
何億年ぶりかに新宿駅を通ったのだが、おなじみのガムテープ文字が活躍しているのが見られてとてもよかった。ガムテープ文字の書き方(作り方?)はガムテープで文字を書こうという本になっており、書体・レタリング好きとしては制作過程が手にとるように分かるのがとても嬉しい。しかしたぶん実際にやってみようという人は少ないだろうと思われる。驚くべきことに、文字をいわば絵のように捉え、もっと面白く書いてみたいと思う気持ちは人類普遍の欲求ではないからだ。僕は小学生の頃、休み時間が来るたび自由帳を取り出していろいろな文字や棒人間なんかを書いて遊んでいて、先生にもっと外に出てみんなと遊びなさいと言われるのがたいへん苦痛だった。もしかしたら太古の昔、周りが狩りに出かけている間、洞窟の壁に謎の線文字を書いていたヒトたちが僕の先祖なのかもしれない。
面白い文字を見ると自分でも何かやってみたくなるのが壁画人の末裔である。そこで長いあいだ頭の片隅にくすぶっていた「プロッキーのポテンシャル活かしきれてない説」を検証することにした。
プロッキーは今やダイソーでも買える水性顔料マーカーである。水性ながら滲みに強いのが特長で、かすれずくっきりとした線が引ける素晴らしいマーカーだ。5〜10cm程度の、ちょっと大きい字を書く時に重宝する。しかし、もう少し大きい字を書きたい時には横線の細さのせいで視認性が低下するのが難点。特に平仮名。プロッキー特有のエッジが立った太線をうまく使えば、平仮名をもっと強くくっきり見えるように書けるのではと思ったわけである。
で、色々と書き方を試した結果、ちょっと持ち方を工夫すればこんなふうに角ゴシック体っぽく書けることが分かった。
漢字のバランスが悪いのはご愛嬌。この書き方の良いところは字全体が太い線で書ける上に、かかる時間もふつうの書き方とあまり変わらないところである。もちろん多少のコツがあるのでちょっとした練習は必要だが、一からレタリングするよりは断然早い。まあ今の時代どこにでもパソコンとプリンターがあるからレタリングなんて必要ないなどと言われると返す言葉がないが、面白いからいいのである。
書き方は、人差し指・中指の2本と親指とで挟むようにしてペンを持ち、筆ではなく刷毛を使うように一画ずつ書く感じだ。プロッキーのペン先は硬く、紙に押しつけても変形しないので、書く紙は何枚も紙を重ねた上のような柔らかい所で書くと良い。曲線や「はね」は一画で書こうとしないで、線の曲がる角度についていけなくなりそうなポイントの少し手前で持ち替え、反対側から迎えに行ってつなげる。また、「左はらい」は、はらいの先端から根もとに向かって線を引くことで安定して書ける。
これは平仮名のそれぞれの文字の、現時点で一番早くかつ簡単に書けて見栄えが良い書き方のまとめ。一辺6cmの正方形の中に収まるように書いてある。インクが重なって濃く見える部分がペンを持ち替えた箇所だ。「ね」とかけっこう不格好な字はもっと良い書き方を模索したいが、あまり凝りすぎると書くのに時間がかかるので難しい。
書き方の説明がよく分からない? 大丈夫、実際に書いてみようって人はいないから……。
まあいいか