サイレン

激しく光るオレンジ色のフラッシュ。
脳に突き刺さる様な甲高いサイレンが頭上から降り注ぐ。

あぁ遂にやって来た。
もはやここまでなのだ。

大声をあげて泣き出したいような気持ちと、
もうどうにでもなれと吹っ切れた気持ちを半分づつ持ち合わせながら、
ただひたすら目を閉じていた。

サイレンはどんどん大きくなる。
目を閉じていても感じるほどに強烈なフラッシュが
私をどんどん窮地に追いこんで行った。

それでも負けじと私は更にキツく目を閉じる。
すると脳裏には、長いような短いような人生が、走馬灯のように蘇る。

浮かんでくるのは母の顔。父の声。
ともにバカ騒ぎした友達。
さっき見送ったばかりのあの人。

そして、走りながら眺めた風景。

そういえば私はいつも走っていた。
子供の頃からずっと、大人になっても懲りずに。

今日で終わりにしようと、何度心に誓ったのだろう。

遂にサイレンは最終警告に変わる。

覚悟をキメた私は更に強さを増したフラッシュに
おもいっきり手を伸ばしスイッチを押した。

目覚ましから放たれるサイレンとフラッシュは止まり
私は飛び起きる。

今日も二度寝して遅刻ギリ。
会社まで全力でダッシュです。