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H23新試論文答案の再現

2011-06-08 15:25:20 | 平成23年度新司法試験論文再現
2011年5月11日から15日にかけて行われた第6回新司法試験の再現答案を載せました。
本来もう少し早く載せるつもりでしたが,作成自体が5月31日にやっと完了し,さらにその後1週間ネット環境がなかったので,本日載せることになりました。

 本番では2時間の試験のうち45~50分くらいかけて答案構成したので,答案構成用紙に残っている下書きの情報量は多く,その意味では再現度は高そうです。ただ,2週間かけて,試験を受けた順にだらだら再現答案を作ったので,特に刑事系は何を書いたか記憶が残っておらず,環境法→公法系→民事系→刑事系の順に再現度は落ちると思います。
 分量に関しては,設問ごとに何行書いたか答案構成用紙にメモしており,私の標準的な字数である1行28字(環境法のみ38字)にWordのページ設定をした上で作成しているので,かなり正確だと思います。
 1に丸,2に丸,等の機種依存文字が表示されない場合はご容赦下さい。

 試験直後は憲法と商法の出来が心配だったのですが,再現答案を作成した結果,全科目の出来が心配になってしまいました。よくいえば,閲覧される方が(こんなにダメなやつもいるのだと)安心できる答案になっていると思います。。


 本来,Wセミに提出するつもりだったのですが,細かくコメントをつけて提出せねばならないようで,それが私の能力的に不可能だったため提出を断念しました。なので,心おきなくブログに載せることにします。その方が多くの人の目に触れるでしょうし。

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 8月になり,発表まで約1ヶ月となりました。そろそろ現実に向き合わなきゃな(=試験勉強を始めなきゃな)ということで,まずは自分の再現答案と向き合うことにしました。
 辰已が割と詳しい論文式試験の速報を出しているので,これと自分の答案を見比べながら,反省点を取り上げて,いろいろ言い訳がましく書いてみました。本試験の出題趣旨を見てからだと,バイアスがかかってしまう気がしたので,今のうちにやっておきました。

2011/08/06 追記

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 先日,新司法試験の合格発表があり,無事に合格していました。以下の答案は,(一応)合格答案として見ていただいて結構です。
 ただ短答での貯金が大きい(295点)ので,論文だけだと2500番くらいの可能性もあります。。まぁ,合格ギリギリの答案の方が書籍の形で出回らないので,希少価値があるとも言えるでしょう。
 いずれにせよ,ブログを見ていただいた方への恩返しとして,順位がわかったら追って報告します。

2011/09/12 追記

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 本日,新司法試験の合格通知書及び成績通知書が送付されてきました。

公法系科目 161.57 (2位/5654人)
民事系科目 200.79 (113~120位/5654人)
刑事系科目 139.07 (51~58位/5654人)
選択科目(環境法) 58.31 (24~28位/292人)
論文合計点 559.75(5位/5654人)
総合得点 1127.06(3位/5272人)



 という非常にいい点数だったので,再現答案を是非お役立て下さい!

2011/09/20 追記

H23新試 刑事系 第2問

2011-06-08 15:23:05 | 平成23年度新司法試験論文再現
刑事系 第2問

第1 [設問1]について
1 逮捕①及びこれに引き続く身体拘束について
(1)逮捕①について
ア 逮捕①は通常逮捕(刑事訴訟法(以下,「法」とする。)199条1項)である。通常逮捕が適法であるためには,逮捕の理由と必要性があることを要する。
イ 逮捕の理由とは,罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由(法199条1項)をいう。より重い本件の取調を目的として,軽い別件について逮捕を行う場合,いずれを基準に逮捕の要件を判断すべきかが問題となる。別件について令状請求を受けた裁判官は本件の存在について認識しないのが通常であり,別件について逮捕の要件が充足している場合に逮捕を否定すべきでないから,別件を基準に判断すべきである。
 逮捕①はV女殺害を本件として取り調べる目的で,Pが別件たる強盗事件を理由に逮捕状を請求したものである。しかし,強盗事件についても甲は犯人の1名に酷似しており,被害者Wも甲が犯人の1人に間違いないと供述しているのだから,罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある。
 よって,逮捕の理由がある。
ウ 逮捕の必要性とは,短期の身柄拘束という制約を行う必要性を指す。逮捕の理由があれば原則として認められ,刑事訴訟規則143条の3の場合等特別な場合に否定される。
 強盗事件は,5年以上の有期懲役が法定されている(刑法236条1項)重大事犯であり,逃亡のおそれも否定できない。
 よって,逮捕の必要性も認められる。
エ 以上より,逮捕①は適法である。
(2) 身体拘束について
ア 甲は逮捕①に引き続き5月12日に勾留(法207条1項,60条1項)されている。勾留が適法であるためには,勾留の理由と必要性があることを要する。
イ 勾留の理由とは,法60条1項各号列挙の事由を指す。法は逮捕前置主義をとり,逮捕と勾留の二段階で裁判官の審査を行い,人権保障を図っているのだから,専ら余罪について取り調べる目的の場合,勾留の理由を欠くというべきである。
 被疑事実である強盗は重大事犯であり,甲は否認しているのだから,法60条1項2号3号の事由がある。そして余罪取調べについては,15日に余罪の有無について確認したほか,17日以降1日約30分間ずつ上申書及び供述録取書の作成に応じるよう説得している。これらの余罪取調べは被疑事実である強盗事件について中心的に聴取しながら,付随的に行われたに過ぎず,専ら余罪取調べ目的で勾留がなされたとはいえない。
 よって,勾留の理由がある。
ウ 勾留の必要性は,勾留の理由がある限り原則として認められ,軽罪の場合や特別な事情がある場合に限り否定される。
 強盗事件は重罪で,特別な事情もなく,勾留の必要性がある。
エ 以上より,勾留は適法である。
(3) 逮捕①及びこれに引き続く身体拘束は適法である。
2 逮捕②及びこれに引き続く身体拘束について
(1) 逮捕②について
ア 逮捕②の現行犯逮捕(法212条1項,213条)には,犯罪の明白性と時間的場所的近接性及び逮捕の必要性を要する。
イ Qは乙による万引きの様子を現認しており,犯罪事実及び犯人が明らかであり,犯罪の明白性がある。
ウ 乙は現場であるスーパーをでたところで呼び止められ,逮捕されているので,犯罪との時間的場所的近接性がある。
エ 500円の窃盗は軽微な罪といえるが,乙は呼び止められた後,逃走を図っているので,逮捕の必要性がある。
オ よって,逮捕②は適法である。
(2) 身体拘束について
ア 乙の勾留について,勾留の理由と必要性があるか。
イ 犯行は明白で証拠隠滅の余地もないので法60条1項2号の事由はない。同項3号の逃亡のおそれはある。余罪は15日に確認したのみで取り調べていない。勾留の理由はある。
ウ 軽微な罪であるが,乙は20日に至るまで被害弁償しなかったのだから,その時まで勾留する必要性はあった。
エ よって,勾留は適法である。
(3) 逮捕②及びこれに引き続く身体拘束は適法である。
3 逮捕③,④及びこれに引き続く身体拘束について
(1) 逮捕について
ア 逮捕③,④について,逮捕の理由と必要性を検討する。
イ 甲の携帯電話から,メール②-1,2の交信記録が残っており,甲がV女の死体遺棄へ関与したことがうかがわれる。さらに,甲は逮捕①に伴う勾留中の取調べにおいて,同女殺害及び死体遺棄について認める供述をしている。甲には殺人及び死体遺棄を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある。
 乙のパソコンからも,甲と同様にメール②-1,2と同様の交信記録が存在しており,甲の殺人及び死体遺棄に加功したと疑うに足りる相当な理由がある。
 よって,逮捕③,④ともに逮捕の理由がある。
ウ 逮捕の必要性を否定する事情もない。
エ 以上より,逮捕③,④は適法である。
(2) 身体拘束について
ア 甲及び乙は5月23日に勾留されているので,勾留の理由と必要性があるか検討する。
イ 被疑事実は殺人及び死体遺棄と重大であり,逃亡のおそれ(法60条1項3号)がある。また,未だ証拠も完全には揃っていないのだから,罪証隠滅のおそれもある(同項2号)。
ウ 勾留は行動の自由を制約する重大な強制処分であるから,事情の変化もないのに繰り返して行われることは許されず,繰り返しに当たる場合は勾留の必要性を否定すべきである。
 甲は,逮捕①に続く勾留において,殺人及び死体遺棄について説得されているが,1日約30分間ずつ5日間継続されただけである。乙は殺人及び死体遺棄について取調べられていない。両者を殺人及び死体遺棄で勾留することは繰返しとはいえない。
 よって,勾留の必要性もある。
エ 以上より,勾留も適法である。
(3) 逮捕③④及びこれらに引き続く身体拘束は適法である。
第2 [設問2]について
1 平成22年5月3日づけの捜査報告書(以下,「報告書1」とする。)について
(1)ア 報告書1は書面であるので,法320条1項により伝聞証拠として証拠能力が否定されないかが問題となる。
イ 法320条1項が伝聞証拠の証拠能力を否定するのは,伝聞証拠においては,知覚・記憶・叙述の各過程に誤りが生じやすいという供述証拠の危険性を,宣誓や供述態度の観察,反対尋問によって除去できないからである。そこで,内容の真実性が問題になる場合に書面は伝聞証拠となるというべきである。
ウ 殺人の被疑事実に関しては,甲及び乙がBに話し,それをBがメールの形で文書化し,さらにPがそのデータを解析し報告書1を作成したものである。殺人の犯罪事実を立証するためには内容が真実である必要があるので,三重に伝聞である。
 死体遺棄の被疑事実に関しては,Bが甲及び乙とともに自らが体験した死体遺棄をメールの形で文書化し,Pがデータを解析して報告書1を作成したものである。殺人の被疑事実と同様に内容が真実であることを要するので,二重に伝聞である。
エ よって,報告書1は,法321条から328条に当たらない限り,法320条1項により証拠能力が否定される。
(2) 甲及び乙の弁護人は不同意の意見を述べているので,法326条の伝聞例外には当たらない。
(3) 報告書1全体は,Pによる無令状の検証の結果を記載した書面である。法321条3項の伝聞例外は認められないか。
 法321条3項が強制処分としての検証調書について伝聞例外を認めている理由は,検証が機械的な作業であり誤りが生じにくい点,検証に当たった司法警察職員等が一から公判廷で供述するよりも,正確性や内容の充実度の点から証拠価値のある証拠が得られる点にある。無令状の検証は,強制がないという点以外は強制処分としての検証と同内容であるから,無令状の検証の結果を記載した書面についても同様の理由が妥当する。
 よって,同項の準用が可能である。
(4) 殺人の犯罪事実について
ア 甲及び乙がBに対して話し,Bがこれをメールにするという2つの伝聞過程が残る。それぞれについて伝聞例外があれば,報告書1を殺人の犯罪事実の証拠として用いることができる。
イ Bは被告人ではないので,Bがメールにするという伝聞過程は,法321条1項3号の要件を満たせばクリアできる。
 BのパソコンはBのみが使用し,交際中のAにすら触れさせなかったものであるから,メールはB自身が作成したものといえる。よって,法321条1項柱書の供述書に当たる。
 Bは死亡しているので,供述不能といえる。
 甲及び乙は黙秘しており,犯行の具体的態様を証明するためには,メール①の内容が必要不可欠である。
 同項3号の特信情況は絶対的特信情況を指し,公判廷における供述と同等の信用性の情況的保障を要する。パソコンは自室でBのみが使用していたものであり,信頼していたA女に対してBが虚偽の事実を述べる動機はない。そうすると,公判廷における供述と同等の絶対的特信情況を認めることができる。
 以上より,Bがメールにするという伝聞過程はクリアできる。
ウ 被告人甲及び乙がBに語った伝聞過程は,法322条1項の要件を満たせばクリアできる。
 V女を殺した事実は,甲及び乙にとって刑事訴追を受けうる不利益な事実に当たる。そして,死体遺棄について協力をうるべきBに対して虚偽の事実を告げる理由はなく,甲及び乙は自発的にBに語っているので,任意性もある。
 以上より,甲及び乙がBに語った伝聞過程もクリアできる。
(5) 死体遺棄の犯罪事実について
ア Bがメールにしたという伝聞過程のみが残る。共犯者Bは被告人ではないので,法321条1項3号の要件を満たせばクリアできる。殺人についてと同様にこれは認められる。
イ さらに,死体遺棄についてはBにとっても不利益な事実である。法322条1項の自白法則は虚偽のおそれのある自白を排除する趣旨であるから,被告人でないBについても任意性がある場合に限り証拠能力を認めるべきである。
 本件では,Bは自発的にA女にメールして,虚偽を告げる動機もない。メールの内容は1時間かかったことや疲れたことなど迫真性を有する。よって,任意性がある。
(6) まとめ
 報告書1は,殺人及び死体遺棄の犯罪事実のいずれについても,法321条3項に基づき,Pに対して名義の真正及び記載内容の真正について尋問すれば証拠能力が認められる。
2 5月12日付の捜査報告書(以下,「報告書2」とする。)について
(1)ア 報告書2も書面なので,伝聞証拠か否か検討する。
イ 報告書2による要証事実は,甲B間における死体遺棄の共謀の存在と,殺人の事実であると考えられる。
 Pが携帯電話の内容を報告書2に記した点は,携帯電話に記載どおりのメールが本当に存在したかが問題なので,伝聞といえる。しかし,Bによる「死体を埋めた報酬を払え」というメールに対し,甲が「払う」と応えており,両者で話が通じていること自体により,共謀の立証は可能であるから,甲及びBがメールを作成した過程は非伝聞といえる。
(2) 法321条3項の尋問のみにより証拠能力を有する。
以上


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8頁の20行目まで

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反省点

【設問1】逮捕①
・逮捕の理由のところで,別件を基準にすると書いていますが,これは逮捕の必要についても同様のはずなので,別件基準か本件基準かは,もっと前の方で書いておくべきでした。
・辰已の速報には書いてありませんが,別件基準説をとっても,余罪取調べ目的の勾留は違法になりえますよね。。そうでなかったらまずいなぁ。

【設問1】逮捕②
・現認したQと逮捕したPが違うことには気付きませんでした。本試験でも誤植ってあるんですね。。
・勾留について,前科と単身であることは書けませんでした。問題文をしっかり読まないといけませんね。

【設問1】逮捕③④
・別件捜索差押えは気付きませんでした。
・なんか,スカスカな答案です。

【設問2】資料1
・これも辰已の速報の言っている意味がちょっとわからないのですが,印刷過程は科学的・機械的作用だから,非供述証拠に当たり,捜査報告書自体について321条3項の準用は不要という趣旨でしょうか。その上で,殺人は再伝聞,死体遺棄は単純な伝聞,としているようです。ただ,「二重伝聞なので,321条3項,324条1項,322条1項の準用が必要」という風に辰已の速報に書いてありますが,これは「321条1項3号,324条1項,322条1項」の誤りなんじゃないかな,と思います。
 まぁ,私がすごい勘違いをしている可能性も高いですが。
・私は,捜査報告書自体について321条3項の準用も必要だと考えて,その上でさらに,殺人については甲乙とBとの二重の伝聞過程が,死体遺棄についてはBの1つの伝聞過程が残るという風に書いています。ただ,再伝聞について,324条を書いていないという,なかなかにまずそうなミスをしています。
・死体遺棄について,321条1項3号だけでなく,322条1項も書いたのは,松尾(下)82頁を少し前にやっていて,なるほどと思ったからです。これをどうしても書きたくなって,書いてしまったら,資料2のスペースがなくなりました。

【設問2】資料2
・答案構成のとき,この設問にたどりついた時点で40分を過ぎていました。既に答案構成用紙の表裏を使い切っていたことから答案を書く時間も75分は必要だと考えて,5分で構成が終わるように,なんとか非伝聞の筋でまとめて書きました。
・辰已の速報を見ると,伝聞ですか・・・しかし,これをどうやって時間内にまとめればいいんでしょう。。

【全体的に】
・最後3頁くらいは,1頁当たり8分くらいでとにかく書きまくりました。論文式試験最後の科目だからこそ無理できました。
・法律の能力ではなく,字を書く能力を求められている気すらしました。

2011/08/06 追記

H23新試 刑事系 第1問

2011-06-08 15:22:06 | 平成23年度新司法試験論文再現
刑事系 第1問

第1 甲の罪責について
1(1) 甲は歩道上で乙及び丙に対して,蛇行運転によって乙に対して,暴行を加えている。これらの行為を一個の行為と見るべきか,別個のものと見るべきか,まず検討する。
(2) 行為の個数については,その客観的側面と主観的側面から,一体のものといえるかどうかにより判断すべきである。
(3) 歩道上での一連の暴行は,同一の場所で行われ,甲が優勢な形で行われたものであり,客観的に一体と言える。そして,甲乙間の喧嘩に伴うものとして甲は認識していたといえるから,主観的にも一体のものといえる。
 甲の蛇行運転による暴行は,歩道とは場所的に離れており,乙単独に対するものである点で歩道上の暴行とは形勢を異にし,客観的に一体とはいえない。また,甲は専ら乙から逃げる意図で蛇行運転を開始しており,喧嘩に伴う歩道上の暴行とは主観的にも一体とはいえない。
(4) 以上より,歩道上の一連の暴行は一個の行為として,蛇行運転による暴行はそれとは別の行為と見るべきである。
2 歩道上での暴行について
(1) 甲は乙と肩が接触したトラブルから,乙及び丙に対して,暴行の故意をもって手拳で殴打し蹴る等の暴行を加え,乙及び丙にそれぞれ加療約1ヶ月,約1週間の怪我を負わせている。これは,傷害罪(刑法204条)の構成要件に当たる。
(2)ア 甲は乙とのにらみ合いに続いて,乙及び丙に対する暴行を加えている。このような喧嘩闘争の場合でも正当防衛が成立するかが問題である。
 喧嘩であるからといって一律に正当防衛を否定することは喧嘩の様々なパターンを考慮できない点で不当であり,喧嘩にも全体的に観察した上で正当防衛(刑法36条1項)が成立する余地を認めるべきである。そこで,その要件を検討する。
イ 正当防衛が成立するためには,急迫不正の侵害が存在することを要する。
 ここでいう急迫性とは,侵害行為が差し迫っていることを指す。喧嘩闘争においては,従前の闘争状態から質的に異なる侵害が行われれば,急迫性を認めることができる。
 本件では,乙が甲に対してすごんでみせているが,これは甲が乙に対し「謝れ。」と強い口調で言ったことと同程度の口論の範囲内である。その後も言い合いが続いていたところ,甲が乙の腹部を殴打し,口論とは質的に異なる顔面を蹴る等の苛烈な暴行を加えているのであり,急迫性のある侵害行為を行ったのは,むしろ甲の側といえる。
 以上より,乙の行為には急迫性がない。
ウ 甲の行為に正当防衛,過剰防衛は成立しない。
(3) よって,甲には傷害罪が成立する。
3 蛇行運転による暴行について
(1) 甲は乙が運転席側ドアの外で掴まっているにもかかわらず,自車を加速し蛇行運転を行い,200メートル程度進行したところで乙を振り落としている。この行為について殺人未遂罪(刑法199条,203条)が成立しないかが問題となる。
(2)ア 甲の暴行によって,乙は頭部を路面に強打し脳挫傷等の大怪我を負っており,死の危険もあったものである。これが殺人未遂罪の構成要件に該当するか傷害罪の構成要件に該当するかは,甲の故意により決まる。
イ 故意とは,構成要件的結果の認識及び認容を指す。
ウ 甲は,蛇行運転により乙が路面に頭などを強く打ち付けられてしまうだろうことを認識している。時速約50キロメートルの高速度で,生身の人間が固いコンクリートに頭部その他の枢要部を打ち付ければ,死に至る危険性は高いといえ,甲は乙の死亡結果をも認識していたといえる。
 それにもかかわらず,甲は乙を振り落としてしまおうと,結果発生を認容して蛇行運転を開始している。
エ よって,甲には殺人罪の故意があり,その行為は殺人未遂罪の構成要件に該当する。
(3)ア 甲の行為は,乙が自車に掴まってきたことに対応して行われたものであり,正当防衛が成立しないかが問題となる。
イ 急迫不正の侵害の有無については,歩道上の暴行と蛇行運転とが別個の行為であることに照らし,歩道上での行為とは切り離して考えるべきである。
 乙は,自車を解錠し乗り込もうとする甲の左手に対して,ナイフで切りかかるという暴行を行っている。そして,甲が車を発進させた後もなお,ナイフを甲の頭部や顔面に突き出しており,侵害の意欲は旺盛であった。さらに,ナイフを車内に落とした後,甲が蛇行運転を開始する時点でも,なお窓ガラスをつかみ拳で叩く等,侵害行為は継続していたものである。
 よって,急迫不正の侵害がある。
ウ 防衛の意思は侵害行為に対応してこれを排除する意思をいう。甲は乙による侵害行為に対応し,乙を振り落として逃げるために蛇行運転を開始しているのだから,防衛の意思がある。
エ 蛇行運転は乙の侵害行為を排除して逃げるのに有効な行為であるから,防衛行為といえる。
オ 防衛行為がやむを得ずにした行為といえる,つまり相当性が認められるためには,侵害行為から退避せずに対抗するために必要最小限度の行為であることを要する。
 本件では,乙の攻撃意欲は終始旺盛であった。しかし,乙はナイフを落とした後,ドア下のステップに飛び乗って,片手で窓ガラスを持って体を支えるという不安定な状態にあった。そして,もう片方の手で窓ガラスを外から叩いていたのであり,甲に直接危害が及ぶことは考えられず,侵害の程度は弱くなっていた。
 これに対して,甲の行った蛇行運転は乙に死の結果をもたらしうる高度に危険な行為であった。そして,例えば乙が落下しても危険の小さいスピードで走行しながら,窓ガラスを閉めて乙の指を挟んで対抗したり,乙が疲れて諦めるのを待ったりするという,より乙に対する侵害の程度が小さい方法もあった。そうすると,甲の行為は必要最小限度とはいえない。
 よって,甲の行為は相当性を欠く。
カ 甲の行為は過剰防衛(刑法36条2項)となる。
(4) 甲には殺人未遂罪の過剰防衛が成立する。
4 罪数
 甲には,歩道上における①乙に対する傷害罪,②丙に対する傷害罪,車上における③乙に対する殺人未遂罪の過剰防衛が成立する。①及び②は一個の行為として行われたものであるから,観念的競合(刑法54条1項前段)となる。これと,③とが併合罪(刑法45条)となる。
第2 乙の罪責について
1(1) 乙も甲と同様に,複数の暴行を加えているので,甲におけると同様に,客観的側面と主観的側面から行為の個数について検討する。
(2) 乙の一連の暴行は,甲に対する怒りが動機となっているが,歩道での暴行は丙を助ける意図でも行っていることから,車付近や車上での暴行とは異なる主観的側面もある。
 歩道上での暴行は甲による積極的な暴行に対して行われたものである。車付近及び車上での暴行は,これと300メートルほど離れた場所で行われており,甲は専ら逃げる態勢であったのだから,客観的にみて歩道上の暴行と一体とはいえない。
(3) 以上より,歩道上の暴行と車付近・車上での暴行という2つの行為に分けて検討すべきである。
2 歩道上の暴行について
(1) 乙及び丙は,丙が助けを求めたのに応じて甲に対して暴行し,加療約2週間の怪我を負わせている。これは現場共謀による傷害罪の共同正犯(刑法204条,60条)の構成要件に該当する。
(2)ア 乙の行為について正当防衛が成立しないか。
イ 急迫不正の侵害とは,不法な侵害が差し迫っていることをいい,侵害を予期し積極的加害意思で臨んだとき否定される。
 甲は殴る蹴るの苛烈な暴行を加えており,不法な侵害が現に行われていた。そして,乙は甲と口論していたに過ぎず,このような苛烈な暴行を予期していなかったといえる。
 よって,急迫不正の侵害がある。
ウ 防衛の意思は侵害行為に対応する意思があれば足りる。攻撃の意思と併存していても否定されないが,専ら攻撃の意思で積極的加害行為を行った場合は否定される。
 乙は丙を助ける意図と仕返しの意図が併存した状態で甲を数回蹴っている。また,丙は,甲が乙に向かっているのを見て甲を殴っており,侵害行為に対応する意思があるものといえる。
 よって,防衛の意思がある。
エ 乙及び丙の暴行は,甲の侵害を止める防衛行為といえる。
オ 甲の侵害行為は乙に加療約1ヶ月の怪我を生じさせたのに対し,乙及び丙の暴行は甲に加療約2週間の怪我を負わせたにとどまり,防衛行為の相当性が認められる。
カ 以上より,正当防衛が成立する。
(3) 乙は,歩道上の暴行については無罪である。
3 車付近と車上での暴行について
(1)ア 乙は甲の車付近で,甲の左前腕部を切りつけて加療約3週間の切創を負わせている。ナイフは刃体約10センチメートルと小型で,乙は左手という身体の末端部を狙っていたのだから,殺意はない。よって,傷害罪の構成要件に該当する。
イ 甲の侵害行為は止んでおり,乙は専ら甲を痛めつける意思で暴行に及んでいるから,防衛の意思を欠く。正当防衛も過剰防衛も成立しない。
(2) 乙が甲車上で,ナイフを突き出す等した行為は,車付近での傷害に付随するものとして包括的に評価される。
(3) 乙には傷害罪の単独犯が成立する。
4 乙には傷害罪(刑法204条)1罪が成立する。
第3 丙の罪責について
1 丙の行為については,乙と同様に,歩道上での暴行と車付近・車上での暴行とに分けて検討する。
2 歩道上での暴行について
(1) 丙が両手で甲の胸付近を強く押した行為は,暴行罪(刑法208条)の構成要件に該当する。しかし,これは甲の乙に対する急迫不正の侵害を排除するために行われた必要最小限の行為であり,正当防衛が成立し無罪となる。
(2)ア 丙が乙に対して助けを求めたことで,乙丙間に甲に対する暴行の現場共謀が成立したといえ,甲に怪我を負わせた行為は傷害罪の構成要件に該当する。
イ しかし,乙と同様に正当防衛が成立する。
ウ よって,これについても無罪となる。
3 車付近・車上での暴行について
(1) 丙自身は暴行していないから,共謀共同正犯の成否が問題となる。
(2) 歩道上での現場共謀は,丙に対する急迫不正の侵害を排除するために成立したのであり,甲が逃走を図り急迫不正の侵害が存しなくなった時点で解消したといえる。
 丙は乙による暴行を止めようとして,「やめとけ。」と叫び,甲から引き離しており,新たな共謀が成立したともいえない。
(3) 車付近・車上の暴行について丙は無罪となる。
4 丙は無罪となる。
以上


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8頁の15行目まで

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反省点

【甲の罪責】
・最初に複数の行為が一個か別個かを論じているのは,辰已の模試か何かの解説で,構成要件の前に行為について書く方法があるよ,と聞いたのを使ったものです。辰已の速報によると,甲による歩道上の暴行について正当防衛を検討する必要はなさそうなので,無駄な記載になったかもしれません。
・そして,無駄に正当防衛を検討しています。
・殺意や急迫性,相当性の認定はどう評価されるかわかりません。論理矛盾とか,致命的なミスはないと思っていますが。。。

【乙の罪責】
・歩道上の暴行に関して,具体的にどの暴行を論じているのかが,あまり明確になっていないのが,気になります。

【丙の罪責】
・中身がほとんどありません。
・辰已の速報には「事実を拾いつつ」と書いてあるんですが,そうするとほとんど乙と記述が重複してしまう気がしました。

【全体的に】
・去年の旧試でE評価をとった因縁の科目。今年は去年よりはまともだと思いますが。。。
・ちょっと怖いのが,山口刑法を使いながら判例をつまみ食いしているところです。たとえば,行為の個数を主観面と客観面から考える,なんてことを書いていますが,これは最決平成20年6月25日刑集62巻6号1859頁が,侵害の継続性と防衛の意思との2要素を挙げていることを,自分なりに解釈して書いたものです。これは,いわゆる「行為は主観面と客観面の統合体である」という(行為無価値的な?)考えに親和的だと思うので,他のところで山口説をとると矛盾するところが出てくるんじゃないかな,と恐れています。

2011/08/06 追記

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 某氏の指摘を受けて,第1の2(2)アに「喧嘩の様々なパターンを考慮できない点で不当であり」との記述を追加しました。そうでないとおよそ意味が通じませんので。ただ,本番では「不当であり」くらいに略した可能性もあります。

2011/09/26 追記


H23新試 民事系 第3問

2011-06-08 15:19:45 | 平成23年度新司法試験論文再現
民事系 第3問

第1 [設問1]について
1 自白の撤回制限効の根拠について
(1) 自白とは相手方の主張と一致する自己に不利益な事実を認める陳述をいう。民事訴訟法(以下,「法」とする。)179条により,自白には不要証効が認められ,弁論主義の第2原則により,裁判所に対する拘束力が認められる。
 ここでいう事実とは,自白の上記強力な効力を認めるにふさわしいものであることを要する。具体的には,法律要件に該当する具体的事実である主要事実を指す。
(2) 自白にはこのような強力な効力が認められるから,一方当事者の自白を受けた相手方は,自白された事実についてはもはや主張立証の必要がないと期待することが通常である。この期待を保護するために,自白の撤回制限効が認められる。
 もっとも,相手方の期待が保護に値しないとき,つまり相手方の合意がある場合,相手方の欺罔による場合,反真実の自白を錯誤により行った場合には,自白の撤回が許される。
2 所有権についての権利自白が認められる理由について
(1) 主要事実についてのみ自白が認められるという原則からは,主要事実を法規に当てはめた結論であるところの権利の存否については裁判所の専権に属し,自白が認められない。
(2) しかし,所有権についてこの理を貫くと,その存在を主張する者は,原始取得まで遡って主張しなければならず不都合である。反面,所有権は日常的でなじみのある概念であり,自白を認めても,当事者の予期せぬ不都合を来すものではない。
 そこで,一般に所有権については権利自白が認められる。
3 権利自白の撤回制限効の理論的基礎付け
(1) 以上を前提に,権利自白の撤回制限効の理論的基礎付けを試みる。弁論主義に基づく自白の拘束力や撤回制限効は,事実レベルで認められるものであり,権利レベルである権利自白においては認められないのが原則である。
(2) まず,権利自白を,原始取得の原因事実及びその後の所有権移転の原因事実についての自白ととらえ,撤回制限効を導く構成が考えられる。
 この構成は,弁論主義の範囲内で説明が可能である点で長所を有する。しかし,権利自白を個々の主要事実についての自白と見ることは,日常的な概念であることを理由とする権利自白の根拠論とそぐわず,擬制的である。よって妥当でない。
(3) 次に,請求認諾との均衡による基礎づけが考えられる。
 請求認諾が調書に記載されると,法267条により確定判決と同一の効力を有する。この効力は錯誤無効(民法95条)の主張により覆り,法338条1項5号の再審事由もある。これらは事実自白の撤回が許される場合と類する。
 事実レベルと請求レベルにおいて,同様の撤回制限が認められるのであれば,それらとの均衡から,両者の中間にある権利レベルにおいても撤回制限が認められるべきである。法的根拠を欠く点はネックだが,弁論主義や法267条の趣旨の類推により,権利自白の撤回制限効を導くことができると考える。
4 本件での撤回制限効の例外の検討
 本件で,Cは反真実かつ錯誤を理由に撤回を主張しているようなので検討する。
 Bが平成22年12月8日に訴えを提起してから,翌年1月25日の第1回口頭弁論期日まで1ヶ月半が経過している。Cは十分準備できたにもかかわらず,権利自白しているから,重過失があり錯誤主張は認められない(民法95条但書)。
第2 [設問2]について
1 独立当事者参加について
(1) 法47条1項後段の権利主張参加ができるか。
(2) 権利主張参加は,訴訟の目的の全部又は一部が自己の権利であることを主張し,当事者の訴訟追行を牽制する必要がある第三者に認められる。
 ここで,訴訟の目的が自己の権利であるとは,係争債権の譲受人が参加する場合や,物権的請求について同一土地の所有権を争う者が参加する場合のように,訴訟物が同一であり,原告の権利主張と参加人の権利主張が相容れない場合をいう。このような場合に,訴訟追行を牽制する必要があるからである。
(3) 訴訟1は債権者代位訴訟(民法423条1項)であり,その訴訟物は,AのCに対する所有権に基づく妨害排除請求権としての移転登記請求権である。そして,参加を試みるFも原告Bと同様に債権者代位による登記請求を試みているのだから,訴訟物は同一の移転登記請求権である。
 しかし,B及びFの請求にかかる被代位債権は登記請求権であり,直接自己への給付を求めることができないから,BのDに対する請求とFのDに対する請求はいずれも認容され,DのAに対する移転登記手続が命ぜられる可能性がある。そうすると,両者の請求は相容れない関係にはなく,FにはBD間の訴訟追行を牽制する必要がない。
(4) 以上より,Fの独立当事者参加は認められない。
2 共同訴訟参加について
(1) 法52条1項の共同訴訟参加が認められるか。
(2) 法52条1項の要件である訴訟の目的が合一にのみ確定すべき場合とは,要するに法40条1項の必要的共同訴訟の場合を指す。本件が,異なる債権者による債権者代位訴訟の場合であり,固有必要的共同訴訟でないことは明らかだから,類似必要的共同訴訟といえることを要する。
 類似必要的共同訴訟とは,必ずしも共同訴訟人が全員揃って訴え又は訴えられる必要はないが,一旦訴訟が提起された以上は,合一確定のため共同審理が必要とされる場合をいう。具体的には,判決効が共同訴訟人たるべき者に拡張する場合に類似必要的共同訴訟となる。
(3) 訴訟1は債権者代位訴訟であり,BはAの法定訴訟担当として訴訟追行しているのであるから,法115条1項2号により,訴訟1の判決の既判力はAD間に拡張される。これをAの一般債権者たるFは当然には争えないから,判決効がFにも拡張する場合であるといえる。
 さらに,仮にFがBとは別個に債権者代位訴訟を提起できるとすると,BD間の代位訴訟とFD間の代位訴訟のいずれの結果もがAに拡張することになる。このような既判力の衝突は望ましくなく,合一確定の必要がある。
(4) 以上より,BF間には類似必要的共同訴訟人たる関係があり,Fは共同訴訟参加をすることができる。
第3 [設問3]について
1 本訴請求の認諾について
(1) 実体法の観点からの検討
 Kの死亡により,その一切の権利義務をL,Mが承継し共有することになる(民法896条,898条)。Nの主張通り,Kに丙建物収去乙土地明渡義務があったとすれば,L及びMはこれを不可分債務(見法430条)に類する義務として共同して負担することになる。
(2) 訴訟法の観点からの検討
ア Mが単独でした本訴請求の認諾が有効か否かは,L及びMに,法39条の共同訴訟人独立の原則が適用され有効か,法40条1項の不利益な行為として無効かによる。
イ 判例は,建物収去土地明渡義務を共同相続人が不可分的に負う場合,合一確定を要しないとし,通常共同訴訟の関係になり,共同訴訟人独立の原則が適用されるとしている。
 これによると,M単独での請求認諾は有効であり,Mのみが2分の1の持分について,丙建物収去乙土地明渡義務を負うことになる。Lに対する訴訟は継続することになる。
ウ このような判例の結論は妥当か。
 仮にLに対する訴訟においてNの請求が棄却され,Mの請求認諾と矛盾が生じても,L及びMの義務が不可分債務と同様に扱われる以上,Nは請求認諾の調書のみによってMに対して丙建物収去乙土地明渡を求めることはできない。それゆえ,丙建物の半分だけ取り壊されるという不都合は生じない。
 また,Nとしては訴訟外でLと交渉することで丙建物収去乙土地明渡を実現する余地もあり,M単独の請求認諾にも意味がある。
 以上より,判例の結論が妥当であり,Mの請求認諾は有効なものとして扱われるべきである。
2 中間確認請求の放棄について
(1) 実体法の観点からの検討
 Kの主張が正しければ,乙土地はL及びMの間で遺産共有となる。判例は民法249条以下の共有と同じだとしている。
(2) 訴訟法の観点
ア 判例は通常共同訴訟であるとする。
イ しかし,継続する訴訟でLが勝訴し,その既判力によりNに対し登記請求し認められると,意図せずNL間の共有が成立し妥当でない。よって,必要的共同訴訟と解し,Mの放棄は許すべきでない。
以上


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7頁の1行目まで

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反省点

【設問1】
・自分で読んでいてよくわからないのが,「権利自白が認められる」ということと「権利自白に撤回制限効がある」ということを分けている点です。「権利自白が認められる」というのは,裁判所に対する拘束力を意味しているのかな,という気がしますが,本番や再現答案作成時にどういうことを考えていたのかは,思い出せません。
・「弁論主義や法267条の趣旨の類推」って書いているんですが,その「趣旨」が何なのか(たぶん相手方の信頼や私的自治と書けばよかった),が明確に示されていません。他にもけっこう読みにくい場所があります。どういう評価がされるんでしょうか。。。
・辰已の速報と,書いているキーワードはだいたい一致しているんですが,論述が正確で筋の通ったものであるかは,よくわかりません。
・本件での具体的な検討もおまけ程度に書きました。辰已の速報も書いています。ただ,「理論的に基礎付けることができるかどうか」を問われているので,余事記載なのかもしれません。

【設問2】
・共同訴訟参加の当てはめの部分で,「一般債権者たるFは当然には争えない」と書いています。試験当日はこの部分で,「Aが無資力のときは,Fも民法423条,424条を使ったりして争えるんじゃないかな??」とか考え出して,もう少し筋の通ったことを書いた気もします。が,答案構成用紙に残っていないので,再現できませんでした。
・あとは,大間違いしている場所はない気がします。辰已の速報(とくに共同訴訟参加について)が何を言ってるのかよくわからない(「この点,」の前後がつながっていない)ので,反省する手がかりがありませんでした。

【設問3】
・中間確認請求は共有権確認請求だったんですね。Kの元々の訴訟が所有権確認だったので,持分権確認請求だと考えてしまいました。なので,中間確認請求のところの判例を,元気いっぱい「通常共同訴訟」と書いてしまっています。
・辰已の速報によると,本訴請求と中間確認請求との結論に齟齬が生じうることをどうすべきか,という視点が必要だったようですね。全く書いていません。というか,判例を間違った時点で,そういう問題意識は出てきようがありません。


2011/08/06 追記






H23新試 民事系 第2問

2011-06-08 15:19:35 | 平成23年度新司法試験論文再現
民事系 第2問

第1 ①について
1 自己株式の取得が認められるのは,会社法(以下,「法」とする。)155条各号の場合に限られる。本件は,特定株主からの相対での取得であるので,法155条3号の場合に当たり,法156条1項,160条1項,309条2項2号により,株主総会の特別決議を要する。この総会決議の効力が失われれば,自己株式の取得も無効となる。
 そこで,平成22年6月29日の株主総会(以下,「本件総会」とする。)の第1号議案の決議の効力について検討する。
2 本件総会の第1号議案については,決議の外形が存在し,決議の内容たる自己株式取得は法155条3号に定められているから,法830条1項の不存在事由,830条2項の無効事由はない。
3(1) そこで,法831条の取消事由がないか検討する。
(2)ア 法831条1項1号の決議方法の法令違反はないか。
イ 本件は,旧株主Aの相続人Bからの取得であるが,甲社は公開会社であるので,法162条1項本文の適用はない(同項但書1号)。よって,法160条1項の特別決議に加えて,同条2項及び3項の適用もある。
ウ 本件総会の第1号議案の決議においては,B以外の甲社株主に対し,自己を取得の相手方に加える議案修正請求権の通知を欠いており同条2項に反する。また,取得の相手方たるBが議決権を行使しているので同条4項本文に反する。
 3分の2を辛うじて上回る賛成があったとのCの判断は,議長の議事運営に委ねられるものであり,法令違反はない。
エ よって,決議方法の法令違反があるといえる。
(3)ア 法831条1項3号の取消事由はないか。
イ 同号の特別の利害関係を有する者とは,決議により他の株主が得られない利益を得る株主をいう。著しく不当な決議とは,他の株主が著しい不利益を受ける場合をいう。
ウ 第1号議案の可決により,Bは自己のみが250万株のすべてを市場価格より25%高い価格で買い取ってもらえるのであり,他の株主が得られ得ない利益を得ることになる。
 そして,高値での買取は会社財産の減少を来たし,それは他の株主に転嫁され,他の株主は著しい不利益を被る。
エ 以上より,法831条1項3号の取消事由もある。
(4)ア 法831条1項1号の取消事由について,裁量棄却の余地はないか。
イ 1000万株の25%に当たる250万株を有するBによる議決権行使は重大であるし,賛成数は辛うじて3分の2を上回る程度であったのだから,決議に影響を及ぼすおそれがある。
ウ よって,裁量棄却の余地はない。
(5) 以上より,本件総会第1号議案決議の日から3ヶ月(法831条1項柱書)後の平成22年9月29日以内であれば,取消訴訟を提起して本件自己株式取得の効力を否定できる。
4(1) 甲社とBとの間の法律関係はどうなるか。
(2) 本件自己株式取得が無効となれば,甲社はBに対して250万株の不当利得返還債務(民法703条)を負い,Bは甲社に対して25億円の不当利得返還債務を負う。
(3)ア 甲社による25億円の返還請求について,Bは株式の返還と引換えでなければ返還しないと主張できるか。
イ 民法533条の同時履行の抗弁権は,対価関係にある二つの給付について均衡を図る趣旨である。そうすると,双務契約の場合に限らず,その取消しによる巻き戻しの関係のように,対価的均衡を図るべき場合にも類推できると解すべきである。
ウ 一般に自己株式が取得された場合,消却(法178条1項)や処分(法199条1項)により,会社内に株式が残存しない場合が予定されている。このような場合に再度自己株式を発行して,取得の相手方たる株主に返還することは権利関係を錯雑にするので妥当でない。自己株式取得無効の際の返還債務については対価的均衡を図るべきでない。
 本件でも,甲社は取得した自己株式を乙社に対し処分しているから,現物の返還は不能となっており,同様の理が妥当する。
エ 以上より,Bは同時履行の抗弁を主張できない。ただしBは,甲社の株式返還の履行不能による20億円の損害賠償債権(民法415条)を自働債権として,25億円の不当利得返還債務と相殺できる。よって,5億円を支払えば足りる。
第2 ②について
1 自己株式の処分は,取引の安全を保護するため,処分の効力発生後は法828条1項3号の無効の訴えによってのみ,その効力を否定できる。本件自己株式処分に無効原因はあるか。
2 甲社は公開会社であるが,本件自己株式処分は市場価格より20%割り引いた価格が払込金額とされており,これは公正な価額より著しく安価といえ,有利発行(法199条3項)に当たる。よって,株主総会の特別決議が必要である(法199条1項,201条1項,309条2項5号)。
 総会決議の効力が否定される場合,自己株式処分に重大な瑕疵があり無効原因となる。そのうち決議取消事由については,法831条1項が法律関係の早期安定を図る趣旨を尊重し,同項の3ヶ月の期間内に主張すれば無効原因になると解する。そこで本件総会の第2号議案決議の有効性を検討する。
3 自己株式処分自体は法199条以下で定められており法令に反しない。法830条の決議不存在・無効事由はない。
4(1) Cが説明を拒絶したことは,法831条1項1号の決議方法の法令違反に当たるか。
(2) 法199条3項における有利発行の理由の説明義務は,法314条の一般的な説明義務を一層敷衍したものであり,株主からの要求がなくとも取締役は説明義務を負う。
 そうすると,法314条但書と同様に正当な理由があれば説明を拒絶することができると解すべきである。もっとも,有利発行は,既存株主の経済的利益に直結するから,説明拒絶が許される場合は限定すべきである。
(3) Cが説明を拒絶した理由である企業秘密は,法314条但書,法施行規則71条2号の理由に当たりうる。
 しかし,法199条3項がわざわざ「当該払込金額」で募集をすることの必要性について説明義務を課していることからすれば,割引率算定の基礎となった事実の説明は必須というべきである。そうすると,企業秘密により一切の説明を拒絶することは,法199条3項の説明については正当な理由による拒絶といえない。本件総会におけるCの説明は金額について一切の説明を欠いているのであり,許されない。
(4) よって,決議方法の法令(法199条3項)違反があり,法831条1項1号の取消事由がある。
5 本件自己株式取得と同様に,本件自己株式処分における乙社は特別利害関係株主に当たり,著しく不当な決議がされたと言えるので,法831条1項3号の取消事由もある。
6 自己株式処分無効の訴えを提起して,平成22年9月29日までに本件総会第2号議案決議の取消事由を主張すれば,本件自己株式処分は無効となる。
第3 ③について
1(1) 本件では,総会決議取消訴訟と自己株式処分無効の訴えのいずれも提起されずに平成22年9月29日が経過し,平成23年3月31日時点で30億円の欠損が生じている。これについてCは甲社に対し,法423条1項の責任を負うか。
(2) 取締役は会社に対して善管注意義務を負う(法330条,民法644条,法355条)。これに違反した場合には法423条1項の任務懈怠が認められる。
 もっとも,経営には冒険が不可避であるところ,善管注意義務の内容として高度なものを取締役に要求すると,取締役が冒険を避けて安全運転の経営を図る誘因となり妥当でない。そこで,取締役が経営に関する決定を行う際の調査の過程に合理性があり(①),決定の内容が著しく不合理でなければ(②),その決定は経営判断によるものであり,善管注意義務違反を構成しないと解する。
(3) Cが本件自己株式取得及び本件自己株式処分を発案するに至った動機は,甲社の経営状況の悪化にあり,打開策として大手電気通信事業者である乙社との資本関係の強化を図ることは合理的である。そして資本関係の強化のためにはBからの自己株式の取得が必要であり,取得の際の交渉材料として,Bの先代Aの貢献を調査・考慮することも合理的といえる(①)。
 Cが本件自己株式取得及び本件自己株式処分を総会に諮った平成22年6月の時点では,35億円のその他利益剰余金があったとされていた(資料②)。そうすると,実質9億円の出費を行っても株主や債権者に著しい不利益を与えるものとは言いがたく,決定内容も著しく不合理ではない(②)。30億円の欠損が生じたことは,Cの過失によらない従業員の巧妙な粉飾決算によるものである。
(4) 以上より,Cには善管注意義務違反がなく,任務懈怠は認められず,甲社に対して法423条1項の責任を負わない。
以上

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7頁の1行目まで

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反省点

【①】
・どこから反省すればいいのか。0点でも不思議じゃないような。あああ。
・なんで,これ見よがしにB/Sが添付されていたのに,財源規制に気がつかなかったんだろう。。。
・なんで,160条各項違反を端的に自己株式取得無効事由にせず,総会決議取消を経由させたんだろう。。しかも,「この総会決議の効力が失われれば,自己株式の取得も無効となる。」という論述に理由づけが全くない。。。
・自己株式取得が無効となった場合の甲社とBとの関係については,会社法事例演習教材に同時履行の話があった気がするので,それを書きました。記述が正しいかどうか,確かめる気力もありません。
・試験直後の感触通り,会社法がダントツでやらかしている科目の感があります。

【②】
・ここは,①よりまともです。辰已の速報で論点として挙げてるところ(決議取消と処分無効の訴えの関係,有利発行,説明義務,特別利害関係株主)は,一応触れています。
・文章の流れが悪く,あっちこっち飛んでいて,読みにくいかもしれません。

【③】
・財源規制に気付かなかったので,当然462条も書けていません・・・
・しかし,423条の論述もグダグダです。損害がよくわからないので,過失を否定して逃げました。経営判断なんていっちょ前に書いていて,情けないです。

2011/08/06 追記