ちょうど先週の今頃。深夜の休憩時間に何気にネットサーフィンしていたらニューヨークタイムズのページに見覚えのある写真。
っえ? と思ったが事実だった。
その日のテレビのニュースでは見掛けなかったが、翌日になってNHKも民放(ごく一部だけど)も訃報を流し始めた。
まぁ、確かにジャズ界では超有名人でも外部ではほとんど知られていない。それでもテレビ世代の高齢視聴者(=昔のジャズファン)からクレームが入ったか局のジャズファンが騒いだのだろう。タイミングとしてはかなり遅い反応に感じた。
初めてウェイン・ショーターの演奏を耳にしたのはマイルス・デイビスの「Miles in Berlin」(1964年)で、ジャズを聴き始めてすぐの頃だった。でも正直なところジョージ・コールマンの入っていた「My Funny Valentine」(1964年)の方が断然好きで、ベルリンの方は何かが崩れているようで聞く機会が少なかった。
サイドメンではなくウェイン・ショーターという人のリーダーアルバムを買ったのはちょうど中学生になった頃のこのアルバム『Super Nova』(1969年)。
愛読していたスイングジャーナルのカラー広告でこのアルバムを見つけてレコード屋に駆け込んだ。
何に反応したかというと、そのメンバーだった。
ミロスラフ・ヴィトウス(b)ソニー・シャーロック(g)ジャック・ディジョネット(ds)・・・
特にヴィトウスとシャーロックは当時贔屓にしていたハービー・マン(fl)のメンバーだったし、ディジョネットは当時人気のあったチャールス・ロイド(ts)のバンドで聴いていたので安心して買った。
先日、実家に立ち寄った時に、追悼の意を込めて改めてレコードで聴いてみた。
『Super Nova / Wayne Shorter』(bluenote/1969年)
1. Supernova – 4:52
2. Swee-Pea – 4:36
3. Dindi (Antônio Carlos Jobim) – 9:35
4. Water Babies – 4:53
5. Capricorn – 7:47
6. More Than Human – 6:12
Wayne Shorter – soprano saxophone
John McLaughlin – acoustic and electric guitar (1, 2, 4, 5)
Sonny Sharrock – electric guitar
Chick Corea – drums, vibes
Miroslav Vitouš – bass
Jack DeJohnette – drums, kalimba
Airto Moreira – percussion
Walter Booker – acoustic guitar (“Dindi”)
Maria Booker – vocals (“Dindi”)
Niels Jakobsen – claves
Recorded August 29 (1, 2, 4 & 5) and September 2 (3 & 6), 1969.
Novaとあるので子供ながらにボサノヴァ(実際にジョビンの曲をやっている)のアルバムかと思いつつ、そうじゃないだろうなぁ、とそれまでのウェイン・ショーターの音から予測しながらレコードの針を落としたのを覚えている。
1曲目の“Supernova”が始まった瞬間から、まさしく後者だと確信しながら、まるでベートーベンの運命みたいな曲だなぁ、と思った。タラッタラーリ、タラッタラーリ、の繰り返しで運命の ダダダダーン と同じだと。ありとあらゆるところでタラッタラーリが出てくる。ユーモアなのかシリアスなのか、はたまたそのどちらでもないのか、不思議な人だなぁ、という印象。
2曲目の“Swee-Pea”はソニー・シャーロックのギターとチック・コリアのヴァイブにアコースティック・ギターが幻想的な世界を作り後のウェザーリポートの登場を予感させてくれた。
3曲目の“Dindi”はアントニオ・カルロス・ジョビンの有名曲だけど、僕はこのアルバムで初めて聴いて、今でもこの曲というとこの演奏を思い出す。ブッカー夫妻のギターとヴォーカルが浮かび上がると確かにボサノヴァなんだけど、何故か最初から鼻声のマリア・ブッカーが妙に気になる。やがて歌が佳境に入ると、堪えきれずに泣き出してしまう。
中学生はこの女性の涙声に妙に惹かれた。なんでも想像しすぎる変な中学生。本番直前に夫婦喧嘩でもしたのだろうか? 今持ってこの演奏の真実は語られたことがない。
さて、4曲目からは実はあまり子供の頃の記憶がない。
レコードはA面となる片面に23分収録されていて、それ以上のものはB面となる裏面に別れていた。だからこのA面の“Dindi”での事件に心動かされた中学生は、そこを何度も繰り返し聞くあまりに、歌の最後の部分にレコード針の傷までつけてポチポチ言わせている。何度もそこを聞き返したのだろう。そして、その頃からヴォーカルの歌声の後ろにうっすらと別テイクのヴォーカルが聞こえるのを聞き逃していなかった。
CDになってやはりそれが空耳ではなく、実際に消したテイクが何かの都合でうっすらと残っているのを確認した。多分リバーブに乗った成分が消せ切れていないのだろう。アナログテーブあるある。
“Water Babies”も“Capricorn”も今聴いてもかっこいい。“More Than Human”のブチギレたソニー・シャーロックのボトルネック奏法もあの頃の時代の音だ。今なら簡単にシンセでもサンプリングでも表現できそうなエフェクトをギターをかき鳴らして表現しているところが凄い。
でも、思春期のマセがきは、どうしても“Dindi”のマリア・ブッカーの啜り泣きが気になって仕方がなかったようだ。
今思えば、それはあなたのヒューマンな音の世界の一部分だったのですね。
心からご冥福をお祈りいたします。
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演奏:Toshihiro Akamatsu(vibraphone) Hakuei Kim(piano)
・Straight, No Chaser......Monk
・Violet Rays.....Toshihiro Akamatsu
・Synonym......Toshihiro Akamatsu
・White Forest......Hakuei Kim
・Beyond the Dream......Toshihiro Akamatsu
・Lake Sagami......Hakuei Kim
・The Gleaner......Toshihuro Akamatsu
enc
・Blue in Green......Miles
Nov/13/2022 artspace&cafe @ Ashikaga, Tochigi.
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Piano : 雨宮彩葉 Ayaha Amamiya
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【放送 / ラジオ、テレビ】
今週のオンエア (3月12日~3月18日)
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【テレビ】
東京MX2 (地デジ9ch + ▲up)
番組名『ヒーリングタイム&ヘッドライン・ニュース』
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■平日(月〜金) 12:10〜12:29 ■金曜 25:35 都知事定例会見終了後 〜27:00
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“路面電車のある風景 - 1”
『NEXT DOOR - NEW LIFE/赤松敏弘』(2020年作)
演奏:赤松敏弘(vib)ハクエイ・キム(p)市原ひかり(tp,flh)酒井麻生代(fl)須川崇志(b)小山太郎(ds)佐々木優樹(g)
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■土曜 17:30〜18:00 ■日曜 17:30〜17:38
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“ねこの足跡”
21年6月、7月、8月、10月ヴィブラフォン部門【Amazon's Choice】選出作品『NEXT DOOR - birth of the swift jazz/赤松敏弘』(2000年作)
演奏:赤松敏弘(vib)ユキ・アリマサ(p)養父貴(g)新澤健一郎(kb)平石カツミ(b)斉藤純(ds)相内勝雪(mnp)他。
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■土曜 5:00〜6:00 ■日曜 5:00〜6:00
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“東京点描 城南1”
『SPARKLING EYES/YUKARI』(2021年プロデュース作)
演奏:YUKARI(vib,mar)飯島瑠衣(p)中林董平(b)森永哲則(ds)guest:赤松敏弘(vib)
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■平日(月〜金) 27:00〜28:00 ■土曜 18:00〜19:00 / 28:00〜29:00
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“散歩の風景 夏から秋” NEW!
『KALEIDOSCOPE/吉野智子』(2023年プロデュース作)
演奏:吉野智子(vib)雨宮彩葉(p)鉄井孝司(b)小田桐和寛(ds)
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昨夏からこちらにブログお引越し。のんびりとやっております。