本当の人間関係を学び続ける学徒のつぶやき

人間関係学を学び続ける学徒の試行錯誤

ソーシャルワーカーに求められる倫理とは

2018-06-24 05:19:36 | コラム

 ソーシャルワーカーは、ソーシャルワークの対象となる人や人々(以下、クライエント)が、主体的に生活上の課題を見出し、課題を軽減・解決・克服していけるよう、関わり、支援することが求められる。さらに、ソーシャルワーカーはクライエントが希望を持ち、自尊心を高め、想像力を増大していくようにはたらきかけ、クライエントの生活状態にかかわる、さまざまなシステムや、社会の構造に関わる要素に、クライエントとともにはたらきかけていく。そのためにソーシャルワーカーは、多種多様な活動を組み合わせて実践し、さまざまなスキル、テクニック、戦略、原則を用いて、ソーシャルワーク行っていくが、同時にクライエントや社会に対して、また、ソーシャルワーカーという職務に対して、責任を自覚するとともに高い理念と倫理を確立しなければならない。
たとえば、ソーシャルワーカーは相談援助の専門職として、クライエントを支援するためにクライエントのプライバシーにかかわる秘密情報や個人情報を本人、あるいはその家族などの関係者から入手する必要があるが、その際、それらの情報の管理および開示についてソーシャルワーカーは細心の注意を払わなければならない。このことはソーシャルワーカーがクライエントやその関係者と信頼関係を築くために最低限守らなければならない原則である。

 ソーシャルワーカーが対人援助職である以上、クライエントやその関係者との信頼関係を構築し深めることは職責を遂行するために必要不可欠である。もし、ソーシャルワーカーの情報管理に不備があって秘密情報が漏洩してしまうようなことになれば、社会からソーシャルワーカーの不注意や情報管理に対する関心の薄さを糾弾されるばかりではなく、ソーシャルワーカーの不誠実によってクライエントやその関係者を深く傷つけ、最悪の場合、クライエントやその関係者に負わせた傷による痛みや苦しみが取り返しのつかない事態を引き起こしかねないことをソーシャルワーカーは深く自覚しなければならない。
また、クライエント本人の心と身体、表情や態度、クライエント・システムと社会資源の関係、そしてクライエントとソーシャルワーカーとの関係は常に変化している。ソーシャルワーカーは、変化に応じた最適なケア(援助)をクライエントに提供することが何よりも肝心である。

 日本社会福祉士会倫理綱領や社会福祉士の行動規範をソーシャルワーカーが専門職として遵守することは当然であるが、ソーシャルワーカーがこれらの倫理規定を単なる規則として受け取るのであれば、「今、ここで」さまざまな困難を抱えながらも懸命に生きていこうと悩み苦しむクライエントやその家族に対するケアが、硬直し、教条主義的なものに陥る恐れがある。
ソーシャルワーカーが守るべき職業倫理は、「今、ここで」の他者(クライエント、クライエント・システム)を知り、(他者理解)自分を知る(自己覚知)現象学的方法論に基づくアプローチによって導き出される、クライエントのための「生きた」倫理でなくてはならない。