「もう死のうと思います。」
ある日職場にこんな電話がかかってきたことがありました。
電話を受けたのは私はとっさにこう尋ねました。
「死にたいって…どんなことでもいいので話してくれますか。」
電話をかけてきてくれた人と、少しでも話したい、そう思いました。
「死にたいんです。」その人はそう繰り返しました。
「今、死のうとして、でもその前にこうして電話をくれたんですね。」
私はそう言うのが精一杯でした。
「はい。」
その人はそう答えました。
私の電話のやりとりを聞いていた職場の同僚が、私の周りを取り囲みました。
黙って聞いている人もあれば、「死ぬわけないだろ。イタズラだから(電話を)切ればいい」という人もいました。
その言葉が相手の人に聞こえないよう、何とか私は身振り手振りでその人たちを制止しつつ、
電話の向こうの相手の声に耳を傾けようと必死になりました。
「死ぬ前に、誰かに言っておきたかったんです。」
この言葉を聞いた時に、話を続けられるかもしれない、そう確信しました。
「誰かにあなたがいま生きていることを伝えたい、そう思っているんですね。」
「はい。」電話の向こうの声は、はっきりと、そううなずきました。
そして少し話してから、
「今○○にいます。ビルの上です。」
「○○にいるんですね。」
私がそう言い終える前に、ぷつりと電話が切れてしまいました。
すぐ警察に電話してその付近を調べてもらおうとした同僚もいました。
しかし「イタズラなんだから通報することはない」そう言いきった上司がいて、電話することを阻止しました。
このできごとがあって、数名の同僚と私はその後しばらく、
口数が少なくなり、電話に出るのが億劫になってしまいました。
「何とか生きていてほしい」「本当に亡くなってしまっていたら…」「あの時どうしたらよかったのか」
私たちには想像することしかできませんでした。
あなたがこんな電話を受けたらどうしますか。
私にはあの時どうすればよかったのか、私の対応がどうだったのか、わかりません。
その場にいた同僚も同じような気持ちでいます。
実際に自殺でなくなっていった人たち…自殺で大切な人を失った人たち…
苦しい、つらい…何か一つの言葉だけでとうてい表現できることではないと思います。
その人たちのことを思うと、何とか自殺を防ぎたい。その気持ちで胸がいっぱいになります。
*自殺を考える 2012.11.7 当ブログ掲載
from ゆるーい思春期ブログスタッフ