ふわりふわり舞い落ちる雪
美しいモノクロームの世界
ゆったりと流れる時間に身をゆだねていると
メールの着信音が静寂な空間に鳴り響いた。
受信メールを読んだ光一の目の前に
まるでタイムスリップしたかのように
浮かんできたあの日の情景
忘れられないひとり旅・・・
『雪の舞』
東京で珍しく元日に雪が降った。
絵を描くことが趣味の光一は
窓越しにふわりふわり
舞い落ちる雪を眺めながら
スケッチブックに鉛筆を走らせていた。
ゆったりと流れゆく時間を満喫していると
静寂な空間にメールの着信音が鳴り響いた。
受信メールを読んだ光一の目の前に
あの日の情景が浮かんできて
まるでタイムスリップしたかのようだった。
2年前の忘れられないひとり旅・・・
当時の光一は25歳
大学を卒業して社会人3年目
気ままなひとり旅が好きな光一は
オホーツク海の流氷を見るために
網走へと向かった。
光一は流氷に会いたくてしょうがないという
はやる気持ちを抑え、流氷砕氷船に乗った。
船が動き出してすぐに流氷を発見。
氷がどんどん大きくなっていき
しばらくすると、流氷が一面に敷きつめられ
周りがすべて白一色の壮大な世界になった。
オホーツクの壮大な白い海をビデオカメラで
撮影していると、女の子が話しかけてきた。
路線バスや観光施設で見かけていて
彼女もひとり旅をしているようだったので
光一は内心彼女のことが気になっていた。
「すいません、そのカメラの望遠であそこをみてもらえますか?あれって、アザラシですよね」
彼女が指さす方向を追ってみると
彼女の言う通り、アザラシが流氷の上で
寝そべっている姿を見ることができた。
「たしかにアザラシですね。でもよくわかったね」
「私って、目がいいんですよ」
「きみも覗いてみなよ」
光一はビデオカメラを彼女に手渡した。
「わあ、可愛い、ほんとうにアザラシですね」
彼女は屈託のない笑顔を光一に向けた。
この出会いを切っ掛けに会話がはずんだ。
彼女の名前は舞子、札幌在住の18歳で
高校3年生。
仲良しの友人達は大学受験の真っ最中・・・
卒業後に就職する舞子は、この時期
無性にひとり旅がしたくなった。
「“舞子”っていい名前だよね」
「生まれた日に雪が舞っていたので“舞子”と名付けられたんですけど、私も気に入っています」
雪のように白い肌をした舞子は
真っ直ぐに光一を見ながら明るく微笑んだ。
「生まれた日に雪が舞っていたということは、2月生まれかな・・・」
「ピンポーン、当たりです。実は2月8日、今日が私の18歳の誕生日なんですよ!
今回、誕生日の記念旅行としてきました。流氷に会えて本当に良かったです」
「今日が誕生日とは・・・アザラシも見れたし、流氷に会えて誕生日のいい記念になったね」
気ままなひとり旅同士として知り合って
たちまち意気投合した2人は、
流氷を満喫した後、行動を共にした。
「舞ちゃん、お腹すいたでしょ。まずは腹ごしらえということでお昼を食べに行きましょう」
光一はいつの間にか舞子のことを
“舞ちゃん”と呼んでいた。
「せえので食べたいものを同時に言いませんか?」
舞子は明るく満面の笑みを浮かべて言った。
2人同時に「せえ~の」と掛け声をかけた後
2人同時に「おそば~」
2人同時に心から笑った。
2人ともそば好きだった。
入ったレストランで
2人とも山菜そばを注文した。
盛りだくさんな山菜、太目の麺が
なんとなくワイルドな感じで
この地の雰囲気に合っている感じがした。
「光一さんもそば好きなんですね」
「大好き!駅の立ち食いそばを食べてから会社に行くのが日課なんだ」
「私もそばが大好きで、自宅でそば打ちをすることもありますよ」
「自宅でそば打ちとはすごいな・・・そういえば北海道はそばの生産量が日本一なんだよね」
「北海道は“そば王国”なんですよ。そば好きな人が多いと思います。 私の周りは
そば好きな人ばかりです。"そば"の授業が必修科目になっている高校もあるんですよ」
「光一さんはそばの花を見たことがありますか」
「写真でしか見たことがないなあ・・・可憐な白い花だよね」
光一は白い花が好きだった。
観光スポットのいくつかを見てまわり
楽しい時間を一緒に過ごした2人は
メールアドレスを交換し網走駅で別れた。
光一は宿泊先のホテルまでタクシーで行き
フロントで手続きをし
エレベーターに向かった。
エレベーターのドアが
ちょうど閉まるところだったが
エレベーター内にいた先客が光一に気づいて
ボタンを押して開けてくれた。
「ありがとうございます」
お礼を言って先客をみた光一は驚いた。
なんと先客は舞子だった。
舞子も驚いた様子で
「びっくり、同じホテルだったんですね」
と言った。
舞子に「何階ですか」と聞かれ
「5階です」と光一は答えたが
すでに5のボタンに灯がついていた。
「同じ階とは偶然ですね。」
舞子はとびきりの笑顔で光一に言った。
2人はホテルのロビーで待ち合わせ
夕食を一緒に食べることにした。
夕食時に光一は舞子の誕生祝いとして
アメジストのブレスレットを贈った。
アメジストは舞子の誕生石だが
舞子へのサプライズとして
待ち合わせ前に買っておいたのだ。
「男の人からプレゼントをもらったことがなくて・・・すごく嬉しいです」
そのブレスレットを着けて
舞子は嬉し涙を流した。
網走駅で別れたはずの2人が
ホテルのエレベーターで再会
こんな偶然ってあるんだな・・・
その夜、光一はなかなか寝付けなかった。
あくる日、2人は札幌まで一緒に行ったが
贈ったブレスレットを
舞子が着けているのを見て
光一は嬉しくなった。
札幌に着くまでの間
2人はとりとめもなくいろいろな話をした。
「東京に来ることがあったら案内してあげるよ」
「4月から社会人なので、お金をためて東京に遊びに行きます。そのときは東京案内して下さい」
「舞ちゃんは雪が似合いそうだね・・・東京で5月に雪が降る場所があるんだけど、
舞ちゃんに見せたいなあ」
「網走なら5月に雪が降っても珍しくないけど・・・」
舞子は訝しげな表情をして光一を見つめた。
その旅での出会いをきっかけに2人は
メールのやり取りをするようになった。
当初の光一にとって
舞子はいとしい妹のような存在だったが
メールのやり取りを続けていくうちに
舞子への気持ちが膨らんでいき
かけがえのない大切な存在になっていた。
受信メールは舞子からのものだった。
そのメールには
「あけましておめでとうございます。5月の連休を利用して東京に遊びに行こうと
思っているんですが、案内してもらえますか?雪が降る場所を見せて下さい。
光一さんと再会できることを楽しみにしています」
と書いてあった。
5月3日、舞子との再会当日
光一はスケッチブックを抱えて
はやる気持ちを抑えながら
雪が降る場所に向かった。
光一の自宅近くの公園に
“なんじゃもんじゃ”という木があり
その白く美しい花は木を包み込み
その白い花のかたまりが
まるで雪が降り積もっているように見えて
とても風情がある。
雪が降る場所とは
なんじゃもんじゃの木がある場所のことだ。
「お久しぶりです」
舞子が満面の笑みを浮かべ
小走りになって駆け寄ってきた。
舞子は驚くほど美しく変身していた。
「あれ・・・ずいぶん変わったね、すごくきれいになったよ。」
「お化粧して化けているんで・・・」
舞子は笑いながらはにかんだ。
光一はひとり旅をしていたあの時の女の子と
目の前にいる女性とを結びつけようと
舞子の顔を覗き込んだ。
舞子は驚いた表情で見返してきたが
光一はその澄んだ瞳のまぶしさにひるんで
思わず瞬間的に目をそらした。
予想した通りの感情が湧いてきて
光一の心を締め付けた。
そのとき風が吹いて
なんじゃもんじゃの白い花が雪のように
ふわりふわり舞い落ちてきた。
舞子は雪のような白い花を
手のひらで受け止めようとした。
その仕草に光一は驚いた。
光一がずっと思い描いていた仕草だった。
「やっぱり、舞ちゃんは雪が似合うな」
光一はつぶやいた。
「舞ちゃんに見せたいものがあるんだ」
光一は持っていたスケッチブックを
舞子に向かって開いて見せた。
そこにはふわりふわり舞い落ちる雪を
手のひらで受け止めようとしている
女性が描かれていた。
「舞ちゃんをイメージして描いたんだ」
「すご~い、私に似てますか?」
スケッチブックを受け取った舞子は
その絵を顔の横に掲げながら言った。
「そっくりだよ、絵が完成したら舞ちゃんにあげるね」
「わあ、嬉しい」
舞子は光一がイメージした通りの
美しい女性になっていた。
「北海道では8月に雪が降る場所があるんですよ。光一さんに見せたいなあ」
舞子はいたずらっぽい笑顔で言った。
「雪が降る場所はそばの花畑がある場所のことだよね」
可憐な白いそばの花が一面に咲く風景を
思い浮かべながら光一は言った
「ピンポーン、当たりです。北海道のそば畑は広くて綺麗ですよ。案内するので、ぜひ遊びに来て下さい」
「光一さんからもらったブレスレット、大切に使っています」
「懐かしいなあ、舞ちゃんに贈ったブレスレットだね」
ブレスレットを着けた舞子の左手を持ち上げ
光一は言った。
そして自然な流れのままに
どちらからともなく手をつないだ。
「舞ちゃんのそばにずっといたいな」
光一がつないだ手を強く握ると
舞子はさらに強く握り返した。
「舞ちゃん、お腹すいたでしょ。まずは腹ごしらえということでお昼を食べに行きましょう」
せえので食べたいものを同時に言いませんか?」
舞子は明るく満面の笑みを浮かべて言った。
あのときと同じシチュエーション!
2人同時に「せえ~の」と掛け声をかけた後
2人同時に「おそば~」
2人同時に心から笑った。
美しいモノクロームの世界
ゆったりと流れる時間に身をゆだねていると
メールの着信音が静寂な空間に鳴り響いた。
受信メールを読んだ光一の目の前に
まるでタイムスリップしたかのように
浮かんできたあの日の情景
忘れられないひとり旅・・・
『雪の舞』
東京で珍しく元日に雪が降った。
絵を描くことが趣味の光一は
窓越しにふわりふわり
舞い落ちる雪を眺めながら
スケッチブックに鉛筆を走らせていた。
ゆったりと流れゆく時間を満喫していると
静寂な空間にメールの着信音が鳴り響いた。
受信メールを読んだ光一の目の前に
あの日の情景が浮かんできて
まるでタイムスリップしたかのようだった。
2年前の忘れられないひとり旅・・・
当時の光一は25歳
大学を卒業して社会人3年目
気ままなひとり旅が好きな光一は
オホーツク海の流氷を見るために
網走へと向かった。
光一は流氷に会いたくてしょうがないという
はやる気持ちを抑え、流氷砕氷船に乗った。
船が動き出してすぐに流氷を発見。
氷がどんどん大きくなっていき
しばらくすると、流氷が一面に敷きつめられ
周りがすべて白一色の壮大な世界になった。
オホーツクの壮大な白い海をビデオカメラで
撮影していると、女の子が話しかけてきた。
路線バスや観光施設で見かけていて
彼女もひとり旅をしているようだったので
光一は内心彼女のことが気になっていた。
「すいません、そのカメラの望遠であそこをみてもらえますか?あれって、アザラシですよね」
彼女が指さす方向を追ってみると
彼女の言う通り、アザラシが流氷の上で
寝そべっている姿を見ることができた。
「たしかにアザラシですね。でもよくわかったね」
「私って、目がいいんですよ」
「きみも覗いてみなよ」
光一はビデオカメラを彼女に手渡した。
「わあ、可愛い、ほんとうにアザラシですね」
彼女は屈託のない笑顔を光一に向けた。
この出会いを切っ掛けに会話がはずんだ。
彼女の名前は舞子、札幌在住の18歳で
高校3年生。
仲良しの友人達は大学受験の真っ最中・・・
卒業後に就職する舞子は、この時期
無性にひとり旅がしたくなった。
「“舞子”っていい名前だよね」
「生まれた日に雪が舞っていたので“舞子”と名付けられたんですけど、私も気に入っています」
雪のように白い肌をした舞子は
真っ直ぐに光一を見ながら明るく微笑んだ。
「生まれた日に雪が舞っていたということは、2月生まれかな・・・」
「ピンポーン、当たりです。実は2月8日、今日が私の18歳の誕生日なんですよ!
今回、誕生日の記念旅行としてきました。流氷に会えて本当に良かったです」
「今日が誕生日とは・・・アザラシも見れたし、流氷に会えて誕生日のいい記念になったね」
気ままなひとり旅同士として知り合って
たちまち意気投合した2人は、
流氷を満喫した後、行動を共にした。
「舞ちゃん、お腹すいたでしょ。まずは腹ごしらえということでお昼を食べに行きましょう」
光一はいつの間にか舞子のことを
“舞ちゃん”と呼んでいた。
「せえので食べたいものを同時に言いませんか?」
舞子は明るく満面の笑みを浮かべて言った。
2人同時に「せえ~の」と掛け声をかけた後
2人同時に「おそば~」
2人同時に心から笑った。
2人ともそば好きだった。
入ったレストランで
2人とも山菜そばを注文した。
盛りだくさんな山菜、太目の麺が
なんとなくワイルドな感じで
この地の雰囲気に合っている感じがした。
「光一さんもそば好きなんですね」
「大好き!駅の立ち食いそばを食べてから会社に行くのが日課なんだ」
「私もそばが大好きで、自宅でそば打ちをすることもありますよ」
「自宅でそば打ちとはすごいな・・・そういえば北海道はそばの生産量が日本一なんだよね」
「北海道は“そば王国”なんですよ。そば好きな人が多いと思います。 私の周りは
そば好きな人ばかりです。"そば"の授業が必修科目になっている高校もあるんですよ」
「光一さんはそばの花を見たことがありますか」
「写真でしか見たことがないなあ・・・可憐な白い花だよね」
光一は白い花が好きだった。
観光スポットのいくつかを見てまわり
楽しい時間を一緒に過ごした2人は
メールアドレスを交換し網走駅で別れた。
光一は宿泊先のホテルまでタクシーで行き
フロントで手続きをし
エレベーターに向かった。
エレベーターのドアが
ちょうど閉まるところだったが
エレベーター内にいた先客が光一に気づいて
ボタンを押して開けてくれた。
「ありがとうございます」
お礼を言って先客をみた光一は驚いた。
なんと先客は舞子だった。
舞子も驚いた様子で
「びっくり、同じホテルだったんですね」
と言った。
舞子に「何階ですか」と聞かれ
「5階です」と光一は答えたが
すでに5のボタンに灯がついていた。
「同じ階とは偶然ですね。」
舞子はとびきりの笑顔で光一に言った。
2人はホテルのロビーで待ち合わせ
夕食を一緒に食べることにした。
夕食時に光一は舞子の誕生祝いとして
アメジストのブレスレットを贈った。
アメジストは舞子の誕生石だが
舞子へのサプライズとして
待ち合わせ前に買っておいたのだ。
「男の人からプレゼントをもらったことがなくて・・・すごく嬉しいです」
そのブレスレットを着けて
舞子は嬉し涙を流した。
網走駅で別れたはずの2人が
ホテルのエレベーターで再会
こんな偶然ってあるんだな・・・
その夜、光一はなかなか寝付けなかった。
あくる日、2人は札幌まで一緒に行ったが
贈ったブレスレットを
舞子が着けているのを見て
光一は嬉しくなった。
札幌に着くまでの間
2人はとりとめもなくいろいろな話をした。
「東京に来ることがあったら案内してあげるよ」
「4月から社会人なので、お金をためて東京に遊びに行きます。そのときは東京案内して下さい」
「舞ちゃんは雪が似合いそうだね・・・東京で5月に雪が降る場所があるんだけど、
舞ちゃんに見せたいなあ」
「網走なら5月に雪が降っても珍しくないけど・・・」
舞子は訝しげな表情をして光一を見つめた。
その旅での出会いをきっかけに2人は
メールのやり取りをするようになった。
当初の光一にとって
舞子はいとしい妹のような存在だったが
メールのやり取りを続けていくうちに
舞子への気持ちが膨らんでいき
かけがえのない大切な存在になっていた。
受信メールは舞子からのものだった。
そのメールには
「あけましておめでとうございます。5月の連休を利用して東京に遊びに行こうと
思っているんですが、案内してもらえますか?雪が降る場所を見せて下さい。
光一さんと再会できることを楽しみにしています」
と書いてあった。
5月3日、舞子との再会当日
光一はスケッチブックを抱えて
はやる気持ちを抑えながら
雪が降る場所に向かった。
光一の自宅近くの公園に
“なんじゃもんじゃ”という木があり
その白く美しい花は木を包み込み
その白い花のかたまりが
まるで雪が降り積もっているように見えて
とても風情がある。
雪が降る場所とは
なんじゃもんじゃの木がある場所のことだ。
「お久しぶりです」
舞子が満面の笑みを浮かべ
小走りになって駆け寄ってきた。
舞子は驚くほど美しく変身していた。
「あれ・・・ずいぶん変わったね、すごくきれいになったよ。」
「お化粧して化けているんで・・・」
舞子は笑いながらはにかんだ。
光一はひとり旅をしていたあの時の女の子と
目の前にいる女性とを結びつけようと
舞子の顔を覗き込んだ。
舞子は驚いた表情で見返してきたが
光一はその澄んだ瞳のまぶしさにひるんで
思わず瞬間的に目をそらした。
予想した通りの感情が湧いてきて
光一の心を締め付けた。
そのとき風が吹いて
なんじゃもんじゃの白い花が雪のように
ふわりふわり舞い落ちてきた。
舞子は雪のような白い花を
手のひらで受け止めようとした。
その仕草に光一は驚いた。
光一がずっと思い描いていた仕草だった。
「やっぱり、舞ちゃんは雪が似合うな」
光一はつぶやいた。
「舞ちゃんに見せたいものがあるんだ」
光一は持っていたスケッチブックを
舞子に向かって開いて見せた。
そこにはふわりふわり舞い落ちる雪を
手のひらで受け止めようとしている
女性が描かれていた。
「舞ちゃんをイメージして描いたんだ」
「すご~い、私に似てますか?」
スケッチブックを受け取った舞子は
その絵を顔の横に掲げながら言った。
「そっくりだよ、絵が完成したら舞ちゃんにあげるね」
「わあ、嬉しい」
舞子は光一がイメージした通りの
美しい女性になっていた。
「北海道では8月に雪が降る場所があるんですよ。光一さんに見せたいなあ」
舞子はいたずらっぽい笑顔で言った。
「雪が降る場所はそばの花畑がある場所のことだよね」
可憐な白いそばの花が一面に咲く風景を
思い浮かべながら光一は言った
「ピンポーン、当たりです。北海道のそば畑は広くて綺麗ですよ。案内するので、ぜひ遊びに来て下さい」
「光一さんからもらったブレスレット、大切に使っています」
「懐かしいなあ、舞ちゃんに贈ったブレスレットだね」
ブレスレットを着けた舞子の左手を持ち上げ
光一は言った。
そして自然な流れのままに
どちらからともなく手をつないだ。
「舞ちゃんのそばにずっといたいな」
光一がつないだ手を強く握ると
舞子はさらに強く握り返した。
「舞ちゃん、お腹すいたでしょ。まずは腹ごしらえということでお昼を食べに行きましょう」
せえので食べたいものを同時に言いませんか?」
舞子は明るく満面の笑みを浮かべて言った。
あのときと同じシチュエーション!
2人同時に「せえ~の」と掛け声をかけた後
2人同時に「おそば~」
2人同時に心から笑った。