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H22旧試論文答案の再現

2010-07-25 21:39:08 | 平成22年度旧司法試験論文再現
自分にとっても,検索で引っかかる人にとっても,何かの参考になるのでは,と考えて,先週(今週?)7月18日,19日にかけて受験してきた旧司法試験論文式試験の再現答案を載せました.

拙い日本語で答案を書いてますが,本番はこれよりさらに読みにくい文章だったはず..採点する先生も大変でしょう.


憲法,刑法,刑訴法の各科目については,ひどい出来だと思います.定期試験だと不可,司法試験だとEからGくらいですかね.
民事系は,定期試験だと良,司法試験だとCからFくらいなんでしょうか...
この感覚が実際の評価と一致すれば,来年の新司法試験に望みあり,だと思います.
10月の結果発表&成績通知が楽しみというか怖いというか.全部Gとかだったら笑えるな...いや,笑えないか....


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8月3日に誤変換箇所等修正しました.
おそらくは私一人だけだったページ閲覧者が,再現を載せた後から急増しているようですので,参考までに私の伊藤塾模試の成績について書きますと,

憲法:48(24-24)
民法:46(23.5-22.5)
刑法:47.5(25-22.5)
商法:50(26-24)
民訴法:46.5(23.5-23)
刑訴法:45(23-22)

となっています.合格点の目安が25点だそうなので,要は不合格必至ということです.
なので,悪い答案の例として見ていただくと,安心だと思います.

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論文の成績通知が届きました.
合格点が130点ちょうどで,合格者数52人だそうです.
私は,憲,民,商,刑,民訴,刑訴の順にBACECD,総合得点が123.95,順位が153位(B)でした.
100番刻みで,ABCDEとつけて,501位以下はFらしいです.


憲法と民法を除いて,自分の感覚よりちょっといいくらい,という感じなので,新試に向けて少しは望みありですかね.
新試合格したいなあ.

H22旧試刑事訴訟法

2010-07-25 21:30:08 | 平成22年度旧司法試験論文再現
刑事訴訟法第1問


第1 甲に対する行為について
1 甲に逮捕する旨を告げ,逮捕に着手した行為について
 甲は現に覚せい剤を所持しており,覚せい剤所持罪の現行犯人と言えるから(刑事訴訟法(以下,「法」とする)212条1項),現行犯逮捕(法213条)として適法である.
2 甲を追ってXの事務所に立ち入り,甲を捜索し逮捕した行為について
 Xの事務所に立ち入り,甲を探す行為は,Xの事務所の平穏を害し,プライバシーも侵害するものであるから,強制捜査(法197条1項但書)たる捜索にあたる.よって,原則として捜索差押令状が必要である(法218条1項,憲法35条1項).
 もっとも,法220条1項1号は,例外的に,令状無しで逮捕に伴う被疑者の捜索を行うことを認めている.この場合には,被疑者の身柄確保の高度の必要性があり,捜索により侵害される平穏・プライバシーの利益に優越するからである.
 本件では,警察官は甲の現行犯逮捕に着手した後,甲が逃げ込んだのを現認しているXの事務所において,甲を捜索しているのであるから,同号の場合に当たる.よって,警察官の行為は適法である.
3 甲が隠れていた机の引出を開けて中を捜索した行為について
(1) 机の引出を開けて中を探す行為は,机の所有者のプライバシーを侵害する行為であって,捜索に当たる.よって,原則として捜索差押令状が必要である.また,机の引出の内部については,事務所自体とは別個のプライバシーの利益が存在するものと解され,また甲自身を捜索しているわけではないから,法220条1項1号により,机の引出の捜索が認められることもない.
(2) 甲の逮捕に伴い机の引出の捜索が行われていることから,法220条1項2号の捜索として適法とならないかが問題となる.
 法220条1項2号が逮捕の現場における捜索を認めている理由は,逮捕の現場には重要な証拠が存在する蓋然性が高いことから,捜索の必要性が高いことによる.また,逮捕により既に現場の平穏は侵害されているのであって,捜索をすることによって利益が侵害される程度が低いこともその理由である.
 このような点から,必要かつ相当な範囲で,逮捕の現場での捜索が認められる.
(3) 本件では,Xの事務所において甲が適法に逮捕されているのだから,場所的な平穏は,既に一定程度害されている.しかし,本件における甲の被疑事実は覚せい剤所持罪であって,重要な証拠である覚せい剤自体は既に警察官が発見している.警察官は,携帯電話を発見するために机の引出しを捜索しているのであるが,携帯電話は覚せい剤譲渡等罪については重要な証拠と言えるが,覚せい剤所持罪についての重要な証拠とは言えず,捜索の必要性を欠く.
 さらに,本件で捜索の対象者となっているXは,たまたま甲の逮捕現場に居合わせたに過ぎず,捜索を受忍させることを正当化しがたい.また,仮に携帯電話機が事務所内にあるとしても,甲の逮捕について利害関係を有しないXがこれを隠匿することは考えられない.警察官としては,後に令状発付(法218条1項)を経て,捜索すれば足りる.よって,捜索の相当性も欠く.
(4) 上記より,警察官がX事務所内の机の引き出しを捜索した行為は,違法である.
第2 乙に対する行為について
1 乙を逮捕した行為について
 甲と同様に覚せい剤所持罪の現行犯逮捕として適法である.
2 警察署内で乙の身体を捜索した行為について
(1) 身体の捜索も強制処分であるから,原則として令状(法218条1項)が必要である.令状無しで行われている本件捜索は,法220条1項2号により適法とならないかが問題となる.
(2) 本件捜索は,逮捕の場所からは1キロメートルほど離れた警察署内で行われており,「逮捕の現場」という要件を満たさないようにも思える.しかし,同号が令状なしの捜索を認めた趣旨は,上記のような必要性・相当性にあるのであって,必ずしも逮捕を行った場所で捜索した場合でなくても,それと同等の必要性・相当性が認められれば,捜索は適法といえる.
 本件では,乙が他にも覚せい剤を所持している等の可能性があり,捜索の必要性があった.また,逮捕を行った路上において,乙自身が暴れる等したことにより,野次馬が集まり捜索が困難になった事情があり,警察署に移動する必要性もあった.
 また,警察官は1キロメートルほど移動したに過ぎず,到着直後に捜索に着手していることから,時間的にも逮捕と近接している.また,捜索の対象が被疑者である乙自身であることから,他の者のプライバシーの利益を勘案する必要もなく,相当性も認められる.
(3) 上記より,乙に対する身体の捜索は適法である.
以上

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76行

構成16分,起案56分

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刑事訴訟法第2問


第1 総論
1 犯罪事実を認定するためには,厳格な証明によることが必要である(刑事訴訟法(以下,「法」とする)317条).厳格な証明とは,適式な証拠調手続を経た,証拠能力ある証拠による証明をいうのであるから,裁判所が本件メモを証拠として用いるためには,本件メモが証拠能力を有していることが必要となる.
2 ところで,本件メモは書面の意味内容が証拠となるものであるから,供述証拠に当たる.供述証拠は,供述者の知覚・記憶・叙述の各過程を経て証拠となるものであり,それぞれの過程について誤りが生じやすいという危険がある.
 そこで,公判廷における供述証拠は,裁判官が供述態度を観察し,反対尋問に曝され,供述者が偽証罪による威嚇を受けることで,これらの危険を減ずることとしている.他方,公判廷外における供述証拠,すなわち伝聞証拠について,その内容の真実性が問題になる場合には,これらの方法をとることができない.つまり,伝聞証拠には供述証拠の危険がそのまま残存することになる.よって,伝聞証拠には原則として証拠能力が認められず(法320条1項),法321条から328条により例外的に証拠能力が認められるにすぎない.
3 本件メモが伝聞証拠に当たり,証拠能力が否定されるかは,本件メモにより立証しようとする事実により異なる.そこで,以下では各論として,要証事実ごとに本件メモの証拠能力の有無を検討する.
第2 各論
1 本件メモにより甲が殺人・死体遺棄罪を実行したことを立証する場合
(1) そもそも,本件メモは「⑤明日,決行」という記載があることから,犯行後ではなく,計画段階で作成されたものである.したがって,本件メモには甲が犯罪を実行したことについての証明力がなく,かかる証拠を用いることは誤導的である.よって,本件メモには証拠能力が認められない.
(2) 仮に,本件メモに証明力を認めるとしても,その場合は,本件メモの記載内容の真実性が問題となるのだから,伝聞証拠に当たる.よって
2 本件メモにより,甲が本件メモ作成時に,殺人・死体遺棄罪を行う主観的意図を有していたことを立証する場合
(1) この場合に,本件メモが伝聞証拠と言えるかが問題である.
 犯行メモは作成者が記載内容と同一の意識状態であったことを立証するために用いられる場合には,供述証拠ではあるが伝聞証拠とはならない.この場合には,記載内容の真実性が問題になるのではない.また,作成者が知覚して記憶したことを叙述した,というわけでもなく,単純に自らの意識内容を叙述したに過ぎないからである.
 もっとも,叙述の過程は存在するのだから,この過程に誤りが生ずる可能性があり,これを排除する必要がある.すなわち,作成者がメモ作成に当たり,真摯な態度で臨んだことが必要になる.
(2) そこで,本件メモの作成について,甲に真摯性が認められるかを検討する.
 まず,本件メモは甲の手書きによるものであって,甲自身が作成したものである.また,甲の居宅において発見されたものであるから,他の者が改竄する等の可能性は低く,甲がことさらに自らに不利な虚偽の事実を書く動機もないことになり,作成の真摯性が推認される.
 さらに,本件メモの内容についてみると,Aの死体の状態,発見場所等について顕著な一致点を有し,犯人でなければ知り得ない情報が多く含まれている.これは,甲が自ら実行したことを示すものではないにせよ,甲が犯行の意図を有し,それが何らかの形で現実化したことを示すものである.よって,ここらも,作成の真摯性の推認を強めることができる.
 よって,本件メモの作成について,甲に真摯性が認められる.
(3) 上記より,本件メモは甲の犯罪実行についての主観的意図を立証するために用いることができる.
以上

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68行(うち,3行削除)

構成19分,起案64分


H22旧試民事訴訟法

2010-07-25 21:28:01 | 平成22年度旧司法試験論文再現
民事訴訟法第1問


第1 小問1について
1 Bの訴えの適法性について
(1) Bの訴えは債務不存在確認の訴えである.このような訴えの提起は,訴訟物の特定(民事訴訟法(以下,「法」とする.)133条2項2号)を欠くものでないかが問題となる.
 債務不存在確認訴訟は給付訴訟の反対形相として,被告が原告に対して有する債権を訴訟物とするものである.Bの申立においては,訴訟物はAのBに対する本件契約に基づく債権とされている.本件契約は,消費貸借契約に基づく債権であること,契約締結日,返済期日,債権額の形で明確にしており,債権の特定として十分である.
 よって,本件訴えは訴訟物の特定を欠くものではない.
(2) 次に,Bの訴えは確認の訴えなので,確認の利益を欠くのではないかが問題となる.
 確認の利益は,対象選択の適否,方法選択の適否,即時確定の利益の各観点から検討すべきである.本件では,AB間の債権を対象としている点は適切であり,債務者であるから確認訴訟を提起する他なく,方法の選択も適切である.また,AB間には債権関係に争いがあり,即時確定の利益もある.
 よって,Bの訴えは確認の利益を欠くものではない.
(3) 上記より,Bの訴え提起は適法である.
2 Aの訴えの適法性について
(1) Aの訴えはBの訴えと同一の債権について,別訴を提起し給付を求めるものであるから,二重起訴の禁止(法142条)に触れ,不適法でないかが問題となる.
(2) 二重起訴が禁止される理由は,応訴の負担を負う被告にとって迷惑であり,同一の紛争について審理しなければならない点で訴訟不経済であり,さらに各裁判所で異なる判決がなされ既判力に矛盾抵触が生ずるおそれがあるからである.このような趣旨から,二重起訴が禁止される同一の事件とは,①当事者の同一性,②審判対象の同一性,の2つの要件を満たす場合をいうものと解する.
 本件では,Bの前訴とAの後訴は,いずれもABを当事者とし,原告と被告が逆になったに過ぎないのだから,①当事者の同一性が認められる.また,Bの前訴とAの後訴は,いずれも本件契約に基づく貸金債権を訴訟物としており,②審判対象の同一性も認められる.
(3) よって,Aが200万円の支払いを別訴で請求することは,二重起訴の禁止に触れ不適法である.
第2 小問2(1)について
1 Bの訴えの適法性について
 小問1と同様に適法である.
2 Aの訴えの適法性について
(1) 小問1と同様にAの反訴(法146条1項)提起は,二重起訴の禁止に触れないかが問題となる.
(2) 小問1と同様に,Bの本訴とAの反訴は同一の事件についての訴えであるから,Aの反訴提起は二重起訴の禁止に触れるようにも思える.
 しかし,二重起訴の禁止の趣旨は,上述のように,被告の迷惑,訴訟不経済及び既判力の矛盾抵触の防止にある.本件でAは反訴を提起している.反訴が提起された場合,既にBが提起している本訴と同一の裁判所において,併合して審理されるから,上述の弊害が生ずることはない.
(3) よって,Aが反訴を提起する場合には二重起訴の禁止に触れない.
(4) AはBの本訴提起から20日後に反訴を提起しているのだから,これにより訴訟手続が著しく遅滞するとはいえない(法146条1項2号).その他反訴の訴訟要件に欠ける事情もない.
(5) 上記より,Aの反訴提起は適法である.
第3 小問2(2)について
1 Aの反訴の取下げは,訴えの取下げに当たる(法146条3項,261条1項).訴えの取下げにより,訴訟は最初から係属していなかったものとみなされる(法262条1項).そこで,口頭弁論をした後の訴えの取下げは,被告の本案判決を受ける事への期待を保護するために,被告の同意がない限り原則として認められない(法261条2項本文).
 しかし,本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げについては,反訴被告(本訴原告)の同意は例外的に不要である(法261条2項但書).本訴の取下げによって,通常,本訴原告(反訴被告)が本案判決を求めない意思が明確になったといえるから,重ねて反訴の取下げについて反訴被告(本訴原告)の同意を求める必要がないからである.
2 本件のAも,Bの本訴取下げ後に反訴を取り下げているから,法261条2項但書により,Bの異議にかかわらず反訴の取下げは有効であるようにも思える.
 しかし,本件ではBが本訴の取下げに当たって,本件契約に基づく債務の存在について本案判決を求めない趣旨ではなく,反訴が維持され棄却判決が出されることにより,債務の不存在が確認されることを求める趣旨を陳述している.よって,同但書の想定する場合とは異なる.
 そして,AはBのかかる陳述を聞いているのだから,信義則(法2条)上,反訴の取下げは認められない.
3 上記より,Aの反訴取下げは無効である.
以上

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83行

構成15分,起案55分

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民事訴訟法第2問


第1 小問1について
1 控訴の提起には,控訴の利益が必要である.本件では,1審で全部勝訴しているXに控訴の利益が認められるかが問題となる.
2 控訴は,1審の判決に対する控訴審への不服申立である.したがって,1審判決に対して不服のある当事者のみが控訴の利益を有することになる.そして,ここでいう不服とは,基準の明確性の観点から,1審で自らの申立よりも小なる判決をされたことによる形式的不服をいうものと解する.つまり,控訴の利益は1審の敗訴当事者にのみ認められるのが原則である.
 しかし,Xは1審で全部勝訴しているのであり,形式的不服はない.Xが控訴の提起に当たって,不服として申し立てているのは,遅延損害金を請求していなかった事による実質的不服に過ぎない.このような請求の拡張のみを目的とする控訴を認めることは,Yに無用の応訴負担を課すことになり,また遅延損害金の有無の判断について審級の利益を奪うことにもなる.Xは,別訴で遅延損害金を訴求すべきである.
3 上記より,Xの控訴は不適法である.
第2 小問2(1)について
1 控訴裁判所は,控訴審において審判対象となっている事項についてのみ判決をすることができる(法297条,246条).本件では,Yが控訴しているので,Yが1審で敗訴した主位的請求については控訴審に移審し,控訴裁判所は判決することができる.さらに,予備的請求についても移審し,判決ができるかが問題となる.
2(1) 控訴審は不服申立の限度においてのみ審理・判決することができる(法304条,296条1項).Yが1審に対して不服を申し立てているのは,主位的請求についてのみであるから,予備的請求は移審せず,審判対象にならないように思える.
 そうすると,控訴裁判所は主位的請求について認められないとの心証を抱いているから,1審判決を取消し,Xの請求を棄却する判決をすべきことになる.
(2) しかし,この結果はXにとって酷である.Xの予備的請求について,1審が判断していない以上,Xはこれに対して控訴することができない.そして,その他,予備的請求について控訴審に移審する方法がなく,Xは結局,予備的請求によって両負けを防ぐことができなくなってしまうからである.
 よって,Yによる主位的請求に対する控訴によって,予備的請求も控訴審に移審し,審判対象となると解すべきである.このように解しても,予備的請求について,1審において実質的に審理はなされていたと言えるから,Yの審級の利益を害することにもならない.
3 上記より,控訴裁判所は売買契約が無効との結論に達しているのだから,1審判決を取消した上で,主位的請求については請求を棄却し,予備的請求については請求を認容する判決をすべきである.
第3 小問2(2)について
1 Yの控訴によって,不服申立にかかる予備的請求については,控訴審に移審する.加えて,主位的請求についても移審するかが問題である.
2(1) 予備的請求のみが移審すると解すると,控訴裁判所は売買契約が有効という結論に達しているのだから,売買契約の無効を前提とする予備的請求は棄却すべきことになる.
(2) 上記の結論は,Xに両負けの結果をもたらすことになる.しかし,これは不当とは言えない.Xは1審において,主位的請求の全部棄却判決を受けているのだから,これについて形式的不服があり,控訴の提起が可能である.みずから主位的請求について控訴審に移審する方法を持ちながら,これを行わないことにより,両負けの結果に至ることは,Xの自己責任の問題に過ぎないから,これを不当ということはできないのである.
 かえって,本件で主位的請求についても控訴審に移審すると解すれば,控訴裁判所は,売買契約の有効であることを理由に,主位的請求を認容すべきことになる.しかし,これは控訴人であるYにとって,予備的請求を認容する1審判決よりも不利益る判決であり,不利益変更禁止の原則(法304条)に抵触することになる.
3 上記より,Xの予備的請求のみが控訴審に移審する.控訴裁判所は,売買契約が有効であるとの結論に達しているのだから,1審判決を取消し,Xの予備的請求を棄却する判決をすべきである.
以上

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70行

構成15分,起案52分


H22旧試刑法

2010-07-25 21:25:23 | 平成22年度旧司法試験論文再現
刑法第1問


第1 甲の罪責について
1 バールを持ってA社の前まで来た行為について
(1) 甲は乙とA社に対する窃盗(刑法235条)を共謀した上,バールを持ち窃盗の準備をしてA社の前まで来ている.甲は結局,A社から財物を窃取しておらず,窃盗は既遂とならないが,実行の着手(刑法43条)があったとして,窃盗罪の未遂(刑法243条)が成立しないかが問題となる.
(2) 未遂犯は結果発生の危険を生じさせる行為を罰するものであるから,形式的に実行行為に着手していなくても,結果発生の具体的危険を発生させれば,実行の着手が認められる.
 本件では,甲は,物色行為はおろか,A社内にすら入っておらず,窃盗の結果発生の具体的危険が発生したとは言えない.
(3) よって,甲の行為は,窃盗罪の未遂とはならない.
2 甲が窃盗の目的でB社建物に侵入した行為について
 正当な理由なく人の看守する建造物に侵入したものと言えるから,建造物侵入罪(刑法130条)が成立する.
3 B社建物の金庫から現金を盗んだ行為について
 他人の財物を窃取しているから,窃盗罪(刑法235条)が成立する.
4 B社内で書類の束に点火させた上,これを放置して立ち去り,B社を全焼させた行為について
(1) 甲は,過失により,机の上に積まれていた書類の束に手を触れ,石油ストーブの上に落としたのだから,失火罪(刑法116条1項)が成立しうる.さらに,甲は消火のための措置をとらず立ち去っているので,これについて非現住建造物放火罪(刑法109条1項)が成立しないかが問題となる.
(2) 消火のための措置をとらず立ち去ることは,放火罪との関係では不作為に当たる.そして,放火罪は作為犯の形式で構成要件を定めていることから,かかる不作為は,原則として放火罪の構成要件に該当することはない.
 しかし,不作為も行為であり,かかる行為者に保障人的地位に基づく作為義務への違反がある場合には,不作為を作為と同視することができる.そして,保障人的地位は行為者が結果発生の原因を支配していたと評価される場合に認められる.
(3) そこで,本件の甲に結果発生の原因支配が存在するかについて検討する.
 まず,甲は自ら書類の束に引火させ,放火罪の既遂結果発生に至る危険を過失により惹起した者である.そして,当時,B社建物内には甲以外の者はおらず,また火は床に燃え移る前であり,消火器によって容易に消火が可能であったのだから,結果の発生は甲の行動如何によっていた.そして,このような事情を甲自身が認識していたのである.
 よって,甲には結果発生の原因支配があり,消火せずに立ち去ったことは,保障人的地位に基づく作為義務違反であり,甲の行為に非現住建造物放火罪が成立する.
(4) なお,後述のように,甲の立ち去り後に丙の行為が介入している.しかし,丙の行為の介入は,床に燃え移った後であり,既に独立燃焼に至っていることから既遂には達しており,甲の行為と結果との因果関係は切断されない.
5 よって,甲には①建造物侵入罪(刑法130条),②窃盗罪(刑法235条)及び③非現住建造物放火罪(刑法109条1項)のそれぞれについて単独犯が成立する.①及び②は目的手段の関係にあるので,牽連犯(刑法54条1項後段)となる.他方,③は偶発的に発生したものであり,①と目的手段の関係にない.よって,③との関係では併合罪(刑法45条)となる.
第2 乙の罪責について
1 甲がバールを持ってA社の前まで来た行為について
 甲乙間には窃盗の共謀があるが,実行犯である甲について実行の着手がないことから,乙についても犯罪は成立しない.
2 甲がB社建物へ侵入し,窃盗をした行為について
(1) 甲乙間にはA社に対する建造物侵入及び窃盗の共謀があるが,甲が現実に建造物侵入及び窃盗を行ったのはB社に対してである.そこで,乙に共謀共同正犯(刑法60条)が成立するかが,甲乙間の共謀と甲の行為との間に因果性があるか,因果性があるとして乙の故意との間の錯誤をどう処理するかという点から問題となる.
(2) そもそも,共同正犯が他の共同正犯者の行為についても罪責を負うのは,他の共同正犯者の行為による結果惹起についても因果性を及ぼしているからである(因果的共犯論).
 本件で,乙が甲に対して与えた因果性は,甲の窃盗を心理的に促進したこと,及びA社通用口の鍵を開けることにより物理的に促進したこと,にある.甲がかつてA社で働いており,乙が現にA社の従業員であることから,この共謀はA社に対する建造物侵入及び窃盗に限定されたものだといえる.しかし,甲は独自の意思決定によりB社に侵入し窃盗を行ったのであるから,乙に因果性はなく,錯誤を論ずるまでもない.
3 よって,乙は無罪である.
第3 丙の罪責について
1 ストーブの火を消し忘れ,これを消すためにB社に戻った際,火事を発見したのを放置して立ち去った行為について
(1) 甲と同様に,失火罪は成立しうるが,さらに非現住建造物放火罪が成立するかが問題となる.
 丙も,甲と同様の状況にあったのだから,結果発生の原因支配が認められ,非現住建造物放火罪が成立する.もっとも,丙の関与は甲の不作為による火災が独立燃焼に達し,放火が既遂となった後にこれを促進したに過ぎないから,幇助犯(刑法62条1項)が成立するにとどまる.
以上
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88行
構成20分 起案63分

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刑法第2問



第1 甲がBから20万円を受け取った行為について
1 甲は,オーダースーツと偽って,Bに既製品のスーツを渡して20万円を代金として受け取っているので,詐欺罪(刑法246条1項)が成立しないかが問題となる.
2 前提として,甲は7万円を内金として,13万円を代金残額として,別の機会に交付を受けていることから,それぞれについて別の財産犯が成立するようにも思える.
 しかし,両者はオーダースーツの購入という一つの目的に向けられたものである.さらに,4週間という短期間に交付されたものである.これらからすれば,両者によって侵害されるBの財産的法益は同一のものといえ,これらは包括的に一つの財産犯を成立させるにとどまるものと解すべきである.
 よって,以下では両者を区別することなく,甲が20万円の交付を受けたことについて,包括的に詐欺罪が成立するか,を検討することとする.

第1 甲がBから預託を受けたオーダースーツの内金7万円をパチンコに費消した行為について
1 甲の行為は,Bが内金として預託した金銭を別の使途に用いたものであるから,業務上横領罪(刑法253条)が成立しないかが問題となる.
2 甲は,紳士服の専門店として業務上占有するオーダースーツの内金7万円を,パチンコに費消している.7万円はBの所有にかかる金銭であり,Bはオーダースーツ購入の際に甲が代金に充てることを信任して,甲に委託している.そして,パチンコへの費消は金銭の所有者でなければできない行為であり,不法領得の意思の発現たる行為といえ,領得行為に該当する.
3 よって,甲には内金7万円について業務上横領罪が成立する.
第2 甲がBからオーダースーツの代金残額として13万円の交付を受けた行為について
1 甲はオーダースーツと偽って,既製品のスーツを渡し,その代金の残額としてBから13万円を受け取っているので,詐欺罪(刑法246条1項)の成否が問題となる.
2(1) スーツの売買契約において,商品が既製品かオーダースーツかは重要な要素であるから,甲の行為は欺罔行為に当たる.そして,この欺罔行為によりBは既製品のスーツをオーダースーツと誤信して,13万円を交付している.オーダースーツでないと知っていればBは代金を支払わなかったであろうから,一連の事実経過には因果関係がある.
(2) それでは,Bには財産的損害が発生したか.
 本件では,Bは20万円を支払って販売価格20万円のスーツを購入できており,経済的損失はない.また,Bは既製品のスーツに満足しているから,心理的損失もない.よって,結果として財産的損害は発生していないようにも思える.
 しかし,詐欺罪は,金銭を交換価値として特定の使途に用いることにより得られる満足感をも保護しているものと解される.そして,オーダースーツの購入は,それが自己のために作られたという事実に対する満足感をも目的とするものである.Bは購入したスーツが既製品であることを知れば,満足感を得ることができないのだから,財産的損害の発生を観念できる.
3 よって,甲には詐欺罪が成立する.
第3 甲が倉庫から既製品のスーツを持ち出した行為について
1 甲はA社の倉庫を統括管理するCに虚偽の事実を申し向け,A社所有の既製品のスーツの交付を受けたのだから,詐欺罪(刑法246条1項)が成立しないかが問題となる.
2(1) 甲がCに対して,写真撮影のためと虚偽の事実を告げたことは欺罔行為に当たり,Cは錯誤に陥っている.
(2) Cは甲に対して,すぐ返すように念を押してスーツを持ち出すことを認めており,交付行為が存在しないのではないかが問題となる.
 しかし,Cは特に時間を限定する等の措置も講じずに,甲に対して,徒歩数分の場所にある店舗までの持ち出しを認めているのだから,Cに対して,一定の時間,スーツの占有を移す意図があったと言える.よって,交付行為は存在する.
(3) 上記の一連の事実経過は因果関係により連結されている.また,CはA社倉庫の統括管理者だから,Cに対する欺罔行為により,A社に財産的損害が発生している本件において,三角詐欺が成立するとみて妨げない.
3 上記より,甲には詐欺罪が成立する.
第4 罪数
 甲には,Bに対する業務上横領罪,詐欺罪,及びA社に対する詐欺罪の3罪が成立し,すべて併合罪(刑法45条)となる
以上

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76行(うち,15行を削除)

構成18分,起案57分



H22旧試商法

2010-07-25 21:21:56 | 平成22年度旧司法試験論文再現
商法第1問


第1 小問1について
1 株主は,株式会社から剰余金の配当を受けることができる(会社法(以下,「法」とする)453条).そして,Y社は,かかる剰余金配当請求権行使についての基準日を毎年3月31日と定めている.
 よって,XがY社に対して剰余金配当請求権を行使して,本件剰余金の支払いを求めるためには,平成22年3月31日の基準日時点に株主名簿に登録された株主であったことを主張し,又はその他の方法によって,自らがY社の株主であり,その地位をY社に対抗できることを示す必要がある.
2(1) 本問では,Xは従前株主であったが,平成22年3月10日に,Aに対して本件譲渡を行った.しかし,本件譲渡は譲渡制限に反し,無効でないか,が問題となる.もし,無効であるならば,Xは平成22年3月31日現在の株主であり,しかも本件譲渡に伴い株主名簿が書き換えられているわけではないから,名簿上もXが株主となり,Xは基準日株主として,本件剰余金の支払いを求めることができるからである.
(2) そもそも株式の譲渡制限(法107条1項1号)は,同族的な株式会社において,部外者が株主となり経営することを防ぎ,同族性を保つために用いられる制度である.この点で,もっぱら会社を保護するための制度である.よって,譲渡制限株式の譲渡も,譲渡当事者間では有効であり,会社に対抗できないというに過ぎないと解すべきである.
 よって,本件譲渡は,XA間では有効である.
(3) さらに,本件譲渡はXやAからYに対してその効力を主張することはできないが,Yが自らのリスクでこれを認めるのは妨げない.Yが自ら譲渡を認める以上,部外者が株主となることからYを保護する意味はないからである.
 本件譲渡を認めたのは,譲渡等の承認権者である取締役会(法139条1項)ではなく,代表取締役Bであり,承認には瑕疵がある.しかし,会社の代表権を有する(法47条1項)代表取締役が承認した以上,承認は外形的には有効である.このような内部的な瑕疵を譲渡の当事者であるXが主張することは許されない.
(4) よって,Xは基準日株主とは言えない.
3 その他,Xが本件剰余金の配当支払請求権を有する事情もないので,Xは本件剰余金の支払いを求めることはできない.
第2 小問2について
1 Xは平成22年3月31日の基準日時点で株主であり,株主名簿上も株主として記載されている.よって,基準日株主として本件剰余金の支払いを求めることができるのが原則である.
2 本件では,基準日後の平成22年4月1日にXからAに本件譲渡がなされている.そこで,法124条4項により,Y社はAを本件剰余金の配当請求権者と認めることができ,Xの請求を否定できるのではないかが問題となる.
 しかし,本件で問題となっている株主の権利は,剰余金配当請求権であり,法124条4項に規定される議決権ではない.また,Xは基準日株主であることから,剰余金配当請求権を有するのであって,Xの請求を否定することは同項但書にも抵触する.
 よって,Y社がAに剰余金配当請求権を認めることはできない.
3 上記より,原則通り,XはY社に対して本件剰余金の支払いを請求することができる.
第3 小問3について
1 Aは,平成22年3月31日の基準日時点の株主であって,同月15日の名簿書き換えによって,株主名簿上も株主となっている基準日株主である.よって,Y社によるAへの本件剰余金の配当は有効であって,XのY社に対する本件剰余金の支払請求は認められないのが原則である.
2 しかし,Xは民法9条により,本件譲渡を取消している.取消により本件譲渡は最初から無効であったことになるから(民法121条),Xは平成22年3月10日から引き続いて本件株式について株主であったことになる.そして,行為無能力を理由とする取消には第三者保護規定が存在しないので,XはY社に対して取消を主張できる.
 よって,XはY社に対して,本件剰余金の支払いを請求することができる.
3 もっとも,本件剰余金がAに支払われた当時には,Aは基準日株主であったのであるから,剰余金配当請求権の準占有者(民法478条)に該当する.Y社がXの行為無能力について善意無過失の場合には,Aへの本件剰余金の支払いを有効なものとみなすことができ,Xによる本件剰余金の支払請求は認められない.
以上

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75行

構成19分,起案59分
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商法第2問



第1 請求の根拠について
 XはYに対し,手形法(以下,「法」とする.)77号1項1号,15号1項に基づく裏書人の担保責任を根拠に,手形金の支払いを請求するものである.Yは拒絶証書の作成を免除しているので,拒絶証書によらず遡求が可能である(法77条1項4号,43条柱書,46条1項).これに対して,Yは何が主張できるかが問題となる.
第2 手形の振出無効の主張について
1 手形の振出が無効である場合には,手形は紙片に過ぎず,これに署名した裏書人も担保責任を負わない.本件手形は,約束手形の必要的記載事項である振出日及び満期(法75条3号,6号)の記載を欠くことから,Yは手形の振出の無効を主張することが考えられる.
 しかし,本件のように貸付金の返済を担保するために手形が交付される場合等,手形要件を欠いた状態で手形を発行する社会的必要があり,要件欠缺の手形をすべて無効とすべきではない.そこで,手形要件の一部を欠くものの,振出と同時に白地補充権が授与され,少なくとも一つの署名がなされている場合は,白地手形として有効に成立するものと解する.
 本件手形は,振出人たるA社の代表取締役であるBがYと合意の上,貸付金の担保のために振り出されており白地補充権が授与されていると考えられ,またBがA社を代表して署名していると考えられるから,白地手形として有効である.Yの主張は認められない.
2 そうであっても,A社は本件手形の振出について取締役会の承認を受けていない.そこで,本件手形の振出が「多額の借財」(会社法362条4項2号)に当たり,B限りで振り出したことから,無効とならないかが問題となる.
 約束手形の振出は,貸付金の返済を確保するためであっても,貸金債務とは別個の手形債務を負担する行為であるから,借財に当たる.そして,A社が3000万円の貸金について取締役会の決定をしたことは,多額の借財に当たることを理由としたものと考えられるので,3000万円を手形金額とする約束手形の振出も多額の借財に当たると解される.よって,代表取締役Bが取締役会の承認を得ずして行った本件手形の振出は,内部的には無効の行為である.
 しかし,本件手形を振り出したBはA社を代表する(会社法47条1項)代表取締役であり,取引の相手方による,Bの代表権への信頼を保護する必要がある.そこで,A社が取締役会決議を経ていなかったことは,A社の内部的意思決定に瑕疵があるに過ぎず,民法93条但書の類推により,善意無過失の相手方に対しては,本件手形の振出の無効を主張できないものと解する.
 なお,本件手形は,手形面上の受取人はYであるが,実質的な受取人はXであるので,Xについて善意無過失を考えるべきである.
3 上記より,Yは,Aが本件手形の振出について取締役会決議を欠いていることにつきXが悪意又は有過失の場合には,本件手形の振出が無効であるとして,手形金の支払請求を拒むことができる.
第3 時効消滅の主張について
1 Yは本件手形に基づく手形金債権の時効消滅を主張することが考えられる.
 約束手形に基づく手形金債権は,満期より3年が経過することにより,時効消滅する(法77条1項8号,70条).これは,満期以外が白地の白地手形についても同様である.しかし,本件手形は満期が白地であるので,どの時点で時効が完成するかが問題となる.
2 満期が白地の白地手形については,白地手形の作成時に授与される白地補充権の時効消滅をもって,手形上の債権も時効消滅するものと解する.そして,白地補充権の授与は手形に関する行為であり,絶対的商行為(商法501条4号)であるから,白地補充権は5年で時効消滅する(商法522条)ものと解する.
 次に時効の起算点(民法166条1項)について検討する.本件手形は平成16年12月20日に振り出されているが,XA間の合意によって,本件手形は,Xが貸付金の利息の支払いを怠ったときに初めて行使可能とされている.よって,平成19年8月にXが貸付金の利息を支払うことができなくなったときが時効の起算点となる.
 なお,XA間の貸付金に関する合意は手形外の合意であるが,YはA社の取締役であり,かかる事情につき悪意と考えられるので,これを斟酌できる(法17条参照).
3 Xは白地補充権が時効消滅する前の平成22年4月9日に白地を補充している.白地補充後の手形の時効期間は満期である平成22年5月10日から3年となるので,未だ本件手形に基づく手形金債権は時効消滅していない.よって,Yは時効を理由に手形金の支払請求を拒めない.
以上


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76行

構成18分
起案61分