ブルームーンとラバーソール

俺たちはまだ歩き続けてる。

「ねぇ、私たちどこへ行ってるの？」

「これからどうなるの？」

彼女は言った。

「そんな事 俺に分かる訳ないよ。」


東の空が白々と明るみを帯びてきた。

どこかでコヨーテが吠えている。

太陽にほえろならぬ 月に吠えるコヨーテ。

俺は立ちションの最中に刺殺されたショーケンの事を思い出していた。

近頃じゃ 立ち小便すら世間から糾弾される。

日本人も随分上品になったものだ。

俺は言う。

「何者にもコントロールされず
自分が考え、
やりたい事をやり
そして意思表示出来る事。」

「何のこと？」

「自由の定義さ。」

「実際にはそんな事不可能なんだけど
それでも祈りに近い叫びのようなものさ。」

「ここは自由の国アメリカだ。
幸い 俺たちには少しばかりの金も体力も残ってる。
何とかなるさ。
さぁ先を急ごう！」

俺はそう言うと 右手をリーバイスのポケットに突っ込んだ。

そこにはキラリと光るナイフも
わずかばかりのコインすら入ってはいなかった。

そして僕は途方に暮れた。

つづく…