなると、当面どれくらいまで上がるのかが気になりますが、テクニカル面では5,575ポイントが計算されます。これはS&P500指数の3/28(木)高値から4/19(金)安値の調整幅311ポイントの「倍返し」(調整のボトムから調整幅の2倍上昇する)となるポイントになります。
この水準は2024年予想EPS245ポイントに対して予想PERが22.8倍、2025年予想EPS277ポイントに対して予想PERが20.1倍と、かなり高いものになります。大統領選挙による不透明感が視野に入って相場に警戒感が出る前までに試しにいく可能性はあるとみられます。
今週の株価材料として、米国の5月小売売上高、トリプルウィッチング、欧州株式市場の動向、などが注目されます。
6/18(火)に発表予定の5月小売売上高は、強すぎず、弱すぎず、というのが株式相場には良さそうです。現在の市場予想は前月比+0.3%で、これに沿う数字ならポジティブとなりそうです。
6/21(金)は3ヵ月に一度、株価指数先物、株価指数オプション、個別株オプションの3つのデリバティブ取引の決済が重なるトリプルウィッチングの日です。純粋にテクニカルなイベントですが、相場がかなり上昇してきて、水準も高いので、相場の流れが変化する可能性に注意が必要とみられます。
欧州株式市場は、政治への先行き不安からリスクオフムードが広がり、6/13(木)、6/14(金)に大きく下落しました。週間でフランスのCAC指数は6.2%、ドイツのDAX指数は3.0%の下落です。ヨーロッパ議会選挙で極右政党が大勝する見通しとなり、フランスでは6月下旬から国民議会(下院)選挙の投票が始まる予定です。米国株式市場に影響が出る可能性があるため、注視しておく必要がありそうです。
経済指標では上記のほか、6/17(月)に中国の5月鉱工業生産(前年比+6.2%の予想、前月は同+6.7%)、同小売売上高(前年比+3.0%の予想、前月は同+2.3%)、6/20(木)に米国の5月住宅着工件数(前月比+1.1%の予想)、同住宅建設許可件数(前月比+0.7%の予想)、6/21(金)に米国の5月中古住宅販売件数(前月比-1.2%の予想)、などの発表が予定されています。
企業イベントでは、6/18(火)にチポトレメキシカングリルが1株を50株に分割、マイクロソフトがAI機能を強化した「Surface」発売、ボーイングのカルフーンCEOが上院で証言、などが予定されています。
今週の5銘柄
今回はアップル(AAPL)およびアップルのハードウェアに半導体などの部品を供給しているサプライヤーを取り上げます。
アップルは先週開催された年次開発者会議で、独自開発の人工知能(AI)である「Apple Intelligence」をiPhone、iPad、Macなどに搭載していくことを発表しました。また、OponeAIと提携して「ChatGPT」をアップルのサービス経由で利用できるようにすることも併せて発表しています。
市場ではAI機能の付加がiPhoneの買い替えを促進して、停滞気味となっているiPhoneの売上を押し上げるのではないかとの期待が高まっています(図表3)。このため、S&P500指数に採用されているアップルのサプライヤーから、ブロードコム(AVGO)、クアルコム(QCOM)、スカイワークス ソリューションズ(SWKS)、クォルボ(QRVO)を選んでご紹介いたします。
なお、欧米のiPhoneユーザーのiOSシェアを集計しているブログサイトによると、2023年10月時点で2023年9月に発売されたiOS17が34%、2022年9月に発売されたiOS16が62%、iOS15以前が4%となっています。来年に向けてiOS16のユーザーが買い替えに動くかどうかが注目されています。
図表3 アップルのiPhone売上推移
注:予想はBloomberg集計によるコンセンサス予想(6/13(木)時点)です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 注目銘柄の投資指標
銘柄名(コード) | 株価 (6/14) (ドル) |
予想 PER (倍) |
目標株価 (ドル) |
目標株価 乖離率 (%) |
EPS増加率 (今期予想) (%) |
EPS増加率 (来期予想) (%) |
通期EPS 修正率 (3ヵ月) (%) |
アップル(AAPL) | 212.49 | 31.0 | 206.42 | -2.9 | 7.6 | 9.8 | 0.3 |
ブロードコム(AVGO) | 1735.04 | 31.6 | 1833.73 | 5.7 | 13.2 | 26.3 | 1.7 |
クアルコム(QCOM) | 215.33 | 20.7 | 199.82 | -7.2 | 17.6 | 14.5 | 2.2 |
スカイワークス ソリューションズ(SWKS) | 104.37 | 17.8 | 103.48 | -0.9 | -26.6 | 6.0 | -9.7 |
クォルボ(QRVO) | 112.38 | 18.5 | 110.73 | -1.5 | -2.0 | 31.2 | -20.3 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (6/14) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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買付 | アップル(AAPL) | 212.49ドル | 32.2 |
【AI機能追加でiPhone回復に期待】 ・アップルが年次開発者会議で同社独自のAI機能「Apple Intelligence」を発表しました。iPhone、iPad、Macのためのパーソナルインテリジェンスシステムで、「メール」や「メモ」などの文章の生成や添削、説明を入力するだけでオリジナルの絵文字を作成できる「Genmoji」機能などがあります。 ・また、「ChatGPT」との提携も発表し、アップルのツール内で「ChatGPT」を利用することができます。AI機能の追加は、販売が停滞しているiPhoneの買い替え需要を刺激するのではないかと期待されています。
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買付 | ブロードコム(AVGO) | 1735.04ドル | 36.3 |
【AI関連売上が好調】 ・アップル向け売上は2024年10月期に15%程度と推定されます。もう一つの注目点であるAI関連売上は、 2-4月期に31億ドルで、前年同期比3.8倍となり、11-1月期の23億ドルからも増加しました。AI関連売上の中身は、データセンターで使用されるネットワーキング半導体と特定顧客向けAIアクセラレーター(エヌビディアのGPUと同様の働きをする半導体)です。 ・ネットワーキング半導体は、イーサネット・スイッチ、PCLeスイッチ、NIC(ネットワーク・インターフェース・カード)向け半導体です。AIアクセラレーターは、グーグル、メタプラットフォームズなど特定顧客のAI計算に用いられています。
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買付 | クアルコム(QCOM) | 215.33ドル | 21.7 |
【スマホ需要の回復を示唆】 ・スマホ用半導体で台湾メディアテックと首位を争います。CDMA(符号分割多重接続)を開発した会社で、半導体の開発・販売のほか、特許などのライセンス供与も行います。アップル向け売上は、2023年9月期に27%です。6/18(火)には、同社のCPUを採用してAI機能が強化されたマイクロソフトの新型「Surface」が発売されることも注目されます。 ・1-3月期は、売上が前年同期比1%増、EPSが同13%増と売上は低調でしたが、4-6月期の売上は前年同期比4~14%増へ加速するガイダンスを示しました。スマホ需要の回復に楽観的な見通しを持っていることが示されていました。
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買付 | スカイワークス ソリューションズ(SWKS) | 104.37ドル | 16.7 |
【当面の業績は低調な見通し】 ・アナログIC世界3位。スマホ向けに強くアップルが最大顧客の一方、アンドロイド系スマホメーカーとも取引があります。アップル向け売上は2023年9月期に66%です。 ・1-3月期決算は、売上が前年同期比9%減、調整後EPSが同23%減と低調でした。4-6月期の売上ガイダンスは9.00億ドル±2%で、前年同期比18%減~14%減の予想です。前年同期比部品の在庫水準は正常化しつつあるとの前向きなコメントはありますが、目先は厳しい状況が続く見通しです。
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買付 | クォルボ(QRVO) | 112.38ドル | 18.3 |
【四半期売上が激しく上下】 ・RFIC(高周波IC)主力の半導体メーカーで、モバイル向けが主軸です。通信インフラ、航空・防衛向けもあります。アップル向け売上は、2024年3月期に46%です。 ・同社の四半期売上は凸凹が激しくなっていますが、2024年3月期はスマホ部品では主要顧客での採用増加と航空・防衛の増加によって、2023年3月期の落ち込みから回復しています。2025年3月期は緩やかな売上拡大と利益率改善を見込んでいます。4-6月期の売上は8.50億ドル±0.25億ドルで、前年同期比27~34%増相当です。
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注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、アップル、クアルコム、スカイワークスソリューションズが2024年9月期、ブロードコムが2024年10月期、クォルボが2025年3月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
17(月) | ・日本機械受注(4月) ・中国鉱工業生産・小売売上高(5月) ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(6月) |
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18(火) | ・ドイツZEW景気指数(6月) ・米小売売上高(5月) ・米鉱工業生産(5月) ・20年国債入札 |
・チポトレメキシカングリルが1株を50株に分割 ・マイクロソフトのAI機能を強化した「Surface」発売 ・ボーイングのカルフーンCEOが上院で証言 |
19(水) | ・米国市場休場(ジューンティーンスインディペンデンスデー) ・米NAHB住宅市場指数(6月) |
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20(木) | ・EU27ヵ国新車登録台数(5月) ・米住宅着工・建設許可件数(5月) ・米新規失業保険申請件数(6月15日に終わる週) ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(6月) ・5年インフレ連動国債入札 |
アクセンチュア |
21(金) | ・HCOBユーロ圏製造業PMI(6月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(6月) ・米中古住宅販売件数(5月) ・トリプルウィッチング |
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24(月) | ・ドイツIFO企業景況感(6月) | |
25(火) | ・米シカゴ連銀全米活動指数(5月) ・米S&PコアロジックCS住宅価格(4月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(6月) ・2年国債入札 |
カーニバル、フェデックス |
26(水) | ・米新築住宅販売件数(5月) ・5年国債入札 |
マイクロンテクノロジー |
27(木) | ・中国工業部門利益(5月) ・ユーロ圏景況感(6月) ・米実質GDP(1-3月期、確報値) ・米新規失業保険申請件数(6月22日に終わる週) ・米耐久財受注(5月) ・米中古住宅販売成約(5月) ・大統領選挙TV討論会(現地午後9時~) ・7年国債入札 |
ナイキ |
28(金) | ・日本鉱工業生産(5月) ・米個人所得・個人支出(5月) ・米個人消費支出物価指数(5月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(6月、確報値) |
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