ビクター・エンタテインメントが2006年にリリースした国内盤CDだが、原盤は同社が1977年にリリースした24曲入りのLP二枚組『南国の夜ハワイアン・デラックス/ハワイズ・グレイテスト・オールスターズ(On A Tropic Night / Jack Demello And The Hawaii's Greatest All Stars)』という音盤である。
このアルバム企画の縁起はライナーノーツに詳しく、大変興味深い。戦後の第一次ハワイアンブームに沸く1970年代の日本では、日本人ミュージシャンの演奏によるレコードが飛ぶように売れる一方、本場ハワイのミュージシャンのレコードは一部の好事家の蒐集アイテムに留まりヒット作が出なかった。洋楽部門も何とかブームにあやかってハワイアンのヒットレコードをものにしたい、という事で白羽の矢が立ったのが親日家として知られたハワイの大物ミュージシャン/バンド・リーダーで、尚且つやり手のビジネスマンでもあったJack de Mello(イズ Israel Kamakawiwo'ole のプロデューサー等で知られるJon de Melloの父親)。
このJack de Melloがビクターからの業務依頼を受けて実質的なプロデューサーを請け負い、ハワイのトップミュージシャンを集めて日本市場向けに吹き込んだのがこの音源というわけである。翌78年には2枚組から選抜した14曲と、もともとハワイ市場向けに別選曲で録音しておいた日本盤には未収録の2曲(17,19)を追加し16曲入りのLPアルバム"Jack De Mello Presents Steel Guitar Magic Hawaiian Style: Hawaii's Golden 16"として、自身が所有するハワイのレーベルMusic Of Polynesiaから発売している。本CDはこの2曲も追加収録した完全盤で、見た目は安易なハワイアン全曲集だが、大物プロデューサーが招集した一流ミュージシャンによるオリジナル・アルバムとして吹き込まれた音源である。
なお、ハワイでの16曲入りバージョン発売から更に数年後、同じく16曲収録で¥2,000という一枚ものLPの体裁で国内盤も再リリースされている(選曲はハワイ盤と異なり、国内盤からの抜粋)から、アナログからCD化も経て様々なバージョンでの再発売を繰り返し、結果的に息の長いセールスでビクターは充分に元が取れたことに違いない。
セッションは来日時に日本のハワイアンブームを視察したJack de Melloが、日本はスチールギター入りのバンド編成が大人気、というリサーチ結果をもとに当時のハワイ一級のスチールギター奏者として当初はプア・アルメイダが予定されていたようだが、吹込みの1か月前(74年の2月)に急死。代わって急遽Billy Hew LenとBarney Issacs,Jr.のダブルヘッダーを看板に据え、更に念入りにウクレレに日本でも音盤のリリースがあり知名度のあったオータサンを第三の看板スターとして配置。この三枚看板を中心としたアレンジを書き下ろし、自らセッションの指揮を執った。
メンバーは以下:
Steel Guitar – Barney Issacs, Jr., Billy Hew Len
Ukulele – Benny Kalama, Herb Ohta, Randy Oness
Vibraphone – Alex Among
Drums – Al Bardi
Guitar – King Kamahele, Sonny Kamahele
Bass – Jimmy Kaopuiki
Composer, Conductor, Arranger – Jack de Mello
Ukulele – Benny Kalama, Herb Ohta, Randy Oness
Vibraphone – Alex Among
Drums – Al Bardi
Guitar – King Kamahele, Sonny Kamahele
Bass – Jimmy Kaopuiki
Composer, Conductor, Arranger – Jack de Mello
なお、ここでのオータサンはセッション仕事とは言え『第三の主役』扱いとしてソロの見せ場も要所要所にしっかりと用意されており、12.や18.などオータサンのウクレレを中心にフィーチャーした楽曲も収録されており、20.などでは自身名義の音源ではあまり演られない珍しいジャカソロ(バトキン奏法)も巧みな所を聴かせている。ウクレレにBenny Kalamaも加わっているが、この時期オータサンのセッション仕事にはセットで参加している例が多い。音の方はスチールギターにBarney Issacs,Jr.が入っている事から、オータサンのディスコグラフィにおいては拙稿で先に紹介済であるNew Hawaiian Bandと同系統の音源と言えるだろう。録音はホノルルのSounds of Hawaiiスタジオにて1974年3月に行われた。
01 南国の夜
02 ハワイアン・パラダイス
03 月の夜は
04 ハワイアン・ウォー・チャント
05 ブルー・ハワイ
06 真珠貝の歌
07 メカナニ・アウ・カウポ
08 珊瑚礁の彼方に
09 ラハイナの月
10 小さな竹の橋
11 美わしのケアウカハ
12 マウイ・ガールズ
13 スイート・レイラニ
14 ラブリー・フラ・ハンズ
15 マウイ・チャイムズ
16 アカカの滝
17 ホレ・ワイメア
18 タイニー・バブルス
19 ワイピオ
20 ワイキキの浜辺で
21 ホノルルの月
22 マリヒニ・メレ
23 ハワイアン・ウエディング・ソング
24 カイマナ・ヒラ
25 アロハ・オエ
26 別れの磯千鳥