ばりん3g

「まだよくわからない」ゲームによっては男女比が極端になる理由を、心理学の観点から考察。

男の子ってこういうのが好きなんでしょ?」というネットスラングがある。

これは男性が好きそうなものを紹介するときに添えられる一種のステレオタイプな文章である。ガンダムやアーマードコアに代表される人型ロボットがその代表例である。詳しいことはニコニコ大百科参照。

私は一般的な男性だが、特に銃火器に対しては強いこだわりがある。推しはゲパードGM6 lynxです、ガスガン出してくれ。

 

 

このスラングは、心理学的に見たときに結構興味深い題材になる。

ステレオタイプ的な価値基準への長期的な暴露による選好の変化とその循環を一言で表しているのだ。

 

「男の子はこういうのが好き」という思い込みが十分に広がっている集団に、新しく男女1組が入るとする。

男性がそれに触れたとき「やっぱり男の子は」というリアクションをもって受け入れられ、女性がそれに触れたとき「えぇちょっと意外」と多少なりとも特異に扱われる。

この時、思い込みに整合性は必要なく、十分に広がっていることのみが条件にある。また、男性に対する肯定と女性に対する驚きはなんの含みもなく発されることが多いが、「女のくせにそれやってるのかよ」とまれに思い込みに反していることを極端に扱う人もいる。

この暴露は長期的に行われ、次第に思い込みの通りに移動する。つまり、男性はそれに惹かれやすくなるし、女性は惹かれづらくなる。

正確に言えば、男性はそれに魅入られたことを拒否されづらく、女性はそれに魅入られたことを拒否されやすい、と判断するようになる

次第に、新しく入った男女1組はこの思い込みを内在化し、集団側に属するようになる。

そしてまた、新しい人が入ってくる…の無限ループ。

この思い込みは環境の変化などこれまた長期的な経過により改変または棄却されることが多い。

 

 

上記の無限ループは、趣味嗜好などの選好における性差を社会心理的アプローチから分析したときの主張の1つだ。

 

そしてこれは、そのままゲームによっては男女比が極端になる理由としても用いられることがある。

「やっぱり男の子はロボゲーが好きなのね」と、「女性がロボゲーやるなんて以外」と。

繰り返すが、基本的に悪意はなく、住みわけののように自然に機能する。

 

 

注意してほしいのは、この主張が選好の性差を決定づける要因ではなく、極端になる理由に関してはいまだ開拓中の分野であるということ。

男女比が極端になる理由を説明するためにこのアプローチから攻めた研究を読んだが、この要素が占める分散の割合は1~2割程度と決して優位とは言えない。

また、性差については認知心理学/神経科学的アプローチからも攻められている。ゲームプレイの際に用いる認知機能の優劣と性別にある程度関連があるとしているが、これも知見の蓄積がない。

この問題をもっとややこしくしようか。いま話しているのは特にゲームジャンル選好の性差だが、ゲームをプレイしてて楽しいと感じる条件や仕組みには性差がない。「男の子が好き」とされるようなゲームであっても、ゲームとしての出来が良ければ女性も食いついてプレイするのだ。

いま言ったのはゲームの継続・離脱理由というマクロな視点からの分析だったが、プレイの目的(動機)になると性差が表れてくる。ミクロな分析を通しで見ると、そもそも女性はゲームプレイに対しあまり頓着しない傾向が浮き彫りになる。

じゃぁその原因はなんでだ、って感じで今も論争が続いてる。

 

 

Q:なんでゲームによっては男女比が極端になるんですか?

A:まだよくわからない。

 

 

参考文献

Lucas, K., & Sherry, J. L. (2004). Sex Differences in Video Game Play:: A Communication-Based Explanation. Communication Research, 31(5), 499–523. https://doi.org/10.1177/0093650204267930

Greenberg, B. S., Sherry, J., Lachlan, K., Lucas, K., & Holmstrom, A. (2010). Orientations to Video Games Among Gender and Age Groups. Simulation & Gaming, 41(2), 238–259. https://doi.org/10.1177/1046878108319930

遠藤 雅伸, 三上 浩司, 継続したゲームプレイからの離脱理由に関する調査分析, デジタルゲーム学研究, 2020, 13 巻, 2 号, p. 13-22, 公開日 2021/07/01, Online ISSN 2434-4052, Print ISSN 1882-0913, https://doi.org/10.9762/digraj.13.2_13, https://www.jstage.jst.go.jp/article/digraj/13/2/13_13/_article/-char/ja,

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Hoffman, B., Nadelson, L. Motivational engagement and video gaming: a mixed methods study. Education Tech Research Dev 58, 245–270 (2010). https://doi.org/10.1007/s11423-009-9134-9

遠藤 雅伸, 三上 浩司, 継続したゲームプレイからの離脱理由に関する調査分析, デジタルゲーム学研究, 2020, 13 巻, 2 号, p. 13-22, 公開日 2021/07/01, Online ISSN 2434-4052, Print ISSN 1882-0913, https://doi.org/10.9762/digraj.13.2_13, https://www.jstage.jst.go.jp/article/digraj/13/2/13_13/_article/-char/ja,

Daphne Bavelier, C. Shawn Green. Enhancing Attentional Control: Lessons from Action Video Games. Neuron, Volume 104, Issue 1,2019, Pages 147-163, ISSN 0896-6273, https://doi.org/10.1016/j.neuron.2019.09.031.


論文を参考にいろいろ喋るブログです。

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