ところが、ドイツのハーベック経済相は馬耳東風。昨年、産業界からの反対の声を無視して、無理やり原発を止めたのも氏だったが、今でも、脱原発は良いことだったと思っており、だから、それと同じぐらい良いことである脱石炭も、緑の党が政権にいる間にできる限り進めようと必死だ。

いや、それどころか、全土に張り巡らされているガスの導管まで次第に撤去していくという。ただ、その後の電力を何で代替するかということについて信用のおけるプランはない。ちなみに現政権(社民党、緑の党、自民党の連立)の支持率は、3党をすべて合わせても30%そこそこという惨状で、国民の信頼はほぼ失われてしまっているといっても過言ではない。

そんな中、電気やガスを多く使う大企業が、現在、大慌てで生産工程を国外に移転しているのは不思議でも何でもない。この調子では、脱原発、脱石炭に続くのは、どう考えても脱産業だ。

なお、脱原発と脱石炭は誰にも強制されたわけではなく、ドイツが自発的にやっていることだ。さらにいうなら、ロシアの安いガスの輸入停止も、ドイツがロシアに経済制裁をかけるとして、やはり自発的にやっている。さらにもう一つ言うなら、ドイツのCO2の排出量は世界全体の2~3%なので、たとえゼロにしても地球環境の向上にはさほど役に立たない。