建築家のヤカン

個人的覚え書き。UPは順不同!(汗)(ワタシは建築家でないです。。。)

『嗚呼!おんなたち 猥歌』~♪I'm aLUCKYman

2011-01-21 | cinema japanese あ・か
I'm aHAPPYman~

♪たとえ愚かと誰かに言われても....

最初に出てくるステージ光景は、どこのバンドのライヴ光景なのだろう?
マトモな話、リアルにROCKしていると思う。アナーキーなパワーが漲っている。
この導入光景でまず、立派に盛り上がる。ROCKな映画を見るぞっ、という気ムンムンにさせられる。巧みな導入部だと思う。

ダメダメ中年ロッカーの、音楽と彼を巡る女性達との日々。
ダメダメな音楽活動のその様に、しかし何か真にROCKを感じさせるものが、ある。いうならば『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』にあったものに通じる何物かが、『嗚呼!おんなたち 猥歌』にもあるのでは、と。
少なからず見られるパフォーマンス光景のせいなのかもしれない。どのパフォーマンス光景も、悪くない。みせかけではない「本物」の、SPIRITがきっちり感じられる。
キャンペーンのレコード店回りパフォーマンスにしても、バーでの♪与作パフォーマンス光景にしても、それぞれそれなりの「本物」性が。
ここで感じられる哀愁の様なもの&主キャラが自分自身を追い詰められた状態に置いていること が、この映画から感じられるROCKの源泉なのかもしれない。

「歌」がたくさん出てくるのが毎度な神代さん映画であるが、ROCKな音楽がたくさん出て来るのはこの映画くらいだろうと。
映画中最も繰り返されている一曲は、主キャラが歌う売り出しキャンペーン中(有線30位)の♪OneNightか。

間に幼い息子もいる正式な「妻」(長期別居中)・主キャラを食わせてやっている「ソープ嬢」・主キャラ運転の車が事故って怪我したソープ嬢入院先の病院「看護婦さん」・マネージャーの彼女。
主キャラを巡る女性達といえばこの4人になるか。
なかでもソープ嬢と看護婦さんとは主キャラを取り合う仲になるが、映画中主キャラ自身が最も強く結びついているキャラといえば実はこのどちらでもないだろう。
「ゆたかさんのことを大事にしなさい。あの人に見捨てられたら、あんたおしまいよ」by妻さん。
彼女の言葉が、ズバリ告げているだろう。この言葉の通り、この映画の主キャラと最も強く&深く関係を築いているのは、この年下のマネージャー兄さんだろう。
「あんちゃん....」何かグッと、我慢の限度の様なものが来ると、このマネージャー兄さんはシャツの胸を広げて入墨を見せる仕草をしてみせるのが、動物の生態の様で可笑しい。
この映画の中の「事件」のひとつ、告訴エピソードをとっても、主キャラ×ゆたかさんの絆の強さ、特別の関係が反映されている。

なので、主キャラを挟むソープ嬢&看護婦さんが、主キャラを間に置いているうちに不思議な連帯感が出来てしまって仲良くなってしまう(狭い風呂に一緒に入浴シーンは親近感が感じられてとてもよい)のにも、自然に納得出来る。
「死んじゃった~死んじゃったのよ~彼女のために私堕したのに~客に殺されちゃった~」泣きじゃくる看護婦さん。

罪の償い、というわけで。
オチが良い。
黙って静かに「毛を焼く」(ソープ嬢がしていたこと)ところから、主キャラの償いの日々は始まる。
こうこなくっちゃ!というエピローグ。
「失礼します」。
こうして日々、女性と関係する度に、主キャラは己の罪と亡きソープ嬢の犠牲的精神の高さをを噛み締めつつあるのだろう。
女性と関係することが、即罪の償いである、という。
(ポルノ映画としても、ポルノという範囲を外れて見ても)見事にキマッた締め括りだと思う。

 (81/神代辰巳/にっかつ)
『嗚呼!おんなたち 猥歌』 ◎脚本:荒井晴彦・神代辰巳 ◎撮影:山崎善弘 ◎出演:角ゆり子・中村れい子・内田裕也・絵沢萌子・太田あや子