日々雑感

ピーターテミン 「なぜ中間層は没落したのか」を読んで

経済学者のピーターテミン「なぜ(アメリカの)中間層は没落したのか」(慶応大学出版会)を読んで膝を打つところがあったのでここに書く。

フロリダにて黒人男性が白人警官に膝で喉を抑えられて死亡する事件があった。このような暴力はアメリカで連綿と継続してきたのであろうが、黒人の大統領が2期継続した後でもなぜ今だこのようなことがとの疑問はあった。また、2021年4月にジョージア州議会で共和党が提案して、”不在者投票や期日前投票には厳格なID(身分)提示が求められる”・”選挙管理人が不在者投票の申請書をすべての有権者に郵送することは違法とする”・”街角の投票箱は引き続き置かれるが、設置数は削減される”などの内容を持つ明らかに黒人の投票を制限しようとする現在のジム クロウ法と呼ばれるような法律が成立したが、今だになぜこのようなことがあるのだろうかとの疑問はあった。
この本は”白人警官による黒人への暴力は黒人を常に経済的に弱者の位置へ置いておくためのシステムとして働いている。”・”経済的な弱者である黒人が投票にて発言権を強めることを白人側はいろんな方法にて阻止しようとしている。”と述べている。このことは上記の疑問に答えるものであった。

また、”教育はかっては労働力全体を改善する力であったが、現在は高等教育の費用を自弁できない経済的弱者を結果的に経済的弱者へとどめるためのものとなっている"との指摘はまさに、現在の高等教育が必要な仕事についている高所得層と高等教育を持つことができない低所得層との分断の加速の理由をみごとに説明している。

この本の使用している経済モデルについては理解がついていかなかったが、少なくともアメリカが持っている奴隷制度の名残がアメリカの民主主義を危うさを深刻なものとしていることをここまで明確に述べていて日本人にも理解可能としている本はめずらしい。

日本にいると著名な黒人の映画俳優(ウィル スミス等)や黒人のアスリート(テニスのウイリアムス姉妹や大阪ナオミ等)や数多い黒人のミュージシャンの活躍に幻惑されて、アメリカの有色人種への人種差別の状況をあまり深刻なものととらえることができなくなりがちであるが、アメリカという国の奴隷制度への執着について認識をこの本にて改めて新たにした。

日本の民主主義も怪しいし西欧諸国の民主主義も怪しいものではあるが、アメリカの民主主義もまた相当に怪しいと考えておくのが正しいようだ。(2022/2/11)
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